今日からシナジェティクス入門講座の後期の講義とワークショップが始まる。
人間は多くの時間を持っているわけではないから
同じ経験を講義で喋らないように心がけている。
講座生の貴重な時間は、
新しい経験を目録化する時間に使われるべきである。
その結果、私の講義は毎回たいてい連続3時間を超える。
終わるのが深夜になることもある。
やむなく欠席した人は、ダウンロードして講義を聞くことになるが、
他者の経験の目録化のライブに退屈しないのは
「声に出して思考する」時の即興性に関連しているだろう。
この即興性は
やがてシナジェティクス・モデリングの相互作用に深く影響を与えることになる。
モデル言語の形成には明らかに話す行為が介在しているからである。
シナジェティクス・モデリングは
原理の存在の確認を目的としているが、
「声に出して思考する」の過程で、思考の自発的な流れを誘発し、
ついには新たな原理の発見をもたらす装置となる。
G・グールドが声を出しながら演奏するバッハの平均律のように
思考にも平均律が発生する。
音程を均等な周波数比で分割した音律があるように
経験を同期する周波数域に変換できるか、できないかで
対象化することができる。
この経験にはすばらしく原始的な喜びがある。
言語の形成に参加する以上のコミュニケーションはないのかもしれない。