翻訳は、日本語として美しければ忠実とはいえない。
原文に忠実であれば、美しくない。
そのどちらかで決着がつかなかった場合
原著者に矛盾があるか、
訳者の日本語力に問題があるかのどちらかだったが、
バックミンスター・フラーの翻訳に関しては
新しい不足が発生した。
1970年代、バックミンスター・フラーは
難解だと最初の翻訳者が言い始めた。
シナジェティクスは英語力の問題ではなかった。
シナジェティクスを理解していなかったのがその原因だ。
シナジェティクスを理解するためのmore with lessは
シナジェティクスモデルの再現を経験することだ。
かつてのバックミンスター・フラーの翻訳者たちが
ベクトル平衡体モデルもテンセグリティモデルも
再現していなかった。
主要な概念を忠実に日本語化することは
ほとんど不可能だったに違いない。
実際、過去に出版された2冊の『宇宙船地球号操縦マニュアル』の翻訳においても、
概念の日本語化はまだ未完成であるし、
『テトラスクロール』や『ダイマクションの世界』に至っては
シナジェティクスの概念の翻訳は無残である。
そればかりか、『テトラスクロール』では原文の重要な概念を
意図的に省略して訳されている。
モデル言語力の不足は、決定的なメタフィジックスの欠如を意味している。
モデル言語力の習得を効果的にするプログラムは
包括的教育プログラムである。
つまり、現在の知的産業社会のもっとも弱点とする教育プログラムである。