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Tensegrity & Integrity

テンセグリティ(tensegrity)の恐るべき誠実さ(=integrity)とは
構造的、数学的、経済的に、どんなに優れた構造とパターンを築こうとも
製作者の内なる意識が統合的に宇宙的に秩序だっていないかぎり
その無秩序さが外部の圧縮力との張力調和を
無残にも圧倒してしまうことにある。

シナジェティクスにおけるエンジニアリングとは
誠実さの内部化なのである。
あるいは、
内部に起源を生む(=engine)行為そのものである。

My initial harvest of mathematical structures produced by this new conceptual tool was a family of four Tensegrity masts characterized by vertical side-faces of three, four, five and six each, respectively. The three and four sided masts consisted of discontinuous compression islands of tetrahedronal strut groups mounted only in tension one above the other, while the five and six sided masts consisted of local islands of icosahedronal and octahedronal strut groups mounted vertically above one another, again only by tensional connectors. 
by R. Buckminster Fuller 1961

シナジェティクスと数学

モデル言語を排除したモデリングは堕落した工作であるが
形態的再現を目的としたテンセグリティモデルが
圧縮力と張力の構造的言語に変換できるとは限らない。

例えば、
ゴム紐やステンレスワイヤーなどをテンション材にした疑似張力モデルは
2点間距離を縮めるとテンセグリティ球の直径が増大する
テンセグリティ独自の相互作用を再現できない。

モデル言語の発見は
概念の物質化として現れるだけではなく
真のモデリングは<モデル化の可能性>を潜めている。

なぜなら、シナジェティクスモデルは
製作者と観察者の意図を超えて
新たな概念をすでにそのモデルが
物質化している可能性があるからである。

シナジェティクスのモデル言語には数学が含まれる。
その数学こそ、動的な相互作用を形成する<構造とパターン>を扱う。

725.02 Transformation of Six-Strut Tensegrity Structures: RBF

テンセグリティのモデル言語

圧縮材が互いに不連続になっている
テンセグリティ球の2頂点間距離を収縮させると
テンセグリティ球の半径は増大する。

この斥力作用を説明するモデル言語を
静的な幾何学に求めてはいけない。
まして、数千年間も支配しづけてきた
固体的な構造力学に期待してはいけない。

圧縮材がつねに
張力材をより押し拡げるのではなく
張力材をより引き寄せる機能は
テンセグリティ構造以外では形成できない。

もし、制作したテンセグリティモデルで
その機能が確認できなければ
テンセグリティのデザインが不完全であるばかりか
モデル言語が製作者に形成できていないのである。

                  梶川泰司

“Synergetics” fig.712 RBF

シナジェティクスとリアリティ

シナジェティクスは
始めを持たず、それゆえ終わりがない。

いかなる種類の安定も持たない自由に目覚めるとき
自己中心的な、限定された幻想的な中心が終焉する。

そして、論理的思考によって捉えられない
別の次元から新たな存在の絶えざる開示がはじまる。
それ以上のリアリティを求めてはいけない。

梶川泰司

シナジェティクスの反・転写モデル

RNAを遺伝子としているレトロウイルスは
DNAからRNAの転写を経てタンパク質へ翻訳された後に
自己複製するだけではなく
その自己複製の前に宿主細胞内でRNAをDNAに変換して
<標準>の逆反応を行う。

このRNAをDNAに変換する反・転写方法のように
シナジェティクスによる反・転写モデルの発見、
つまり、概念の解読または原理の発見、そしてその翻訳が
形態と機能の複製よりも優先されるのは
シナジェティクス独自の操作主義における反対称性を起源とする。

参照 
「正12面体における反対称性」
(『コスモグラフィー』補遺 梶川泰司 白揚社)

シナジェティクスの操作主義(operationalism)

シナジェティクスは
『圧縮力』と『張力』という概念が、実際に異なる概念にいかにして分離されるかを
どのような方法で分離するかという物理的操作を通して定義した最初の科学である。

実際、それらを反対称的な概念として
テンセグリティとして物質化したのである。

つまり、構造における重力に起因しない等価原理が発見されたのである。

真の構造には、大黒柱のような自重と重力に対して
より重要な部分は存在しないが、
テンセグリティのサイズは潮汐力を受けない程度に
小さいことが必要である。

テンセグリティの定義「不連続な圧縮材が連続した張力材によって統合される作用」こそは
その物理的・概念的操作によって生まれた
もっとも純粋な操作主義的定義である。

メタフィジックス革命

内部から生まれる相互作用は、統合をもたらすが
外部から与えられるエネルギーは、共鳴をもたらす。

テンセグリティ以上に<動的均衡>を
視覚化した物質の形態は存在しない。

その物質の形態は生物学的観察から生まれなかった。
<動的均衡>は生命有機体には限らないが
テンセグリティ原理の発見以後の
分子生物学によって生まれた概念である。

1948年のテンセグリティ原理の発見から
シナジェティクスでは、<動的均衡>は<シナジー>の概念に含まれていた。

それはシナジェティクスによる
決定的なメタフィジックス革命であった。

SYNERGETICS Fig. 505.41 Involution and Evolution.by RBF

シナジェティクスとデザインサイエンス

彼らは森の近くの同じ家で生まれた。
一方は裏口から、もう一方は表口から出かけた。

バックミンスター・フラーではなく
モルモットBによって、
地図のなかった森への最初の入口が発見されて
まだ1世紀を経過していない。

モルモットBはテクノロジーである。
シナジェティクスとデザインサイエンスを包括する
<自己のテクノロジー>である。
            
シナジェティクスからデザインサイエンスではなく
シナジェティクスとデザインサイエンスは
相補的で、そして非鏡像的である。
                  
                     梶川泰司

非対称性の科学

テンセグリティは
航空機に次いで台風やハリケーン、地震などで
発生する種々な外力による振動に対して、
免震や耐震そして制振のための付加装置が
いっさい存在しないモバイルシェルターになり得る。

この驚異的な機能的エフェメラリゼーションには次の共通点がある。


揚力を発生させるのは、翼の形態や制御方法ではなはない。


物体の上下で圧力差=動的揚力が生じる時、
物体の上下の流れが非対称になる原理と
物体と流体に相対速度があるときに発生する動的揚力の発見は
飛行機の発明の後に発見されている。


非連続なテンセグリティ構造体を形成するのは
ジオデシック球面分割で配列された対称的な構造とパターンにあるのではない。


テンセグリティの原理は
ユニバーサルジョイントや
自転車のホイール・テンセグリティの発明の後に発見されている。
それらはすべて対称性が関与している。

そして、最適な細長比のある非連続な非対称的に配置された圧縮材を
連続した非対称的な張力材の閉じたネットワークで統合されるという原理は
対称的なテンセグリティの開発の後に発見されている。

テンセグリティの歴史においては
非対称性や無対称性は、対称性と対比する概念ではなく
非対称性や反対称性は、対称性を包含しているのである。

構造とパターンに潜む秩序の探査に美的な対称性を求めすぎてはいけない。
美的とは視覚的な存在形態に限定されている。

「反対称性について」犬のしっぽブログ 2013年4月10日 参照)
http://www.two-pictures.net/mtstatic/2013/04/post-2755.html

<動く生産ライン>———デザインサイエンス序説1

船舶を生産するデザイナーは、各国のドッグで移動しながら生産する最初の生産ラインを発明した。
現代の自動車の生産ラインは、地上に固定されているように見える。
しかし、陸路の流通経路を各部品が流れることによって、
船舶の動く生産ラインのように相対的に<動く生産ライン>を形成してきた。
そして現代のオンデマンドにみられるように、
すべてが移動しながらアセンブルできる陸路、海路、空路による生産ラインに転換されつつある。
流通経路を支配する組織は、衛星ネット上で個々の注文を受けながら、
トラックという動く分散型倉庫から直接販売店に配送するまでの輸送システムを持っている。
これらは、動く生産ラインの変形システムである。
生産も消費も、動く閉じた柔軟な関係、つまり流体地理学的な世界観を急速に形成している。
そして教育と労働だけが、毎日同じ場所への通学と通勤を余儀なくさせられている。
これは21世紀に継続された反流動的で固体的な世界観である。  
<犬のしっぽブログ 梶川泰司 2007年1月29日 から全文引用 >

その後6年間が経過している。

テンセグリティシェルターは
その本質的なより少ないより軽量な構造部材によって
家庭やスタジオから24時間繋がる
動く生産ライン(バックミンスター・フラーの時代にはまだ未発達であった)によって、
その開発力と生産力は
より少ないエネルギーでより加速されている。