デザインサイエンス(バックミンスター・フラー)」カテゴリーアーカイブ

安全装置(fail safe)

動物には、匂いで危険を察知する能力がある。
人間の体にも、不慮の事故や故障に備えて、ある種の安安全装置(fail safe)が内在している。
生命には、生存するためのあらゆる種類の代替的な回路が与えられている。

都市化されたインフラに過剰に矯正され続けた野生の安全装置でさえ、
大災害時にこそ、瞬時に機能するはずだ。

3.11の朝、薪ストーブの煙が急に排出しなくなり、室内になんども煙が
充満した始めた時、私は大気圧の急激な変化の可能性に気づいていた。
煙は圧力の高い場所から低い場所へ移動する。

私はいまもその現象を、シェルターに備えるべき
<自然の空調システム>に変換しようとしている。

構造自体に内在するもっとも優れた安全装置(fail safe)は
テンセグリティシェルターである。

ユーティリティとエンジニアリングと、 そしてシナジェティクスとの空隙を埋めるもの

シナジェティクスの独自な思考の黎明さは
20世紀を代表するヨーロッパの哲学者や
アメリカ国内の数学者たちの言及を遠ざけるほど
独創的であった。

見失った思考体験をそこに再現するためではなく、
モデル言語の様々な可能性に近づけるための原型的思考方法を
バックミンスター・フラーが開示したのは、1940年代である。

テンセグリティ・ジオデシックスから
派生する種々のユーティリティとエンジニアリングと、
そしてシナジェティクスとの空隙を埋めるのは
幾何学にはない原型的思考である。

ジオデシックス理論よりも前に
テンセグリティ原理を発見した
シナジーの非論理性と論理性から未知の領域を侵犯するフラーの思考の黎明さは、
現在の教育システムや幾何学的党派性から
けっして複製し再生されないように企てられたわけではない。

それは、素晴らしい言語の機能ではないだろうか。
宇宙の結合と解離の不変的システムを理解し、再生するために
発見された言語の特性こそ、
ユーティリティとエンジニアリングと、
そしてシナジェティクスとの空隙を埋めるものなのだ。

最初の自動機械

ITとロボットによって完全に機械化された人間こそが
最初の自動機械になれるのである。

自動機械へのプロセスとは、
1.
筋肉と条件反射によって機械化された人間は、
やがて自動機械に置換される。

2.
そして、物理的な生産者としてすべての存在意義を失った人間は、
もっぱら産業の均衡に不可欠な元素を
完全に再生的に利用するユーザとして存在し始める。

デザインサイエンスは、その元素の再生的な循環パターンにしたがって
<生活器(livingry)>を生産するテクノロジーなのである。

つまり、完全な<生活器(livingry)>がなければ
自動機械というユーザも存在できないのである。

経済的な自由

自由を奪うための政治権力は
もっぱら経済的な自由を少しずつ減らすことで十分に機能している。

ほんとうに大切な自由は、経済的な自由ではない。
エネルギーと食料、そして水からの自由だ。

エネルギーと食料と水から、自由な時間と空間が生成できる。

自由な時間と空間をもっとも効果的に現実化できるのは
安全で、経済的で、耐久性を兼ね備えたモバイル・シェルターである。

バイオスフィアを自由に移動する
モバイルシェルターという宇宙船がデザインされていないのだ。

この現実を大気圏外テクノロジーと比較すれば
意図的に遅延させられた驚くほどの非経済的世界として
受け入れられるだろう。

光合成モバイルシェルター

地球から1.5億キロ彼方で輝く太陽光を使う
光合成を手放した人類の課題を
科学的に解決する方法はクリティカル・パスにある。

自由な心と
自律的モバイルシェルターによって
再びバイオスフィアの生きた現実と出会えるのである。


『クリティカル・パス―宇宙船地球号のデザインサイエンス革命』
バックミンスター・フラー著 梶川泰司 訳 2007年 白揚社

原理的選択へ

社会的選択とは、人間の知、行動や知覚、感性さえも
そうした全体を拘束し、
自由から逃亡するための選択のことである。

原理的選択の場は
シナジェティクスにある。

人間の自由をさらに拡大する自然の原理において
原理そのものを発見する場である。

幾何学だけではなく、記号のテクノロジーを
そして自己のテクノロジーを
根こそぎ作り替えるのではなく
自らを陳腐化するために。

物質の革命はその後だ。

概念モデルへ

私は、29歳の時、師と共に
シナジェティクスモデルの誕生に立ち会い
その概念モデルの爆発に
立ち会わねばならなかった。

それも、そのような概念が表されている書物ではなく、
概念を表明しているメタフィジックスの出来事にしたがって
やがて目的論の元で試行されていく
デザインサイエンスの実践活動に自発的に向かった。

直観と同時的に
そして概念と非同時的に。

はじめに
概念モデルの爆発ありきである。

銀河新年2016 絶望的な連帯の始まり 

貧困化は救済の形態と方法から作り出される。

あらゆる生産的な富の固定化と分配方法の独占こそが
富の緩慢な死である。

1000万人の移動する難民救済のための
食料、エネルギー、水、シェルターの供給が
国連ではなく、貧民の絶望的な連帯から生まれるならば
包括的な宇宙のテクノロジーを利用する以外の道はないだろう。

球状大地と富とをつなぐ本質的な媒介者は
もはや人間ではなく、バンアレン帯を通過する
無数の宇宙線のエネルギーになるだろう。

そのエネルギーを変換するテクノロジーは
すでに発見されているからだ。

そのテクノロジーを効果的に利用するには
最新の宇宙論を理解しなければならないだろう。

太陽系に存続する惑星地球は、つねにエネルギーを受容する器である。

浮遊するテンセグリティ

テンセグリティ構造の製造技術論は混乱していて
それらは、しばしば断片的な経験で組立てられ
体系的で継続的な理論形式はほとんど残されていない。

その理論が導く作用効果は首尾一貫しているにも関わらず、
ほとんどは、雑多で経験的な形式を引きずったままの
未知の原型システムとして捉えられているが
基礎で固定され、
そして、テンション材が一本でも破断すると崩壊する構造は
張力によって統合されたテンセグリティ構造ではない。

しかし、『クリティカル・パス』(バックミンスター・フラー著 1981)で
引用される<浮遊するテンセグリティ>は
現代の素材から水に浮かぶ超軽量テンセグリティモデルで再現可能である。