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2011年度 デザインサイエンス講座開講の準備 その3

社会経済の問題を解決するための
政治的な手段ではなく、
アーティファクトの発明と開発だけを手段として
デザインサイエンスの目的を続行するうえで
不可欠となる作業項目を日々遂行するには、
お金ではなく、<食料、エネルギー、シェルター>が必要だ。

食料とエネルギーとシェルターを
すべて同時に十分に与えられていない
個々人にとって
他人からの贈与や補助金、
そして貯蓄など当てにしないで
アーティファクトを唯一の手段として
問題を解決する責務に耐えるだけの
時間と経費を計算できる包括的能力は
最初の重要なノウハウである。

このノウハウを実践的な行動によって習得するのが
デザインサイエンス講座である。

ノウハウという実際的知識の習得プロセスにおいて
お金ではなく、<食料、エネルギー、シェルター>が必要だという
経験に基づいた認識は、
自己のテクノロジー(=自己規律)に属する。

2011年度 デザインサイエンス講座開講の準備 その2

太陽エネルギーという日々の収入源から構成された
多様な派生物と副産物でデザインされた人工物は
これまで以上の生活水準を維持できる。

この生活水準を達成・維持し得る方法こそが、
パイプと送電線そして料金メータを介した
少数の人間による狡猾で長期的な搾取から
人間を解放するノウハウであることは明らだ。

この解放のための知識と技術、
そして資本が統合されていないだけである。

エフェメラリゼーション革命                         ーーー『クリティカル・パス―宇宙船地球号のデザインサイエンス革命 』について

〈不可視〉のテクノロジーによって、
機能の一定の増加を達成するために
投入される素材の単位重量あたりの体積、
単位エネルギーあたり、
そして単位時間あたりの労働時間
と生産システムの維持管理時間あたりで
遂行される仕事は、
原理の発見と発明によって
絶えずそれらの量と質を高めていく。

この複雑な過程を、バックミンスター・フラーは
物質の短命化(エフェメラリゼーション)と呼ぶ。

全体的に増加した技術的ノウハウの総和と
その包括的な統合作用によって、
1970年代にすでに人類は、
目には見えない境界を超え、
全人類のための普遍的な成功が
技術的にも経済的にも実現可能な
革命的な段階に到達していたことを
『クリティカル・パス―宇宙船地球号のデザインサイエンス革命 』
(R.バックミンスター フラー 著, 梶川 泰司 訳 白揚社 2007)
で指摘している。

地球人による化石燃料と原子力のこれ以上の使用が
すべて段階的に廃止可能なことも実証している本書では、
<脱>原発や<反>原発以上に
テクノロジー自体が本質的なエフェメラリゼーションの過程を
指向していることに気づかせてくれる。

テクノロジーとは、
doing more with lessの無限性を内包している
自然の姿である。

孤立しながらも
真のテクノロジーを発見する個人こそは
つねに宇宙的段階を指向できる。

2011年5月4日
シナジェティクス研究所
梶川泰司

テクノロジーの起源

どんな生命にも容認される方法で
基本的な環境の変化に適切に意識的に関与できる
テクノロジーを人間はつねに発見してきた。
「宇宙はテクノロジーである。」RBF

この神秘に驚嘆することから科学は始まるだろう。

しかし、それを容認できない超専門家たちを
生み出しているシステム
つまり、テクノロジーこそは
人間が創り出した頭脳の産物だと考えている集団が
イデオロギーに無関係に存在することは
じつに驚異である。

グランチは
頭脳明晰な若者から
神秘からの真の動機付けを破壊する
心理学の超専門家を抱えている。

2011年度 デザインサイエンス講座開講の準備 その1

太陽光から直接得られた電力のみによるパリからイギリスへの飛行には、
ドーバー海峡横断飛行に使用された
人間の筋力を動力とした翼長29mの人力飛行機
(炭素繊維アロイの構造とマイラー製の皮膜の総重量は32キログラム)が
最初にデザインされなければならなかった。

自然エネルギーの使用には、
doing more with lessによる
機能に対する重量の劇的な軽量化が絶えず要求される。

デザインサイエンス講座(☆註)では、
この40年前の科学的方法を
テンセグリティ・シェルターに適応させるための
複数のシナジェティクス原理の包括的理解から始まる。

☆註
原則としてデザインサイエンス講座は、
シナジェティクス入門講座を履修した講座生、
および
シナジェティクス・ワークショップの参加経験者を対象にした実践的講座。

デザインサイエンスは緊急時を待たない

われわれが包括的(comprehensive)に思考することは稀である。
21 世紀の惑星地球人は予測できなかった局所的な残酷さに
脅えはじめている。
恐怖心から問題を理解できても解決策は見つからないだろう。
問題を専門家が独占しているかぎり。

デザインサイエンスは緊急時を待たない。
デザインサイエンスは、緊急時のためのテクノロジーに備えるのはなく
目的論的テクノロジーに自発的に対処する。

自発性こそは、
緊急時の道具に包括的なデザインが反映される唯一の方法である。

包括的とはつねに全方向的である。  梶川泰司

デザインサイエンス(Design Science )の機能

“The function of what I call design science is to solve problems
by introducing into the environment new artifacts,
the availability of which will induce their spontaneous employment
by humans and thus, coincidentally,
cause humans to abandon their previous problem-producing behaviors and devices.

For example, when humans have a vital need to cross the roaring rapids of a river,
as a design scientist I would design them a bridge, causing them,
I am sure, to abandon spontaneously
and forever the risking of their lives by trying to swim to the other shore.”

R. Buckminster Fuller, from Cosmography

『コズモグラフィー』(バックミンスター・フラー著、梶川泰司訳 白揚社 2007)

最新のテンセグリティ・シェルター(生活器)

現在の世界中の工学理論において
連続的な圧縮力と二次的な張力から成る構造を置換するために
バックミンスター・フラーによって、
この惑星〈地球〉に導入された
最初の連続的な張力と不連続な圧縮力による宇宙の構造原理
がプロトタイプとしてデザインされたのは1929年である。

政治権力が使う兵器(weaponry)と対比させ、
生活器(livingry)として認識されてすでに80年が経過する。

テクノロジーによる環境の改良に関する代替プログラムを現実に展開する際に
何が効果的にできるのかを確かめるための、
互いに遠隔に住む個人の包括的理解を最優先したシナジェティクス入門講座を
開始して来年度は5年目を迎える。

同時に、
シナジェティクス入門講座を経たデザインサイエンス入門講座では
バックミンスター・フラー以後の最新の生活器の概念を
具体的なプロトタイプとして公開する時期でもある。


Tensegrity Tetrahedron with “Me” by R.B.F

危険な構造 その2

構造が未定義であった歴史を
容認できない彼らは、
構造をしばしば科学的にデザインしたがるが
決して自然が採用する構造は発見してこなかった。
この建築の歴史は彼らに、
大地震に対して自然災害という概念を
つねに適用させてきた歴史でもある。

マグニチュード7の激震でも破壊されない
自動車や飛行機、船舶をデザインするテクノロジーは
量産技術から生まれている。
移動するための動的なテクノロジーは重力と対立しない。
浮力や揚力は、重力の応用から生まれている。
空気中を運動する物体への影響を扱う
空気力学や航空力学などの動的なテクノロジーは、
移動中や飛行中に構造体が受ける振動による破損を
決して<自然災害>と呼ばない。

静止的なテクノロジーは、
<自然災害>という固定概念によって、
プレートが対流するマントルに乗って互いに動いているという
地球自体の動くテクノロジーとの統合を拒んでいる。

危険な構造 その1

一番危険な構造とは
大地震で瓦解する構造のことではない。
その構造が理解され採用されたら、
それによって建築業界全体が崩壊するような
構造システムのことである。

このシステムこそ、
30年ローンでより高価な
固体的構造を買わされてきたユーザーにとって
その非固体的で柔軟な強度がゆえに
未だ不可解なものであったとしても、
決してこの超軽量構造は
人間がデザインした構造ではなかった。

隕石から発見されたことで
フラーレンやナノチューブが
高温にも衝撃にも耐えることが<証明された>が、
この宇宙ではありふれた
この炭素の純粋なテンセグリティ構造に
21世紀の建築家たちは無関心を装ってきた。

炭素の純粋なテンセグリティ構造とは
圧縮材も張力材も炭素から構成可能であり、
生命有機体においてはタンパク質からも構成可能である。