テンセグリティに面は存在しない。
隕石の中からバックミンスター・フラーレンが発見されたが
面はついにイマジナリーであった。
宇宙に多面体は存在しない。
テンセグリティ球には面はなく
張力で囲まれた無数の窓が存在する。
数えられる無(nothingness)として。
梶川泰司
270 struts-tensegrity by RBF
付加すべき機能がなくなったばかりか
排除する機能もなくなった状態から
突如シナジー的に形成される外力分散機能とは
構造の動的平衡の完璧な視覚化である。
テンセグリティにおける
最小限の2つの現実とは
互いに分離され出会うことのない張力材と圧縮材である。
統合する意志がないかぎり
永遠にそれぞれの現実に属している。 梶川泰司
Universe as “A Minimum of Two Pictures”:
Evolution as a transformation of nonsimultaneous events:
the behavior of “Universe” can only be shown with a minimum of two pictures.
Unity is plural and at minimum two.
(Drawings courtesy Mallory Pearce)
「半分の長さは倍の長さに等しい」というdualityの法則は
ジオデシックス理論ではfrequency理論から創出される
シナジー原理そのものである。
半径を増大させる時、ジオデシックテンセグリティ構造を
構成する部材は、より細く薄くなり(=けっして相対的ではなく)、
単位体積当たりの構造体の重量は、加速度的に軽量化される。
ただし、分割数の増加と共に半径も比例して増大するならば。
巨大地震に対抗するために構造物に対して構造安定志向が生まれた。
免震、耐震、制振といった機能は通常の構造物には存在しない。
施工の複雑な「免震」や高価なダンパー装置を付加する「制震」は、
「耐震」と比べると建築構造物の場合はさらに高コストになる。
しかし、免震、耐震、制振であれ
基本的には大地に依存し大地にエネルギーを流し込む構造安定志向は、
実際には恐怖と無秩序の原因となっている。
テンセグリティ構造は本質的に共振するメカニズムをもっている。
テンセグリティは共振によって外力分散機能を形成する自然の構造システムである。
そのためのいっさいの付加的装置を排除してデザインされる。
テンセグリティ構造をデザインすることは
形態のデザインではなく
角度と振動数の調整を意味する。
航空機は高速飛行中に受ける気流と衝突で発生する種々の振動に対して
免震や耐震そして制振のための付加装置が存在しない最初の人工物である。
航空機の機体や翼が固体的ではなく柔軟な強度でデザインされているように
住宅も、地上に一時的に停泊しているより軽量で剛性の高い機体(=動く自律的シェルター)
としてデザインすべきである。
☆図版解説
テンセグリティは穴だらけの内圧のないバルーンである。
もっとも経済的なニューマッチクである。 梶川泰司
Synergetics (Fig. 761.02 Function of a Balloon as a Porous Network.)
R. Buckminster Fuller