大地震が来るたびにモービルホームの生産は開始されるが、
大恐慌が来る前に、生産を開始する必要性に関して
バックミンスター・フラー以上の予測はこの30年間存在しなかった。
移動式住宅の生産にこそは、
地産地消が不可能なメタボリック・デザインが効果的である。
移動可能な住居こそが、エコ住宅である。
「・・・・人工物デザイン計画の優先順位で
世界的電力ネットワーク統合の次にくるのは、
当面は地理的に固定されている世界中の人間の活動のための、
物理的環境を制御する装置である。
人間の活動は、自動車、バス、鉄道、航空機、衛星といった
迅速に移動する環境制御人工物とは対照的に、固定されているのである。
都市の超高層ビルは静止して見えるので、
それらの部品がすべて遠隔地から輸送されてきており、
また、そういった部品と素材の多くは製造とその組み立ての過程で
何度も相互に輸送を繰り返している事実に気づいている人はあまりいない。
1980年の時点で、アメリカの平均的家庭は3年ごとに住んでいた町を出て、
新しい場所へ転居した。彼らがそうするのは主として、
移動した工場やオフィス、そして新しい空港やショッピングセンターが
もたらす地域生活の利便性に合わせて、
人間の生産機能を再調整するためである。
私が移動式住居について語るとき、それはショッピングトレーラーや
テントを指しているのではなく、
長期にわたって地理的に固定しておくこともできるが、
どんな距離でも広い範囲を容易に、
そして経済的に輸送でき再設置可能な住
居のことを指している。」
『クリティカル・パス』第10章から引用
バックミンスター・フラー著 梶川泰司訳 白揚社2004