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シナジー vs 動的平衡

生物学が<動的平衡>の概念を発見するはるか前、
そして1944年にシナジェティクスが
<ベクトル平衡体モデル>を発見する以前の1927年、
既にバックミンスター・フラーは
圧縮材が不連続であるテンセグリティモデルを発見していた。

<動的平衡>の概念は
複数のシナジェティクスモデルに変換されてきた。

シナジェティクスでは
<動的平衡>を形成するすべての作用を
<シナジー>と呼ぶ。

☆Fig. 465.03 Rotation of Four Axes of Vector Equilibrium: Articulation of Eight Triangular Faces.
by SYNERGETICS 1975, RBF

Dymaxionの語源

ダイマクションバスルーム、
ダイマクションハウス、
ダイマクションカー、
ダイマクションマップの”Dymaxion” は
DY (dynamic), MAX (maximum), and ION (tension)という3つの概念から形成された。

張力を物質または構造の表面に移動させることの有利さは”Dymaxion” 理論を
高度に単純化しかつ物質化したテンセグリティ理論にもある。

テンセグリティは、バックミンスター・フラーの1927年の4Dハウスを源流とする
“Dymaxion”の発明史の最後に位置する。

蝿の目(Fly’s Eyes)

☆バックミンスター・フラーのフライズ・アイズ

蝿の目は、三角形化を採用していないので、未だ自律的構造ではない。

その形態のパターンを拡大しても人間は内部空間を利用できない。

自然の形態を模倣する行為は、デザインサイエンスではない。
デザインサイエンスは、自然界に潜む純粋な構造とパターンに関する
シナジェティクス原理の発見に根ざしている。

Fly’s Eyes have no structure

Fly’s Eyes

続)ネクスト・エデンドーム

デザインサイエンスは構造とパターンの原理と
他の物理学的な原理とを調整するだけではない。

シナジェティクス原理の新たな発見に遭遇するための
コスモグラフィックな探究心に燃えた峻烈な試みでもある。

原理の発見は必ず訪れる。
次に、優れた発明への変換は遅れてやってくる。

しかし、それが生存のために不可欠であればあるほど、
その物質化はもっとも遅れてやってくる。  梶川泰司

ネクスト・エデンドーム

1983年の最晩年のバックミンスター・フラーの2層膜のテンセグリティシェルターは
まだコンセプト段階であった。
そのモデリングの遺産を継承したノーマン・フォスターもまだ実用化していない。

イギリスのエデンドームは、テンセグリティではなかった。
このエデンドームの建造には2層膜のための巨大な足場を必要とした。
空間構造を構築するための足場のコストは構造システムと同等になる。

この30年間、だれもフライズアイ以上には技術的にも経済的にもデザインできなかった。

21世紀のテンセグリティシェルターは
個人のためのほぼ永久的な耐久性をもった全天候型の2層膜シェルターである。
そしてエネルギーと構造は自律型のモバイル用テンセグリティシェルターである。

足場の建造は現地生産のための固体的な建築技術である。
超軽量のモジュール型または展開型のテンセグリティは足場の建造コストを排除する。

フライズアイですら、未だ足場を必要とするモノコックデザインである。 梶川泰司

Fly’s Eye Dome
designed by Buckminster Fuller

33′ diameter fiberglass produced by John Kuhtik

テンセグリティーーーーその懐胎期の終焉

テンセグリティに関して
その学術的研究レベルに期待ができないのは
統合する張力への直観が
海賊の遺伝子に埋もれたままだったからではない。

テンセグリティが体系化されるには
まだ冒険的モデリングが少なすぎる。

航空力学が体系化する以前に
ライト兄弟が実際に飛行実験に成功したように
テンセグリティ原理の発見から生まれるテンセグリティ理論は
シナジェティクス・モデリングと原寸大モデルでの
力学的テストを通じてのみ高度に単純化するだろう。

大学や企業の研究室からは生まれなかったテンセグリティは
バックミンスター・フラーの予測さえ超えた懐胎期間を終えて
いよいよ実用化の段階を迎える。