エフェメラリゼーションの起源  その1

ジオメトリーをアートにする試みからアートもジオメトリーも変革されたことはない。
アートをジオメトリーにしようとする試みも同じだろう。
芸術はつねに既存の芸術形式を模倣しない純粋な形式を作り出すが、
原理は異なった原理を作り出すために既存の原理を再利用するからだ。

ケネス・スネルソンはテンセグリティオブジェを創作した。
彼は形態的な独創性を、オブジェの回転対称性を乏しくするか、その非対称性に求めた。
しかし、形態的な美と引き替えに同型からなるテンセグリティモジュールは著しく後退したばかりか、構造としてのバックミンスター・フラーのテンセグリティを否定するという
この半世紀間の彼の見解はジオメトリーをアートにする試みと理念の限界を示している。

バックミンスター・フラーがシナジェティクスと幾何学の相違でさえ
オブジェという客体に求めなかったのは、シナジェティクスのモデルが
目的(object)ではなく方法だからだ。
シナジェティクスの包括的な思考は、理性によって獲得される最高の概念に対して
もっとも直観的にかつ物理的に到達できる方法をもたらしてきた。
この方法は科学で一般にいわれているような基礎と応用という産業化を
強要する社会的使命からも自由であるばかりか、
表現者独自の自己実現要求を魅了させる概念と絶縁していながら、
物理的な変換方法に拘束される条件でさえもっとも自由な思考を展開できる。

そして、テンセグリティは<自然を模倣しない>思考に共鳴した
史上初の構造原理として発見されたのである。

バックミンスター・フラーはこうした思考のプロセスから生まれる新たな実在を
アーティファクト(artifact)と呼んでいた。
分断された幾何学と芸術を統合するのは幾何学でも芸術でもない。分断する方法は、
可逆的に統合する方法にはならなかった。
そればかりか予測できない統合作用によって
かつての目的(object)さえも陳腐化され否定されるのである。

統合する方法は、物質を非物質化するための過程(=エフェメラリゼーション)を
記憶した人工物に変換される。

テンセグリティ・シェルター

テンセグリティ・シェルター

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