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エフェメラリゼーション革命ーーーー張力は補強材ではない

自然は、マクロコズムでもミクロコズムでも、
圧縮力を分離した二次的な補助とし、
張力を主とするデザインを採用するが、
人間は圧縮材を主として使うデザインを利用し、
張力を二次的な補強にしか利用しない。

石器時代の最良の経験によると、
住居の壁が分厚く重たいほど、
居住者に快適で安全な空間をもたらす。
二十世紀に合金と炭素繊維が出現したことで、
高速で移動するビークルの安全性は重さから軽さへと
短時間に反転したが、
建築の構造だけは変わらなかった。

つまり、もっとも経済的で安全な家に住んでいる人はいない。

戦争器械としてのテンセグリティ

第3回の実験的なテンセグリティ・ワークショップを終えた。

私のデザインサイエンティストとしての役割は、
「この惑星〈地球〉での真の建築とは、ミクロ構造からマクロ構造を形成すること、
あるいは見えない構造から見える構造を構築するデザイン・プロセス」(RBF)を
レイマンたちが自発的に理解し、自らの手で作り上げることだ。

原理を理解すると、もっとも効果的な構造が再生される。
シェルターのアセンブルデザインは、包括的な理解の集大成となる。

エネルギーと食料危機に対抗して、
エコロジー的に住むためのシェルターは
戦争器械により接近する。

テンセグリティモデルの作り方

テンセグリティは柔軟な強度を備えている。
だからといって張力材がエラスティックにはデザインできない。

テンセグリティがボールのように弾むのは張力材の弾性力からではない。
圧縮材との相互作用はエラスティックな張力材によって著しく損なわれる。
テンセグリティモデルは原理的に作らなければならない。

張力材にゴムなどの代用品を使用したテンセグリティは非原理的だ。
張力材には可能な限り伸度がない物質を使用すべきである。
特にステンレスワイヤーなどは前世紀の遺物だ。

備考
Tensegritoy(USA)などはテンセグリティの概念を教育する教材のなかでは
もっとも有害な商品だ。

相補性モデル

テンセグリティという構造の形態から、
閉じた有限のシステムを包括する連続的な張力機能であり、
不連続な圧縮材の局所的な圧縮機能ではないという構造原理を学ぶことができる。
張力と圧縮力という非鏡像的な関係が相補的に存在する。

部分から全体は予測できないが、
全体が最初に与えられた場合、どの部分の機能も予測できない。

しかし、この相補性を物質に置換したテンセグリティは
稀有な原子核モデルである。

デザインサイエンスにとって緊急時とは何か

デザインサイエンスにとって緊急時とは何か
市場のデザインには市場の意見が反映される。
一度の災害で何万人が命を落としても、市場はいつもと変わらない。
(軍隊以外が緊急時のためのテクノロジーにお金を使う習慣はない。)

緊急時は市場ではないので、ピアノの蓋(反響板)は、
もっとも高価で重い救命具としてデザインされる。
ピアノの蓋に対して、
その希少性ゆえに偶然の巡り合わせで生き延びる方法以外を望んではいけない。

デザインサイエンスは緊急時を待たない。
デザインサイエンスは、緊急時のためのテクノロジーに備えるのはなく
目的論的テクノロジーに自発的に対処する。

自発性こそは、緊急時の道具に包括的なデザインが反映される唯一の方法である。

有限要素法

有限要素法は解析したい領域をより小さな領域の「要素」に分割する。
解析領域全体が積分で表される場合、各要素内の積分の総和として表せる。

全体は部分から構成できるという還元主義のトリックがある。
つまり、総和が表せるように部分を定義する操作だ。

こうした独善的な推論によって、
つまり推測から得た安全性についての複雑でもっともらしい予測に基づき、
本来の構造システムは高価で過剰な物質で強化されるのである。

有限要素法は決定的にシナジーを除外したままだ。
工学的で合法的な記号システムによる富の損失は計り知れない。

シナジーは要素の総和の効果ではない。
要素から推論できない重さのない機能だ。

リダンダンシー(冗長度あるいは安全係数)からの脱出

大きな災害がある毎に、リダンダンシーの確保は
不可欠なテクノロジーとして考察されている。

自然は、酸化作用のないテクノロジーから脱出するための
煙のより少ない煙突を改善するよりも
煙突が不要なテクノロジーを用意しているように、
自然が構造をつねに非固体的に形成しているのは
リダンダンシーを非物質化するためである。

リダンダンシーを理論的に完全に排除できたのは
テンセグリティ原理の発見以後だ。

リダンダンシーの開発コストと構造体の全重量を増加させるテクノロジーは
時代遅れである。

テンセグリティと重力

テンセグリティを圧縮材よりも張力材をより多く使って
構造化するほうが、統合力はシナジー的に飛躍する。
これは、個別の結合力の増加を意味しない。

直径数キロメートルのテンセグリティ球は
ほとんどが張力材である。
だからテンセグリティは太陽光だけで
大気圏に浮遊できるのである。
(NASAは大気圏内を宇宙空間に含めなかった)

自然はすでに重力を断面積がゼロの張力材にデザインしている。

共鳴型と非共鳴型テンセグリティ

構造がある形態を維持しているのは、
閉じた有限のシステムを包括する連続的な張力機能によるのであり、
不連続で局所的な圧縮機能によってではない。

さらに、この形態からリダンダンシーをすべて排除した場合が
共鳴型のテンセグリティ構造である。

圧縮機能を連続させ、張力機能を非連続にした非共鳴型テンセグリティは
高い振動数でしか共鳴しない。
そして、外力の分散機能は著しく低下する。

しかし、通常の建物が、低い振動数(振幅は数m、周期は数十秒)の巨大地震で
ゆっくりと確実に破壊されるのは
自重を大地に流すようにしかデザインされていないからだ。

数学的自然からテンセグリティは生まれた

柔構造は五重塔をモデルとして考案されたらしい。
心柱が他の構造体と接していないという共鳴型構造が耐震性能を生む。

圧縮材をすべて非接触にすれば、
最大の柔構造になる共鳴型テンセグリティの原理の発見プロセスには、
自然の観察は関与しなかった。
自然や人工物を模倣しない唯一の方法は、観察を放棄することだ。
観察対象は観察者がそれまでに習得した概念で観察されるにすぎない。

バックミンスター・フラーの数学的自然観を理解すると、
葉の緑を重んじるエコロジーが局所的なビジョンに見える。

『宇宙船地球号操縦マニュアル』(1962)には
驚くことにエコロジーという言葉は一回も使われなかった。

社会化された自然に数学的自然が含まれたことはないのである。