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目的論的受容ーー5月のデフォルト

経済とは、太陽のエネルギーのすべての変換過程である。
変換された太陽系エネルギー資本の一つが、石油であった。

石油がどのように生成されたかは、科学的に分かっていない。
微生物の光合成が関与しているかもしれないが、
まだ人類は、石油を自然ほど経済的に生産できない。
だから石油は有限のままである。

資本それ自体よりも動的な変換過程を、
目的論的に制御できる富のメタフィジクスに到達した
シナジーは、
植物と動物のユーザたちが、欲しいだけ利用しても
自動制御できるサイバネティクスに46億年かけた。

だれにも所有できないが、
すべての場所で受容できるように
光と風に5月の香りを与えた。

これ以上の無償の贈与があるだろうか。

斥力と引力

原子間の2点間距離を維持するために、
自然は、引力と斥力を利用する。
(しかし、斥力としての重力はまだ確認されていない)

テンセグリティは、自然が利用するこの原理を再現している。
2点間距離を接近させると他の2点間距離は、
互いに遠ざかり、球の半径は増大する。
互いを遠ざけようとする力は斥力である。

テンセグリティが原子モデルならば、
テンセグリティ・モデルの張力材に、ゴムひもは不適切である。
ボールのようにバウンドできないからではなく、
シナジー的に斥力の機能を形成できないからである。

テンセグリティは、互いに非接触な原子核にように
自律的に振動することによって、
致命的な変形を免れているのである。

システムの振動によって、
強度と剛性はより向上するのである。

そして、
構造の安定性を大地の静止状態に求める
建築の構造とは、決定的に異なっている。

テンセグリティ原理とニューマチック構造

ジオデシック・テンセグリティ構造は、
ある瞬間に偶然に内側から皮膜に向かって衝突し、
皮膜を外側に押す特定の気体分子の振る舞いを、
大円(ジオデシック・ライン)上に位置する不連続な圧縮材に置換した
無柱で中空の皮膜構造体である。
この場合、冗長で過剰な分子群は構造から完全に除去されている。

言い換えれば、リダンダンシーの完全な排除と陳腐化に成功した
最初の構造システムになる。

ジオデシック・テンセグリティ構造を
構成する不連続な圧縮材に対応するパターンにそって、
風船の被膜内面に圧縮材の両端部と結合するポケットを取り付けて、
その硬く曲がりにくい圧縮材の両端をそのポケットに挿入すると、
あたかも気体を充填して内圧をかけたような球形構造を維持できる。

そして、その形状を維持したままその皮膜表面に無数の穴を開けても、
驚くことにこの状態を維持できる。

皮膜に最大の穴の面積をデザインすると、
ジオデシック・テンセグリティ構造の最短の張力材の総計からなる
ジオデシック・ネットワークの編み目になるのである。
(このときに、テンション材の総重量も最軽量にできる。)

これこそが、ジオデシック・テンセグリティ構造が、
最軽量のニューマチック構造にデザインできる原理である。

テンセグリティ・シェルター 「Doing More with Less」

住居は森のようになるべきである。
分解も移動もすべて成長過程に包括している。
それに必要なエネルギーのすべてを、光合成でまかなっている。

もっとも知性的なシステムは、
エコロジーという概念が発見される前に
すでに達成されている。

アンチ・アブノックスからdoing more with lessへ

20世紀当初の産業社会は、
決して〈金儲け=アブノックス〉を目的にしてはいなかった。

現在の超国家企業こそが、
個人の誠実さから生まれる発明の巧みさを育て、
優れた製品だけを大量生産するための、
産業を指導する知恵を、
完全に捨て去ってしまったのである。

宇宙で絶え間なく生成するあらゆるエネルギー変換と
それらの相互変換の過程のみに注目し、
物質と時間・エネルギーの純粋なコストから形成される
物質化のための産業(=アンチ・アブノックス)は、
消滅したのである。

しかし、物質化のためのほとんどの素材と道具は、
既製品として生産され続けてきた。
アンチ・アブノックスを目指す産業を
個人的に形成できるまでに。

無数の既製品から特定のある機能(doing more with less)を
生成するための偶然の組合せの加速的な増大は、
必ずしも大量生産の手段を必要としない。
個人の誠実さから生まれる発明の巧みさを育てるためには。

これは、
バックミンスター・フラーが
生き延びた過酷な産業社会にはなかった可能性だ。

doing more with less vs 超専門分化

すべての超専門分化には、
長い教育期間と教育投資が必要だ。

こうして、堅実で安定した
高級な奴隷の仕事にも差別化が生まれる。

しかし、
原理の発見だけではなく、
複数の原理の相互調整をデザインし、
同時に、
包括的な思考をdoing more with less
で物質化する
デザインサイエンスに比べたら、
その教育期間と教育投資でさえ少なすぎる。

シナジェティクス・モデルによる対称性の破れ

『クリティカル・パス  宇宙船地球号のデザインサイエンス革命』新装版
(バックミンスター・フラー著、梶川泰司訳 白揚社、2007)には、
バックミンスター・フラーの短いが難解なシナジェティクスから引用した序文がある。

「従来のクリティカル・パスの概念は、直線的であり、
それ自体十分な情報を与えてくれない。
球状に拡大収縮し、軸回転し、極方向に伸開線的—縮閉線的な軌道システムからの
フィードバックだけが包括的にかつ鋭敏に情報を与えてくれる。
球状軌道的なクリティカル・フィードバック回路は、脈動して周期的な吸収放出を繰り返す。
クリティカル・パスの原理的要素は、
平面上で互いに重なり合う直線的な構成要素を単位としない。
それらは、汎-相関的に再生しつづけるフィードバック回路が、
システマティックに互いに螺旋を形成しあっている複合体なのである。」
(『シナジェティクス第二巻[改訂版]』から)

この球状軌道的なクリティカル・フィードバック回路に関する、
動力学的なシナジェティクス・モデルは存在する。
その実在するモデルから、フラーはつねにモデル言語によって記述していることがわかる。

そして、私はこのモデル言語を敷衍する他のシナジェティクス・モデル群を発見したことで、
偶然にもアメリカで『クリティカル・パス』が出版された直後から、
2年間にわたって新たなシナジェティクス原理の発見プロセスを
バックミンスター・フラーと共有することになったのである。

そしてこのフィードバック回路には予想外の原理が潜んでいた。

その研究論文は、『コズモグラフィー シナジェティクス原論』
(バックミンスター・フラー著、梶川泰司訳 白揚社、2007)
の補遺に記載されたシナジェティクス・モデルによる<対称性の破れ>の発見に
発展したのである。

物理学では到達できなかった対称性の破れのモデル言語は、
ついに視覚化されたのである。

ハッカーの探求方法

スネルソンは純粋な圧縮材の非連続性を
バックミンスター・フラーから
ハッキングできなかった。
彼はいまでも、テンセグリティ構造のアンチ・リダンダンシーを
信じていない。
テンセグリティは構造としては危険であるという前提で
彼の芸術は成立している。

テンセグリティの機能を
オカルト的(occult=隠されたもの)に扱っていたから、
ハッカーの重要な主観的なモデリングに挑戦できなかったのだ。

例えば、70年代にテンセグリティを
最初に紹介した日本の図学者も、
張力の統合作用を信じていなかったのであるが、
テンセグリティモデルの複製において、
テンション材を針金で代用していたのは、
エンジニアリングの妥協を超えた
ただの学問的な偽装にすぎない。

ハッカーとしてのデザインサイエンティスト

ある金属繊維や炭素繊維をより小さい断面積の繊維に細分化していくと、
より細くなった繊維の束の強度は、
むしろ飛躍的に増加する。
この張力性能は、細分化を始める初期の単位断面積で比較すると、
数百倍から数千倍にもなる。
これは、表面積に対する質量の比が増加したためでもある。

こうした先験的な自然の富に関する考察は、
ことごとく教育システムから巧妙に排除されてきた。
あらゆる張力性能は、
それを開発した企業の投資した結果として所有するために。

あらゆる軽量化のための構造デザインが、
構造システムの純粋な外側の分割数を受け入れるならば、
本質的にシステム内のミクロコズムを囲い込む張力性能は、
自然に引き出される。

ハッカーとしてのデザインサイエンティストの基本的な戦略は
絶えざる自然の原理の発見が支持するだろう。   YK