マクロ宇宙もミクロ宇宙をも認識できる人間が、
この4面体である炭素からなる構造システムを
生存するための住居として対象化することは、
自分を最大の有限な外部から見るもっともプリミティブな行為である。
このテンセグリティシェルターのプロトタイプの主要な2つの構造材は、
圧縮材が炭素繊維をプラスチックで強化した薄板材であり、
引張材が炭素繊維ロープから構成される。
しかし、このテンセグリティシェルターの圧縮材は、
連続した引張材のようにカーボンの薄板材を連続して球状に構成している。
カーボン材は剛性も強度があるが、薄板材の場合は本来曲がりやすい性質も利用できる
(シャトルの円筒ボディの補強や橋脚の耐震対策に利用されてきた)。
新たにシェルターという人工物として、圧縮材を連続させた
ネオ・ジオデシックスの4分割パターンを採用したが、各構造材の分子構造システムは、
連続的な相互の張力と不連続な圧縮力からなる。
黒鉛結晶質として原子の配列が安定しているためである。
その黒鉛結晶質でさえ、非連続な圧縮材からなるテンセグリティ・マストで説明できる。
炭素繊維が、4面体状テンセグリティ・マストを構築する方法と
まったく同じように生成されている可能性は高い。
テンセグリティ・マストこそは、規則的な構造に従って生産できる、
最強かつ最軽量の柱である。
マクロ宇宙もミクロ宇宙も常に、
連続的な相互の張力と不連続な圧縮力のみが組織化する構造システムである。
シナジェティクス研究所
梶川泰司(デザインサイエンティスト)
4面体からなるテンセグリティ・マスト
4面体からなるテンセグリティ・マスト:解説 バックミンスター・フラー
「テンセグリティ・マストを構成する各ストラットは、
4面体からなるテンセグリティ・マストの構成要素となり、
さらにミクロなマストであるそのストラットも、
4面体からなるテンセグリティ・マストで構成される。
これらの過程は原子レベルの極小規模に到達するまで繰り返され、
さらに原子の内部構造は、不連続な圧縮力と連続的な張力で構成されているのである。
テンセグリティ・マストの構造原理は、素材の単位重量あたりの強度を比較した場合、
なぜ炭素繊維の強度が、微量の炭素を含む構造材用の鋼鉄の12倍、
そして最も強いアルミニウム合金の4倍にもなるかを証明している。」
(『コズモグラフィー』バックミンスター・フラー著 梶川泰司訳 白揚社2007)