月別アーカイブ: 2009年9月

構造化とは何か2ーーテンセグリティの機能

鳥は飛行するための美しい構造を持っている。
しかし、歩くときは実用的ではない。

美しければ実用的ではないし、
実用的であればきっと美しくない
これまでの専門分化した人工物の構造と違って、
テンセグリティ構造は、人間のデザインしたシステムではない。

原子核構造が理想的かつ経済的であるように、
テンセグリティ構造は、発見された究極の構造システムである。

酸素または水素自体の性質のなかに、水の性質はいっさい存在しない。
それぞれの気体が2対1で化学反応する条件が発見されたにすぎないように、
圧縮材と張力材とのシナジー作用が発生する条件は発見されたが、
なぜ作用するかは神秘に属する。

化合物としての水の性能は、
たとえば固体、液体、気体に変容する以外にも数百種類も発見されている。
現在も未知なる化合物である。

テンセグリティ構造の再現のためのデザイン過程には、
経験的な包括的理解のみによって、
圧縮材と張力材とのシナジー作用を予測する能力とその実験が要求される。

それは、合金を発見する科学者のような方法論に近いだろう。
合金の生成は形態デザインには含まれない。
言い換えれば、人間が物質をデザインできる可能性は
複数の原理間の調和以外、ほとんど存在しないことを理解することになるだろう。

構造化とは何かーーテンセグリティの機能

構造とは、自律的であることである。
船舶や航空機は構造である。
そして、真の構造とは浮かぶ機能を備えている。

しかし、テンセグリティ以外のこれまでの構造は、
大地に基礎部を固定させ、自重や応力を逃がしてきた。

大気圏内でテンセグリティ以外の構造は浮遊できないだろう。
自重や応力は逃がすのではなく、
分散することで、より構造を強化する機能は
シナジー的に形成される。

テンセグリティへの構造化は、論理的に予測不可能な性能が
かろうじてデザインされる希有な人工物である。

テンセグリティ構造

ジオデシックドームは、三角形だけでは構成されていない。
半球状のジオデシックは、半球の切断面は、多角形である。
ゆえに、赤道付近は不安定である。

半球状のジオデシック・テンセグリティは、
いつまでも未完成な半球状のジオデシックと違って、
閉じていなくとも安定している唯一の構造である。

張力による三角形化は全方向で機能している。

5回回転対称性

インフルエンザは、大気圏を浮遊して移動するための
最適なシェルターの形態を選ぶ場合、
正20面体の5回回転対称性に注目したが、
われわれは、とりわけ住居に関して、
その回転対称性は不合理で不経済だと考えているのはなぜだろうか。

「丸い家は効率が悪い」と思わされているのは
これまで全人類のほとんどが、
沿岸部の都市に密集して定住してきたからかもしれない。

国家にとって、密集して住めば税収奪はもっとも効果的になる。

生物であるなら、
5回回転対称性の自己複製のテクノロジーによって、
球状惑星を移動することで種族を保存する戦略に無関心ではいられない。

反転したテンセグリティ構造=Inside-out

バイオスフィアは環境自体を内部化した。
半径6300キロの惑星に対して、
わずか10キロメートルの厚みの同心球状の大気圏によって。

細胞では細胞内部に張力が包含されているが、
テンセグリティシェルターでは、つねに張力は外部に現れる。

テンセグリティシェルターは、内部を完全に空洞化するために、
内部を外部化した環境を形成するために、
反転(Inside-out)した構造をもっている。

人間の筋肉という張力もまた、
蟹のように内部化された張力をもった甲殻類とは異なっている。
骨という圧縮材は内部化されている。
肺呼吸のための大きな空洞が必要だったからである。

テンセグリティは最初から、垂直な無柱の空洞構造として、
ジオデシック理論よりも前に発見されている。

この事実はもっとも誤解されている原理の発見の順序である。
ジオデシック構造は、テンセグリティ構造の特殊解である。
ジオデシック構造では、圧縮力と張力の機能はまだ分離されていない。

安全性と軽量化は、この機能の分離から生まれる。