月別アーカイブ: 2007年7月

『自己エコロジー』のシナリオ

「意味を為す代わりに金を儲ける」時間は残されていない重要な転換点にいる。
しかも人類がまったく未経験なカオスポイントだ。


誤った情報に基づく時代遅れの制度と既得権のための現状維持によるのではなく、
予測的なデザインによってより大きな社会問題を解決する発明の才が、
人間にどれほどあるのか。


深々と根を下ろした古い思考パターンと先入観を投げ捨てるには、
どれほどの決断力を集中させなければならないのか。
その選択肢の行使に繋がる積極的な最初の一歩を踏み出す勇気が、個々
の人間にどれほどあるのか。


個人がそれぞれ実行しなければならないことは何か。

について、1982年の最晩年のバックミンスター・フラーの科学的な
ワークショップと講義をまとめたものだ。
このノートや映像は私のクロノファイルに保存されたままであった。
フラーの豊富な統計資料に基づいた論証は『自己エコロジー』(仮題)という250程度のページの本になるだろう。

『宇宙エコロジー』(美術出版社 2004)に次ぐ、メタフィジクス論でもある。
編集者は、可能なかぎりオリジナル原稿にそった方法序説を
具現化し、直接的な思考と軌跡を分かりやすく
読者に届けるためのシナリオを検討をはじめた。

skyという閉じた空間

バックミンスター・フラーがskyという言葉を使用する場合、
その意味は3通りあるだろう。
skyとは、

1.
Sky-Oceanは Airoceanであり
浮遊する都市(Floating City)は、
衛星都市(Sky Dwellingであり、 Habitable Satellite) である。
つまりskyは大気圏を意味する場合。

2.
コンラート・ローレンツの発見した<アクアリウム>のように
skyはバイオスフィアそのものであり、地球システムが含まれている場合。

3.
上・下の概念を伴った<天国>を意味するskyを
牢獄的システムとして批判する場合。
1と2の閉じた空間と違って無限の空間を伴う3番目の概念は、
太陽は東から昇る(Sun Rise)と考えていた時代に考えられた。

そして、Your Private Skyを「きみだけの空」と翻訳してしまった人は
エデンドームやバイオスフィア計画の初期の概念(1927,1949)の歴史性を逃している。

間違った翻訳にも歴史性がある。
高度資本主義消費社会の末期的な「きみだけの空」は、
「 Think global, Act local」(2000年のローマクラブの標語)
とセットで広く誤解された概念である。
エコロジーに所有の概念を結合させることは軍事的以上だ。

Your Private Skyとは、ジオデシック・テンセグリティ構造で包囲された
個人のための小さな透明なバイオスフィアのことである。

シナジェティクスでは、こうしたプリミティブな
言語と形態、そして概念とモデルの相互関連を
包括的に探査する。

参考書籍
『バックミンスター・フラーの世界』J.ボールドウィン  美術出版社
『宇宙エコロジー』バックミンスター・フラー+梶川泰司 美術出版社

ジオデシック・ドーム

一回の飛行で輸送と設置ができ、アメリカの南極基地の直径43メートル、
床面積1400平方メートルの、
ステンレス鋼とアルミニウムでできたジオデシック・ドームは
風速120m以上のブリザード(極地に見られる暴風雪)に耐えられるばかりか
完全に雪に埋没したときの積雪荷重に耐えられる。

つまり雪かきのまったく不要な構造を
どうして日本の豪雪地帯に建造しないのか。
同時にこれ以上の経済的な耐震機能を備えた空間構造は
建築テクノロジーには存在しない。

極地での日常的な頻度で発生する非常事態が、
建築ビジネスではないだけである。

超物質

家は、最初から生命を安全に確保する
シェルターとして経済的に軽量にデザインすべきである
21世紀にその専門家がいないならば、
自分でデザインすることは唯一残された生存方法だ。
それは困難なことではない。
バックミンスター・フラーの時代と異なるのは
シェルターに必要なあらゆる部品は販売されているからである。
販売されていないのは、包括的デザインという物質を超えた
知識や知恵だけである。

テンセグリティの確率

どの家庭にも、棒とひもは備わっている
棒とひもを空中に放り投げて落ちてきたとき
たまたま、それらが互いにから絡まって、
テンセグリティになって落ちてくる確率を信じてみよう。

猿から人間は進化したと考える場合の確率と同じだとしても、
重要なことは、この確率が成立するには
観察者はテンセグリティが棒とひもから構成されているという
ことを予め知っている必要がある。

シナジェティクスモデル

音楽を作る人は少なくない。
しかし、作曲するためのピアノまで自分で作る人はいないだろう。
言葉を使わない人はいない。
しかし、言葉そのものを作る人は、限られている。

シナジェティクスモデルをつく人は、ピアノを作る人よりも少ない。
シナジェティクスモデルは知られているモデルだけでも
すべて制作すると1000点以上はあるだろう。

そのすべてを解読できる日は近づいていると感じたのは1992年だ。
しかしそれからが長い。
最大の問題は、解読するにつれて、その構造と意味を再構成する過程で、
新たなモデルが増殖することである。

シナジェティクスモデルは稀有な階層的なハイパー言語だ。
幾何学的オブジェには変換できないメタフィジクスモデルだ。

これらのモデル群は作ってから、学ぶことが圧倒的に多いことがその証明だ。
シナジェティクスは自動自己教育装置について、もっとも純化した教育工学を
確立している。

自己表現

多くの建築家は、建築デザインを
キャンバスに向かう画家のように
自己表現の場であることを疑わない。

デザインサイエンスは、美的な探求を構造デザインに求めない。
真の構造は、表面に関与しないばかりか、そのほとんどは不可視だ。
炭素繊維の張力材でテンセグリティモデルをデザインする前から
炭素繊維は、ミクロのテンセグリティ構造を具現化している。

キャンバスよりも概念の不足が、専門性を許している。

なぜ『クリティカル・パス』と『シナジェティクス』なのか

バックミンスター・フラーは、1983年まで
『クリティカル・パス』と『シナジェティクス』をさらに詳しく研究し、
自らの非凡な才能を投入し、人間が情報収集と問題解決のためにマインドを使う選択肢と、
平和と調和そしてかつて夢見たこともないほど高い
生活水準をこの惑星の全人類にもたらすために人類のテクノロジーの遺産を
応用する選択肢とを理解し、
その実現を促進することを目的とする個人に期待し
可能な限り支援していたと断言できる。

この事実は、アメリカの研究者と共に、
1984年から1988年まで彼のクロノファイルを
当時のカリフォルニアにあったバックミンスター・フラー研究所で
検証した結果である。