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柔軟な強度へ

テンセグリティ構造とは、思考の構造さえも否定する
前例のない構造の純粋な物質化なのである。
同時に、柔軟な強度と剛性を備えた構造の一般化でもある。

純度のもっとも高い (99.9999 %) 鉄は
表面が銀色に輝き、異種金属に接触しても
電気的に腐食しなくなるだけではなく
柔らかいが割れにくく容易に切断できなくなるように
圧縮材が不連続な純粋なテンセグリティ構造では
一部の張力材が破断しても共鳴作用に補償作用が形成されると考えられる。
実際、外力分散機能はほとんど劣化しない。

これまでの圧縮材のみから構成された構造や張力材が非連続な構造は
すべて特殊で部分的だったのである。
むしろ、それらを不完全な構造とさえ呼ぶべきではないだろう。

フラーレンはダイヤモンドの表面を損傷させるほどの<柔軟な強度>を備えていた。

自然が<固体的な強度>よりもより強度のある<柔軟な強度>を選択する場合
すべてテンセグリティ構造なのである。

備考
<柔軟な強度>については
『宇宙エコロジー』(バックミンスター・フラー+梶川泰司 著 美術出版社 2004)
の直径11mのフォーダブル・テンセグリティ構造(1995 by シナジェティクス研究所開発)を参照

生活器と武器

1967年当時の第3次中東戦争で使用されイスラエル群の戦車は
広大な砂漠地帯の高速移動の要請から剛性と強度のある純粋な鉄の使用とともに軽量化された。
1972年の第4次中東戦争ではエジプト軍の戦車はさらに軽量化され高速移動できる戦車で対抗した。

それでも、その戦車の1台あたりの重量は
1967年のモントリオール博のアメリカ館で使用された
バックミンスター・フラーのジオデシックドーム
(=最初のバイオスフィアとしてのエデンドーム)の全重量の2倍以上もあった。

<浮かぶ都市>のための前駆体のジオデシックドームの浮力計算をしていた事実は
現代の建築家にもほとんど知られていない。

直径85メートルのモントリオールドームは大気圏内に<宇宙線地球号>として係留されていたのである。

兵器を生活器にする変換テクノロジーは、冷戦開始と共にもっとも進化した。

その後、それ以上に進化したのは権力テクノロジーである。
そしてもっとも後退したのは自己のテクノロジーである。

われわれの創造的能力は、未だに文系と理系に分断されたままである。
この分断こそ、冷戦時代をくぐり抜けた19世紀的な教育論の生き残りである。

備考;
武器(weaponry)に対して生活器(livingry)と対比的に翻訳したのは
『クリティカル・パス』(バックミンスター・フラー著 梶川泰司訳 白揚社 1998)が最初である。