月別アーカイブ: 2010年12月

グランチについて

バックミンスター・フラーは死の数ヶ月前に次の言葉を残している。

「北アメリカ大陸のアメリカ領内にある産業界のあらゆる工場とアメリカの領土、
そして物理的な富の生産能力があって実際に生産するあらゆる企業の九十パーセントは、
スイス銀行にある口座の見えない暗証番号を保有する人間によって目の届かないところから支配され、
冷酷に機能する超国家企業という、
人間には見えない所有物にすでになってしまったかまたはなろうとしている。」

ほとんど何のリスクも負わない資本主義という新たな巨人が、
現在の世界を支配しはじめていることを
バックミンスター・フラーは30年前に予想していた。

その彼が個人に期待し、何をして欲しかったかは、
『クリティカル・パス』(バックミンスター・フラー著 梶川泰司訳 白揚社 2007)
の第6章のワールドゲーム理論およびデザインサイエンス戦略に凝縮されている。

プラトンの正多面体

最も深く頑なに信じられているものは
最も知られていることである。
例えばプラトンの正多面体(Platonic Solids)。

中身がつまった固体的世界観をだれも疑わなかった。
シナジェティクスに多面体は存在しない。

多頂点体(polyvertexia)は科学的な概念を表している。

『コスモグラフィー』(バックミンスター・フラー著 梶川泰司訳 白揚社2007)は
シナジェティクス入門講座
デザインサイエンス講座のテキストである。

非物質化のためのシナジェティクス入門講座

授業に遅刻しても遠足に遅刻するこどもはいなかった。

シナジェティクス入門講座は
黒板式授業でも、
シナリオのある誘導型のワークショップ形式でもない。

森のなかで見知らぬ昆虫の採集に夢中になるように、
週末の金曜日から概念の遠足に出かけ、
理解した数だけモデリングが始まる。

遠隔地を結ぶスカイプによるダイアローグ形式は
シナジェティクス概念の物質化だけではなく、
デザインの非物質化という非鏡像的で相補的な手法に
到達する機会を提供する。

この5年間、シナジェティクス入門講座に
一度も欠席した講座生はいなかった。

真の教育を非物質化するためには
キャンパスと通学、そして土地不動産取得に伴う金利の支払いのための入学金
は最初に廃棄されなければならない。

さもなくば、学習は自律しないだろう。

一粒万倍革命

一日のうち8時間を自分の時間としてもてないかぎり
テクノロジーは企業や国家が所有していることになる。

自分の家を所有するのに30年もかかるのは
金融テクノロジーが支配している奴隷の時代だ。

デザインサイエンスのシェルターは
稲作のように
一年草の一粒万倍として
金利の方が元金を上回る機能が
収穫されるだろう。

IT革命によってシェルターはけっしてデザインされなかったが
デザインサイエンスによって
テンセグリティシェルターは最初のtrimtabになるだろう。

そのプロセスを学び、習得するための
プロトタイプの制作に挑戦するバックミンスター・フラーの
デザインサイエンス・プログラムで
建築という言葉はけっして使われなかった。

テンセグリティシェルターの構造の革命は
建築が権力のテクノロジーで機能するかぎり
権力の記号学から絶縁したままだ。

実際、権力の記号学にいまでもシナジーに関する多様なモデル言語は
存在しない。

太陽系エフェメラリゼーション

テンセグリティの最適な張力は引力である。

断面積さえ存在しない、
距離を超越した見えない張力以上の
テンション材は存在しないゆえに、
自然にのみ完璧なテンセグリティが存在する。

究極のエフェメラリゼーションに到達できる自然は
完璧な重さのない対称性を具現化する。

ジオデシック・テンセグリティ構造

ジオデシック・テンセグリティ構造をデザインするには
テンセグリティから始めなければならないだろう。

ジオデシック・テンセグリティ構造において、
ジオデシック構造よりも剛性や強度を倍加させ
重量を半減させるためには、
圧縮的なテクノロジーよりも
張力的なテクノロジーのほうが優位になる。

バックミンスター・フラーが
ジオデシックシステムよりも
テンセグリティシステムを先に発見し
テンセグリティ構造をデザインしているのは
偶然ではないだろう。

シナジェティクスの起源とその歴史は
シナジェティクスの学習過程ほど
論理的に構築されてはいない。