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テンセグリティ・ロゴス

ロゴスとは、ロジスティクスの論理性にある。
万物を支配する理性は
技術的には、コミュニケーション・デザインに投影できる。
ロゴスとは、思考することであり、話すことである。

思考のロジスティクスとは、
いくつの単語がそこで使われたか。
そして、他のいくつの単語でそれが置き換えられるかだ。

テンセグリティは、
高度なコミュニケーション・デザインを実現している。

テンセグリティのロジスティクスとは、
いくつの張力という統合材がそこで使われたか。
そして、それによって他のいくつの圧縮部材が排除されたかだ。
ただし、構造の強度や機能を劣化させないで。

この現実化を思考のロジスティクスで言い換えれば、
「構造の安定化とは、不動を意味しない。
万物は安定するために互いに非接触のまま振動する。あるいは回転する。」YK

実際、高速度カメラでテンセグリティの外力分散機能を観察すれば、
局所的な振動は瞬時に球面を周回(回転)しているのがわかる。
津波が、閉じた球面上をジェット機の速度で伝播するように。

概念の牢獄

燃料電池は、電気化学反応によって電気を取り出す純粋な電池システムである。
つまり、使用する電解質は燃焼とは無関係であるが、
燃料という炎を伴う酸化作用の概念は、
なぜかシステムの名前に生き残っている。

同様に、核燃料もウランやトリウムの燃焼ではない。
原子核分裂の過程においてエネルギーを放出する物質に酸化作用は存在しない。

こうした間違った概念は、
建造物を固体的に設計し、重力を大地に流す危険な習慣に似ているだろう。
(非固体的なテンセグリティシステムには基礎部が存在しない)

構造物を石から作る歴史は、数万年も続いてきたが
炎を生活のエネルギーとして使う歴史はさらに古い。

(それゆえに、政治的な炭素排出権では、これらの概念を是正できないだろう。)

再考 人力居住機械とデザインサイエンス

炭素繊維を使った複合材の構造とマイラーの皮膜から構成された史上初の
翼長29メートルの人力飛行機は、20キログラムの重量しかなかった。
それは1979年の記録だ。

地球温暖化に適応したシェルターを、金属でデザインしようが、
再生的なプラスティックでデザインしようが、
分解・移動できない固体的住居は時代遅れである。

半永久的に個人が居住できるモバイル用シェルターが、
人間の平均体重よりも軽くできる構造は、
原理的にテンセグリティ・ジオデシック構造しか存在しない。

人力飛行機の設計のように、
この人力居住機械はハンドメイドで十分だ。
なぜなら、必要な道具と素材はすべて生産されているからだ。

21世紀の経済恐慌は、生産性の低下からではない。
(過剰な生産性を兌換紙幣が奪っているシステムに科学者や技術者は無頓着すぎるだろう)
必要なモノをデザインするためにクライアントは必要ではない時代にいる。
デザインサイエンスは再開された。

宇宙の要求に従った、
元素の平均的分布化こそ環境デザインだ。

参照
+81 シナジェティクス研究所インタビュー
http://www.plus81.com/plus/tnf/talk2_1.html

シナジーは相乗効果ではない。

水素と酸素の個別の化学的特性から、
水の存在を予測できる情報は一切存在しない。

そして、圧縮材と張力材だけの特性をみて、
誰もテンセグリティの力学的特性を想像できないならば、
シナジーは、相乗効果や共同作用ではない。

相乗効果や共同作用は、人間が実現可能な行為である。
(例えば、ビジネスなどで)

しかし、人間が模倣できるほど、
自然は、擬人化できない。

人工物とデザインサイエンス

資本主義社会の全労働人口の90%以上は、
生命維持に必要とされる富を生産しない仕事に従事している。
潜在的失業者は、100%に近づいている。

デザインサイエンスとは、
既知となった一般化された原理や技術的な発明を応用するばかりではなく、
新たにもちあがってくるだろうと予測できる問題を解決するための
最適な人工物を発明(デザイン)することである。

予測的発明は、計画的偶然(プリセッション)から生まれる。

デフレと大不況が、サイコロで決まるわけではないならば、
潜在的失業者はこの人工物を支持するだろう。

水や電気は、バイオスフィアならどこでも生成できる。
最優先の人工物は、移動可能なレンタル住居(シェルター)である。

家を所有するために金利を30年間も銀行に払うのは、時代遅れである。

デザインサイエンスにとって、「既製品を使う」とは何か。

ーーーーシナジーの階層構造化ーーーーー

あらゆるカタログで販売されている部品が、
それらが作られた最初の目的から逸脱して、
新たな機能へと再統合される確率は、加速度的に増加している。

シュルリアリズムは、
「手術台におけるミシンとコウモリ傘との出会い」を美学理論としたが、
デザインサイエンスでは、既製品をこれまでに存在しなかった関係の発見
(技術者はしばしば用途開発という概念で説明する)によって、
諸関係の階層構造を可能な限り統合する目的論(テレオロジー)へと変容する。

新たなリアリティの生成過程に登場する「手術台とミシンとコウモリ傘」が
すべて既製品であるように、量産可能な工業製品のプロトタイプにこそ、
可能な限り既製品から構成する可能性は、
バックミンスター・フラーが1933年にダイマクシオン・カー(註)を
デザインしたとき、空力学的なボディー以外のすべての部品が
既製品として調達可能だった経験から始まった。

それから76年が経過した現在、
既製品の種類と機能は比較にならないほど増大し、
ついに自動車は家電やPCと同じ部品、
そしてソフトウェアをより共通化するようになったのである。
(住宅が高価であるかぎり、住居の共通部品化は、
もっとも遅延させられていることになるだろう。)

少なくとも、シナジェティクス研究所が
2008年に公開したテンセグリティ・シェルターのプロトタイプは、
化学的抽象物(ケミカル・アブストラクト)のシナジー、
つまりシナジーの階層構造が物質化したものである。

わずか5種類の既製品から構成されているデザインは、
超軽量化と開発コストの問題を解決する方法論を確立した結果である。

しかし、この目的論には美学理論のパラメータ化では、
とうてい到達できない計画的偶然性(プリセッション)が介在する。
あらゆるプリセッションは、論理的に生成できないが、
生成され結果は論理的に単純化されている。


1927年に発明したダイマクションカーは
ロケット・ジェットタイプの支柱構造をもち、
全方向性に対する操舵性もよく、2基のガソリンエンジンによって駆動し,
高い操縦性も兼ね備えた翼のない輸送手段の開発
(翼があるバージョンも同時にデザインされている)

テンセグリティの作り方ーーー穴だらけのニューマチック

私がシナジェティクスを学び始めた頃、
丸善の洋書で見つけたテンセグリティ・モデルの写真から直ちにその再現を試みた。
自宅のあらゆる場所に、そのコピーを貼り付けてみたが製作方法は、
すぐには見つからなかった。

それから、様々なテンセグリティのタイプと大きさ
(最大直径は1995年の直径11mの展開型テンセグリティ・シェルター)を制作してきたが、
一度もテンション材に、エラスティックなゴム材などは使用したことがない。

2点間距離を可能な限り維持できるようにデザインすることが、
テンセグリティの力学的特性をより本質的に再現できるからだ。
力学的特性とは、柔軟な強度である。
すべての固体でさえ原子間は振動している。
原子間には見えない引力がある。
引力は断面積ゼロの張力である。
これを弾性体に置換すると、柔軟な強度は失われる。
柔軟な強度は、シナジー作用である。
構成部材の物質の特性からは推測できないのである。

テンセグリティの作り方のレシピをネットからコピペしてくる場合、
シナジー作用を捉えきれない構造原理の欠陥も複製される可能性がある。

新しい情報を共有することは、
自らの動機に遭遇することよりも簡単な時代に移行した以上、
インターネットが(もちろん、YouTubeも)ない状況で試行錯誤することは、
言い換えると、何でも自分で考えるしかない状況を意図的に作り出すことは、
本質的なテンセグリティを再現することにも関係する。
テンセグリティ・モデリングは、
関係の統合性を物質的に置換する包括的な行為である。

まだ高価なポケット計算機によって、
球面三角関数が10桁まで扱えることに驚喜した時代よりも、
さらに25年もさかのぼった1949年にバックミンスター・フラーは、
テンセグリティの圧縮材の純粋な不連続性を物理的に証明した。

短命なデザインの対極に到達したテンセグリティ・モデルは、
落下しても、その落下距離の少なくとも半分程度はバウンドするはずである。
ハイテク素材で適切にデザインされた超軽量の人力飛行機が、
条件が整えば数十キロメートル以上は飛行できるように。

テンション材がゴム材から構成されないかぎり、
ボールの球面を覆う皮膜素材の総重量よりも、
テンセグリティの構造材の総重量の方が、相対的に軽量に、かつ内部をより高圧にできる。
だから、テンセグリティはボール以上にボールのように弾む。
テンセグリティは、穴だらけのバーストしない
最初の空気皮膜構造体(ニューマチック)である。

したがって、テンセグリティが繊細で壊れやすく見え、実際に壊れる場合は、
テンセグリティ・モデルの構造原理の理解とその製作方法によるだろう。
(一カ所でもゴムバンドが切断されると、全体が一気に崩壊するインターネット上の
疑似テンセグリティモデルは、人力飛行機で言えば機体の構造上の設計ミスから
無惨にも墜落する機体に似ている。)

そして、もしテンセグリティが軽量ゆえに構造的に脆弱ならば、
われわれの60兆個の細胞にインストールされなかっただろう。

デザインサイエンスとは何か

バックミンスター・フラーのデザインサイエンスは、
最近、細分化されたさまさまな領域のデサインを
統合する科学的デザインだと思われている。

そこには、デザインは人間のみが造り出すだすもので、
そのデザインは科学的な方法論でもっとも効果的に試行できるという前提がある。

しかし、科学的な方法論以上に曖昧な前提はない。

たとえば、ナノチューブ・ラジオという最小のラジオをデザインする過程で、
ラジオのすべての部品を統合してより小型化しようとしたのではなく、
ナノチューブには、ラジオが必要とする機能が
まったく別の形式ですでにデザインされていたのである。

ナノチューブ・ラジオの原理を発見する以上のデザイン行為は存在しない。
人間はデザインを人工物で洗練できるかもしれないが、
自然以上に統合することは不可能である。

これは特殊なシナリオではない。
科学全体がプリセッションの歴史だ。
曖昧な概念が、人間を散漫で不確かなものにする。

バックミンスター・フラーの<予測的>デザインサイエンスは、
プリセッションを受け入れた最初のメタフィジクスの方法論である。

参照 「ナノチューブ一本でラジオ!」
http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0906/200906_044.html

ロイヤルティ

個人発明家や企業内発明家は無数に存在するが、
名前のない雑草はないように、
すべての最初のアイデアは個人に属する。

一方、名前があろうとなかろうと、
原理は自然に属する。

しかし、
このことは、原理の発見者に
工業所有権が適用されない特許制度とは無関係である。

特許制度は、武器製造技術の奨励のために
専門分化を加速する制度として登場したからである。

絶対君主制の下で王が報償や恩恵として発明家に与えた名残は、
知的財産権という概念、つまりロイヤルティ(royalty=王権)にある。

参照
http://two-pictures.net/mtstatic/
発明