バックミンスター・フラーが1949年から開発したジオデシックス理論は、
圧縮力を基本とした構造エンジニアリングを放棄し、
張力を圧縮力と統合するエンジニアリングに挑戦した結果生まれている。
それこそがテンセグリティの懐胎期間に重なるのであるが
その経緯はあまり知られていない。
バックミンスター・フラー以外に誰も個人住居に対して
テンセグリティ原理を応用する可能性に
挑戦して来なかった歴史に関係するだろう。
単位体積あたりの重量をより軽量にするための
ジオデシックス数学を創始すると同時に、
絶えざる構造実験によって、
1954年には構造の強度と剛性を飛躍的に向上させる
テンセグリティ理論を最初のジオデシック構造の特許に応用している。
テンセグリティは比類ないオブジェの
輝きでこの半世紀が過ぎている。
基礎部を必要としない純粋に自律するテンセグリティ構造は
まだどこにも存在しない。
シナジェティクス研究所 梶川泰司