巨大地震に対抗するために構造物に対して構造安定志向が生まれた。
免震、耐震、制振といった機能は通常の構造物には存在しない。
施工の複雑な「免震」や高価なダンパー装置を付加する「制震」は、
「耐震」と比べると建築構造物の場合はさらに高コストになる。
しかし、免震、耐震、制振であれ
基本的には大地に依存し大地にエネルギーを流し込む構造安定志向は、
実際には恐怖と無秩序の原因となっている。
テンセグリティ構造は本質的に共振するメカニズムをもっている。
テンセグリティは共振によって外力分散機能を形成する自然の構造システムである。
そのためのいっさいの付加的装置を排除してデザインされる。
テンセグリティ構造をデザインすることは
形態のデザインではなく
角度と振動数の調整を意味する。
航空機は高速飛行中に受ける気流と衝突で発生する種々の振動に対して
免震や耐震そして制振のための付加装置が存在しない最初の人工物である。
航空機の機体や翼が固体的ではなく柔軟な強度でデザインされているように
住宅も、地上に一時的に停泊しているより軽量で剛性の高い機体(=動く自律的シェルター)
としてデザインすべきである。
☆図版解説
テンセグリティは穴だらけの内圧のないバルーンである。
もっとも経済的なニューマッチクである。 梶川泰司
Synergetics (Fig. 761.02 Function of a Balloon as a Porous Network.)
R. Buckminster Fuller