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シナジェティクス原理からプロトタイプへ

「科学的法則は証明を必要とする。
シナジェティクスに記述された原理とその理論は
これまで経験的に論証されてきた。」  バックミンスター・フラー

ほとんどのシナジェティクス原理とその理論は
デザインサイエンスの問題解決の過程で生まれている。

それに伴う数学的な証明は
シナジェティクスの優先的な仕事ではないばかりか
シナジェティクスから新しいシナジェティクスは生まれていない。

最優先の課題を物質化したプロトタイプで十分だ。

プロトタイプとは
最小限のメタフィジックスとフィジックスが
ほぼ同時的に融合した希有な場所(=ドメイン)だから。

2014年1月20日
梶川泰司
デザインサイエンティスト

沈黙の発見

神聖(divine)とは
蔓状に延びた網状のブドウ(vine)の樹木のような
存在の神々しさを意味するが
忘れられた不確実な状態を永続させるために
有史以前からの擬似的な論理性に見せかけて
人々を承伏させてきた初源的でメタフィジカルな言葉である。

シナジェティクスは
言語の限界の発見からはじまる。
思考する道具としての言語によってその限界と発見は生まれない。
限界から湧き上がる行為は言語から生まれる行為とは異なっている。

シナジェティクスを探究する動機には
言語の限界からはじまる長い沈黙が含まれる。

思考する道具としての言語からこの沈黙は生まれない。

シナジェティクスは
あらゆる表象や記号とイメージ、
そして、条件反射のための記憶と経験とイデオロギーから
頭脳(brain)ではなく
精神(mind)を自由にするメタフィジックスである。

この包括的なメタフィジックスは
無数のシナジェティクスモデルを発見し
そのモデルが内包するモデル言語を
思考言語(thinktionary)に変換してきた。

そして、神聖幾何学のような初源的でメタフィジカルな言語は
シナジェティクスの包括的なメタフィジックスによって
破壊され、そして陳腐化される。

そして、このプロセスは今後100年間は継続するだろう。

それほどまでに
人々を容易に承伏させる初源的でメタフィジカルな言葉は
未来の思考をも満たしているのである。

思考言語(thinktionary)の翻訳

バックミンスター・フラーの『クリティカル・パス』は
哲学(メタフィジックス)や経済学の専門分野の知識から
(英語版の出版から17年間に日本の出版社が
複数回にわたって版権取得したにもかかわらず)
日本語で編集し翻訳できなかっただけではなく
数学や物理学の専門分野の知識からR.B.フラーの『シナジェティク』を翻訳すると
不適切で、しばしば空疎な誤訳になるのは
フラーの独自の造語や先行した独創的な理知からではなく
これまでの翻訳者自身の思考言語やその構築方法を
全否定しないからだ。

さらに、バックミンスター・フラーの日本語翻訳に関する超訳が
ほとんど成功しないのは
シナジェティクスやデザインサイエンスに対する理解度とそれに関連する語学力や
シナジェティクス・モデリングに関する包括的な経験不足だけではなく
フラーの独自の思考方法を生成する<思考言語(thinktionary)>を
日本語に変換できなかったからである。

シナジェティクスのモデル言語なくして
<思考言語(thinktionary)>は構築不可能である。

言い換えるならば、思考言語(thinktionary)の
シンタックスとセマンティックの相互変換は
日本語だけの問題ではなかったのである。