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移動用のテンセグリティ・シェルター

固体的な城砦都市国家よりも
移動可能な小さな船の兵站線の方が優位である。

移動する風や太陽光からエネルギーを変換できるからだ。
移動中に食料も栽培可能だ。

この方法は大気圏の内部と外部にも適用可能だ。

ただし、大気圏内の陸地を移動する場合は
シェルターで十分だ。
このシェルターの機能は、テンセグリティ原理以外では達成できない。

重量 30 kgのこのテンセグリティ・シェルターの
プロトタイプを明日から私の仕事場から
900 キロ移動させて組み立てる。

テンセグリティ構造システムの耐久性は30年以上あるが、
この新しいテンセグリティ原理と機能の証明は、実験あるのみである。
つまり、それで生存することだ。

プロトタイプとは鋳型であるが、
テンセグリティの鋳型は不可視の原理である。

公開は11月27日から12月 3日まで
スパイラルにて
DO MORE WITH LESS
[ザ・ノース・フェイス40周年]

◎この新しいテンセグリティ原理についての講義は、
12月 2日午後19時から
(チケットは完売となっているが、まだ立ち見席限定のチケット有り、問い合わせは下記に)

http://www.spiral.co.jp/
http://www.goldwin.co.jp/tnf/40th/

自然の隙間

テンセグリティは隙間だらけだ。

その存在は軽くはかなく見えるが、
これほど単純で強靱な美しい有機体はない。
それは人間のデザインではないからだ。
陽子と電子を隔てる距離に接近した最初のモデルだ。

テンセグリティに関するすべての機能は発見されたものだ。
構造の自然はまだ半世紀しか経過していない。

ザ・ノース・フェイスのDO MORE WITH LESS展で
テンセグリティに関する<新しい振動>の機能を
原寸大のプロトタイプで展示する予定である。

その理論に関する講演は
12月2日、午後7時から  定員30名
講義 梶川泰司(シナジェティクス研究所)
詳細は
http://www.goldwin.co.jp/tnf/40th/
場所 スパイラル
http://www.spiral.co.jp/

DO MORE WITH LESS 展によせて

ジオデシック・テンセグリティ構造の理論化とそのモデル
——————DO MORE WITH LESS 展 
2008年11月28日(金)から12月3日(水)

シナジェティクス研究所
梶川泰司(デザインサイエンティスト)

私は、最近もっとも軽量で柔軟な強度のあるテンセグリティシェルターの開発に成功した。
バックミンスター・フラー以後のデザインサイエンスの歴史の中では、
もっとも単純で実用的な初のテンセグリティ構造である。
実用的なテンセグリティとは、人類の住居(シェルター)である。

「分割数を数倍に増やすと、構造全体の寸法における長さの増加に対する相対重量が急速に減少する」。
このバックミンスター・フラーの発見した基本的な原理をテンセグリティ構造に
反映する試みは構造化の極みでもある。
発見されたばかりのコンセプトモデルを
TNFの40周年の記念すべき「Do More with Less」展のために、
こうしてプロトタイプとして発表できたことは、幸運だった。

分割数が大きければ大きいほど、張力材が構造物全体に占める割合が大きくなる。
張力材は、その断面の直径と長さの相対的な比において、長さが無制限である。
さらに炭素繊維の場合、漸進的に複数の繊維に細分化すると、
細くなった繊維の強度が増し、
初期状態で測定した単位断面積あたりの張力性能の数百倍以上にもなる。
構造の軽量化には張力はもっとも効果的に機能する。
この原理の有効性は各張力材だけではなく、
炭素繊維からなる最新のコンポジットを圧縮材にした
テンセグリティ構造にも当てはまるかもしれない可能性に気づいた時、
未だ非公開の段階であった私のプロトタイプのデザインに対して、
東レ株式会社が高価なカーボン材を惜しみなく提供してくれた。

このテンセグリティ・シェルターが世界初のネオ・ジオデシック・テンセグリティ構造の
プロトタイプである理由は、
連続した球状ネットワークの増大に伴い、
空間を囲い込む連続した構造材の相対的な厚さや重量が直径に逆比例して
急速に減少する構造のシナジーを視覚化できたことに尽きる。

「原子はテンセグリティであり、その構造システム全体には〈固体〉などもはや存在しない(RBF)」
にも関わらず、人間の活動の大部分を特徴づけるあらゆる冗長性(リダンダンシー)が、
いまや全人類に自滅をもたらす危機から人類が脱出するのを遅らせてきたが、
このテンセグリティ・シェルターは
リダンダンシーを完全に排除した物質の結合状態を露わにしている。
その機能は、これまでのすべての産業社会を支配する経済理論(収穫逓減の法則)に反しているだろう。

シェルターはこれまで戦地や極地以外では効果的ではなかったが、
宇宙が要求するもっとも単純で高度なシェルターの再生デザイン
(=このシェルターの構造システムは圧縮材も張力材も
宇宙でもっとも豊富な炭素から形成されている)こそは、
21世紀の最大の do more with lessである。

なぜなら家を買わなければならないのは、この惑星では人間だけだからだ。

複製可能なロジスティックス

シナジェティクス&ロジスティックス

分割数の増加に対する唯一の限界は、より多くの機能を物質的に具現化する際のロジスティックにある。
構造が大きければ大きいほど、分割数を増加した時の構成部材の局所的な生産性が単純化される。
経済性はこの単純化の結果である。

この理論を証明するジオデシック・テンセグリティ構造を
個人のために経済的にデザインすることはデザインサイエンスの主目的である。
言い換えれば、デザインサイエンスは、ロジスティックを所有した結果生まれた最初の科学的方法論である。

ジオデシック・テンセグリティ構造は、
21世紀の都市に散在するホームセンターで調達可能な素材と道具のみから複製可能になるだろう。

千年後の構造

テンセグリティ構造は、千年後でさえ究極の構造体である。
原子核構造がテンセグリティ構造を採用しているかぎり。

現代建築の構造がテンセグリティシステムを採用しないかぎり、
自然の構造でもない構造は構造でさえもあり得ないのである。

テンセグリティにおける再分割化の無限性

張力材は、断面の直径と長さの相対的な比において、長さが無制限である。
これはテンセグリティ以前の前提条件である。
テンセグリティ構造の分割数を数倍に増加させていくと、
構造全体の長さの増加に対する相対的な重量が急速に減少しはじめる。

テンセグリティの場合、分割数が大きければ大きいほど、
張力材が構造物全体に占める割合が大きくなる。

さらに、各張力材自体の分割数を増加させると、
つまり、各張力材は複数の繊維に分割された後の張力材を構成する繊維は、
単位重量・単位断面積あたりの強度が飛躍的に増加しているのである。

合金におけるシナジー作用と、テンセグリティにおけるこのシナジー的作用は、
前世紀では同じ原理として理解されなかった。
この証明は『コズモグラフィー』(バックミンスター・フラー著、梶川泰司訳 白揚社 2007)
によってはじめてなされた。

張力材と圧縮材から構成されるテンセグリティ構造は、
合金を構成する非視覚的な金属原子とは違って、
視覚的存在でありながら互いに非鏡像的な構成要素だったからである。

エフェメラリゼーション革命ーーーー張力は補強材ではない

自然は、マクロコズムでもミクロコズムでも、
圧縮力を分離した二次的な補助とし、
張力を主とするデザインを採用するが、
人間は圧縮材を主として使うデザインを利用し、
張力を二次的な補強にしか利用しない。

石器時代の最良の経験によると、
住居の壁が分厚く重たいほど、
居住者に快適で安全な空間をもたらす。
二十世紀に合金と炭素繊維が出現したことで、
高速で移動するビークルの安全性は重さから軽さへと
短時間に反転したが、
建築の構造だけは変わらなかった。

つまり、もっとも経済的で安全な家に住んでいる人はいない。

戦争器械としてのテンセグリティ

第3回の実験的なテンセグリティ・ワークショップを終えた。

私のデザインサイエンティストとしての役割は、
「この惑星〈地球〉での真の建築とは、ミクロ構造からマクロ構造を形成すること、
あるいは見えない構造から見える構造を構築するデザイン・プロセス」(RBF)を
レイマンたちが自発的に理解し、自らの手で作り上げることだ。

原理を理解すると、もっとも効果的な構造が再生される。
シェルターのアセンブルデザインは、包括的な理解の集大成となる。

エネルギーと食料危機に対抗して、
エコロジー的に住むためのシェルターは
戦争器械により接近する。