予測的デザインサイエンス」カテゴリーアーカイブ

自然選択と宇宙選択の違い

一九六九年からはじまったJ・ラヴロックによるガイア思想は、科学的仮説から脱してエコロジー概念を包括的に拡張しバイオスフィアに最適な物理化学環境を形成するフィードバック・システムを実証してきた。
ガイア思想はギリシャ神話の母なる大地の女神(Gaia)を語源とし、まだ人格神への郷愁を漂わせているがゆえに、一九六〇年代以後、エコロジー運動で偽装したマルサス主義者たちは、人口増加と枯渇する天然資源とをエコ神学的黙示へと還元するために、より神秘的に変容させたガイア理論で説明したがっている。

しかし、マルサス派の深刻な予測に反して二十世紀の食物生産は人口増大に伴う需要と同じかそれを上まわっていた。

……世界全体でみると栄養摂取不足の子どもの八十パーセントはこうした農業製品過剰国〔インドなど〕(=食料輸出国)に住んでいる。生態系の混乱と惑星破壊の原動力をアジアやアフリカでの人口爆発に求める有神論的エコロジーは北半球の工業先進国でもっとも支持されている。

資源とエネルギー、食料に関する不足は二十一世紀においても政治的なプロパガンダに過ぎない。それは、冷戦後にも存続する強固な〈すり込み〉のひとつである。


『宇宙エコロジー』バックミンスター・フラー+梶川泰司 著
「もうひとつの現実―〈ダーウィン自然選択〉から〈フラー宇宙選択〉へ」p. 302

主観的エコロジー

エコロジーの起源は、ダーウィン一派の適者生存説を推進していた動物分類学の権威ヘッケルにより、生物学の一専門分野として創設されたにすぎない。

科学で偽装したエコロジーは先験的主観性が決定的に不足している。

人類にとって、主観的エコロジーとは、
水、食料、エネルギー、住居の4つの要素からなる
他人を犠牲にしないテクノロジーの総体である。

再考)住宅の空間機能について

住宅の空間機能は人間の意識を
矯正する空間になるばかりか
精神病を発現させる可能性が高い。

仮設住宅でその隠れた機能は
短期間に、そして
最大限に現実化する。

本来の空間機能は
物事の在り方に気づき、同時に自己との関わりを向上させる。

自分の住み家を、自分で作り出し
自分で管理し、修理できない哺乳類は
人類だけである。
住み家制作を専門分化し、その所有のみに従事したのは
怠惰に矯正された結果である。

これまでの住宅の空間機能に
エネルギーと食糧、そして水の包括的な再生装置が
まだ組み込まれていないのは、
意識的な進化を自負する哺乳類としては、もっとも不完全で
不健全である。

システムの優位性とは何か

モバイル・テンセグリティの現実的な居住空間に関して、
都市での労働や健康という概念、コストと耐久性との対比、
国家が定義する耐震性、
そして食料とエネルギーを貨幣で買う経済システムの優位性を放棄しなければならない。

銀河系での惑星地球システムの希有な優位性と
バイオシェルター内部での
植物の光合成によるエネルギー経済が忘れられているかぎり。

広大無辺に拡がった虚無という企て

貨幣経済学が、自然資本(海による膨大な二酸化炭素の吸収力や酸素や水など)と
自然エネルギーを貨幣価値に換算しようとしないのは、
宇宙とは広大無辺に拡がった虚無ではなく、
統合されたテクノロジーの集積であるという現実を隠蔽したいからだろう。

さらに、GNPの公的部門から外的コスト(公害対策費など)をすべて隠蔽する行為も、
1980年代から贈与経済学を完全に隠蔽してきたのも同じ動機だ。

シントロピーは、
広大無辺に拡がった虚無という人類の企てを無価値にする
非人格的な宇宙のテクノロジーである。

人工物(artifact)とは何か

生存するには非生産的すぎるこれまでの
人工物(artifact)とノウハウのほとんどは、
権力構造に属する人間が考案した適者生存の産物である。

鯨の海洋ネットワークは、哺乳類の人工物(artifact)である。

その鯨のネットワークに比較すれば「電力と情報のネットワーク」さえ、
抜け目なく課金するための分断された局所的なネットワークである。

アンチ・プロダクトデザイン再考

デザインサイエンスから学んだことは
経験の目録全体が同じでも、
経験を系統立てて述べる方法は絶えず少しずつ変化し、
思考過程に他者が参加すれば、常に自発的な思考が継続できることにある。

デザインサイエンスとプロダクトデザインとの違いは
すべての方法は目的意識(=know why)が先行することにある。
デザインサイエンスに、プロダクトデザインコースは存在しない。

自分が関与したい領域のすべての知識と手法(=know how)を学んでから
目的を達成するデザインを形成することが
もっとも効果的だと思考する疑似<システム>は
シナジェティクスにも存在しない。

自己のテクノロジー

個人には、誰の許可も必要としないイニシアティブが与えられている。
個人だけが思考することができ、自分の経験に現れる〈原理〉を探し求めることができる。
宇宙的規模で志向する余裕を確保できるのは個人だけである。

これが、自己のテクノロジーによる
予測的デザインサイエンスの原初的根拠である。

シナジェティクス焚火

炉と煙突のない焚火は、閉鎖空間ではないと思われている。
だから、焚火から煙を減少させるためには
多くの酸素(または風)が必要だ。

煙の少ない焚火、つまり
ロケットストーブのように
吸気を引き込み、未燃焼ガスを二次燃焼させるという方法が
焚火にも応用できる。

つまり、流体が流れる経路に穴をあけると
そこから吸気を形成するというベルヌーイの原理は
焚火を無数の煙突がある一つの閉鎖空間に見立てることが出来る。

焚火に、明確な内部と外部が形成された時、
少ない薪でより長く、煙を減少させる焚火の方法が
より長い燃焼経路にあることが分かったのである。

より長い燃焼経路は、シナジェティクスの最密パッキングとその隙間の概念からやってくる。

この動力学的なシナジェティクス焚火も満月も
ともに互いに張力(=吸気)に変換された効果なのだ。

濡れた薪や腐食しかけた倒木ですら燃える
シナジェティクス焚火は、緊急時の基本的な生存技術の一つである。
(ムービーなどで、共有すべきデザインサイエンスの基本技術でもある)

経済的な自由

自由を奪うための政治権力は
もっぱら経済的な自由を少しずつ減らすことで十分に機能している。

ほんとうに大切な自由は、経済的な自由ではない。
エネルギーと食料、そして水からの自由だ。

エネルギーと食料と水から、自由な時間と空間が生成できる。

自由な時間と空間をもっとも効果的に現実化できるのは
安全で、経済的で、耐久性を兼ね備えたモバイル・シェルターである。

バイオスフィアを自由に移動する
モバイルシェルターという宇宙船がデザインされていないのだ。

この現実を大気圏外テクノロジーと比較すれば
意図的に遅延させられた驚くほどの非経済的世界として
受け入れられるだろう。