エッシャーの作品を「だまし絵」で分類する概念は古い。
彼がだましているのは、絵の鑑賞者ではなく、
認識を制御する脳のシステムだからである。
エッシャー作品自体からエッシャーの気づいていない遠近法が発見された。
表裏をフリップする画像処理のテクノロジーは
エッシャーの時代には存在しなかったからかもしれないが、
エッシャー自身はこの超遠近法から「物見の塔」の
「構造の不可能性」を編み出さなかった。
厚みのない表裏には見えない回転軸がある。
不可能性は表裏という可能性のハイブリッドだ。
そして、2次元という脳が生成する人為的な概念こそが
不可能性のエンジンである。
それは科学的な方法論として一般化できる。
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[解説]エッシャー作品自体からエッシャーの気づいていない遠近法が発見された。
私は結晶学的な3つの操作「並進」「回転」「鏡像反転」を組み合わせた
「超遠近法」という概念と技法を発見した。
『滝』や『物見の塔』などの作品に対して超遠近法の操作を行うことで,
不可能な構造を可能な構造へと転換することができる。
参照 日経サイエンス 2007年1月号
[超遠近法で解くエッシャーの秘密]
梶川泰司
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0701/escher.html