月別アーカイブ: 2008年4月

デザインサイエンスの方法論 リダンダンシーの理論的排除について

直径に関わらず、ジオデシック・ドームが経済的にデザインされることは稀である。

安全係数が大きくなればなるほど、リダンダンシーが大きくなるが、
荷重を分散する自由度は小さくなる。
航空機は飛行するために軽量化されなければならないので、
リダンダンシーの理論的排除が積極的に行われている。
実際、建築業界では4倍から倍程度の安全係数を使うのに対して、
航空機業界では、2倍以下の安全係数しか使わない。
この違いは、技術的に無知であればあるほど、
適用する安全係数は大きくなることを証明しているだろう。

ジオデシック構造は荷重を分散しない「柱と梁」を基準とした
連続する圧縮材を前提に分析されている限り、
これまで建てられてきた巨大ジオデシック・ドームは、
航空機とは比較にならない過剰な安全係数で造られている。

間違った前提からジオデシックドームは航空機ほど安全ではなくなっている。

Twonessと『コズモグラフィー』(バックミンスター・フラー著)

『コズモグラフィー』はシナジェティクスとデザインサイエンスの相補的な twonessが描かれている。
インターネット入門講座(6ヶ月間)の教育プログラムはこのtwonessから始まった。

半年後、1期生はデザインサイエンスプロジェクトに
2期生はシナジェティクス翻訳プロジェクトにそれぞれ自発的に従事している。

どちらも互いに遠隔に住む個人の繋がりが、
教師にもキャンパスにも束縛されない現実(real)を生んでいる。

同時に、概念の牢獄の外観がやっと見えてきたのである。

テンセグリティ・ジオデシック構造の歴史

ジオデシックドームの歴史を見ると、
バックミンスター・フラーはダイマクション・ハウスの
プロトタイプの制作直後に
大円モデルとテンセグリティモデルの発見を経験しながら
ジオデシック数学への移行まで数年間を要している。

さらに、テンセグリティ・ジオデシック構造の完成までは
バックミンスター・フラーでさえ最長の17年間を要している。

現在、ノースフェイス社のテント構造に短期的に滞在する以外、
テンセグリティ・ジオデシック構造に誰も住んでいないのは
テンセグリティ・ジオデシック理論と実践をマスターした個人は
バックミンスター・フラー以外にいなかったからである。

もっとも経済的な個人のためのテンセグリティ・ジオデシック構造が
実現されるまでデザインサイエンスは不在である。
個人によるクリティカル・パス方法の成果はまだ証明されていない。

シナジェティクスの翻訳・註釈プロジェクト開始

シナジェティクス入門講座生への最終講義を終えた。
理解のプリセッションは名状しがたいイメージを伴う。
講座生は6ヶ月間のキャンパスのないデスクトップ上での
(つまり机上の)思考実験から、
予測的に必要とされるピクチャーを描き始めた。

第2期生による遠隔地を結んだ
シナジェティクスの独自の翻訳・註釈プロジェクトが開始された。
この加速する平行移動は、スカイプの分散型ネットワークの支援によって
自発的に発生した企てである。

シナジェティクスほど自立的な知としての「翻訳学」が求められることは稀である。
モデリングと概念との結合作業において、
シンタックスとセマンティックの相互変換と統合の試行錯誤を経て、
言語学の下位概念ではない「翻訳テクノロジー」が形成される。
(「思考を声に出す」過程のすべてはオーディオ・ハイジャックされ、
ダウンロード可能なクロノファイルは
もっとも優れた自己のテクノロジーの一部となった。)

バックミンスター・フラーの遺作となった『コズモグラフィー』が
シナジェティクス入門書ではなく
シナジェティクス原論であったように、
この翻訳・註釈プロジェクトで形成される翻訳学は、
モデル言語を含めた註釈学となる可能性がある。
どんなに複雑なリンクも一筆書きの変形だ。
どのルートも2度通過すれば、つまり相互作用すればどこにでも行けるトポロジーだ。
われわれは距離を超越するためには交差点(=ノード)を増やすことを躊躇しない。

これらの自己のテクノロジーによって、
彼らはもう一つの「宇宙船地球号」に帰還できるだろう。
そして、外部から見たこの「宇宙船地球号」は、
かつて英語圏内からでも観察できなかった
新たなメタフィジクスの外観を備えているにちがいない。
晩年のバックミンスター・フラーがアジアに頻繁に停泊していた歴史的理由かもしれない。

講座生たちがシナジェティクスを読破する前に、
「宇宙船地球号」に降り立とうとしていることは記念すべき方法である。
経験の後の知の探査によって、情報量を劇的に節約できるからだ。

それは統合の関係数を増大させる明白なプロセスかもしれない。
インターネットによるシナジェティクス教育は、
どんな建築よりも本質的にテンセグリティ構造に接近している。

通信テンセグリティ

P2Pはエフェメラリゼーションがもっとも成功した
21世紀の桃源郷である。
http://hibagun.net/tensegrity_skype/tensegrity_skype_jp.html

この不可視の通信テンセグリティの反建築的革命性は
最初の1年間いっさいメディアで報道されなかった。

事実と情報は非対称的(=鏡像的)ではなく、無対称的である。

真実は、電子と陽子のように、
そして、圧縮材と張力材のように
つねに非鏡像的で相補的である。