投稿者「synergetics」のアーカイブ

分節化(articulation)の学習

テンセグリティの発見によって
構造から圧縮力と張力という純粋な機能は初めて分離された。

バックミンスター・フラーはtwonessという相補性への分節化から、
宇宙のテクノロジーの稀有な視覚化に成功したのである。

しかし、テンセグリティの構成要素である圧縮材と張力材を個別に観察しても、
統合に関するいっさいの情報は存在していなかったのである。

分節化は統合化の過程で発見されるメタフィジクスへの優れた操作主義である。

バックミンスター・フラーはアインシュタインから学んだ操作主義によって
具体性に置き換える誤謬から逃れている。

この事実は、この半世紀間、すべての建築家が
テンセグリティ原理を建築テクノロジーに置き換えることに
失敗してきたことよりも重要なことである。

2007年度から始まったシナジェティクス入門講座の主題は、
講座のテキストである『コズモグラフィー』という思考の幾何学は
読書のみによってはとうてい理解できないことを学ぶことでもある。

サーバー技術によって非同時的に、そして遠隔地を結ぶ同時的な学習ネットワークは、
思考の幾何学の最適な学習環境にちがいない。

経験を秩序化する思考の幾何学は、はじまったばかりだ。

デザインサイエンスの方法論 リダンダンシーの理論的排除について

直径に関わらず、ジオデシック・ドームが経済的にデザインされることは稀である。

安全係数が大きくなればなるほど、リダンダンシーが大きくなるが、
荷重を分散する自由度は小さくなる。
航空機は飛行するために軽量化されなければならないので、
リダンダンシーの理論的排除が積極的に行われている。
実際、建築業界では4倍から倍程度の安全係数を使うのに対して、
航空機業界では、2倍以下の安全係数しか使わない。
この違いは、技術的に無知であればあるほど、
適用する安全係数は大きくなることを証明しているだろう。

ジオデシック構造は荷重を分散しない「柱と梁」を基準とした
連続する圧縮材を前提に分析されている限り、
これまで建てられてきた巨大ジオデシック・ドームは、
航空機とは比較にならない過剰な安全係数で造られている。

間違った前提からジオデシックドームは航空機ほど安全ではなくなっている。

Twonessと『コズモグラフィー』(バックミンスター・フラー著)

『コズモグラフィー』はシナジェティクスとデザインサイエンスの相補的な twonessが描かれている。
インターネット入門講座(6ヶ月間)の教育プログラムはこのtwonessから始まった。

半年後、1期生はデザインサイエンスプロジェクトに
2期生はシナジェティクス翻訳プロジェクトにそれぞれ自発的に従事している。

どちらも互いに遠隔に住む個人の繋がりが、
教師にもキャンパスにも束縛されない現実(real)を生んでいる。

同時に、概念の牢獄の外観がやっと見えてきたのである。

テンセグリティ・ジオデシック構造の歴史

ジオデシックドームの歴史を見ると、
バックミンスター・フラーはダイマクション・ハウスの
プロトタイプの制作直後に
大円モデルとテンセグリティモデルの発見を経験しながら
ジオデシック数学への移行まで数年間を要している。

さらに、テンセグリティ・ジオデシック構造の完成までは
バックミンスター・フラーでさえ最長の17年間を要している。

現在、ノースフェイス社のテント構造に短期的に滞在する以外、
テンセグリティ・ジオデシック構造に誰も住んでいないのは
テンセグリティ・ジオデシック理論と実践をマスターした個人は
バックミンスター・フラー以外にいなかったからである。

もっとも経済的な個人のためのテンセグリティ・ジオデシック構造が
実現されるまでデザインサイエンスは不在である。
個人によるクリティカル・パス方法の成果はまだ証明されていない。

シナジェティクスの翻訳・註釈プロジェクト開始

シナジェティクス入門講座生への最終講義を終えた。
理解のプリセッションは名状しがたいイメージを伴う。
講座生は6ヶ月間のキャンパスのないデスクトップ上での
(つまり机上の)思考実験から、
予測的に必要とされるピクチャーを描き始めた。

第2期生による遠隔地を結んだ
シナジェティクスの独自の翻訳・註釈プロジェクトが開始された。
この加速する平行移動は、スカイプの分散型ネットワークの支援によって
自発的に発生した企てである。

シナジェティクスほど自立的な知としての「翻訳学」が求められることは稀である。
モデリングと概念との結合作業において、
シンタックスとセマンティックの相互変換と統合の試行錯誤を経て、
言語学の下位概念ではない「翻訳テクノロジー」が形成される。
(「思考を声に出す」過程のすべてはオーディオ・ハイジャックされ、
ダウンロード可能なクロノファイルは
もっとも優れた自己のテクノロジーの一部となった。)

バックミンスター・フラーの遺作となった『コズモグラフィー』が
シナジェティクス入門書ではなく
シナジェティクス原論であったように、
この翻訳・註釈プロジェクトで形成される翻訳学は、
モデル言語を含めた註釈学となる可能性がある。
どんなに複雑なリンクも一筆書きの変形だ。
どのルートも2度通過すれば、つまり相互作用すればどこにでも行けるトポロジーだ。
われわれは距離を超越するためには交差点(=ノード)を増やすことを躊躇しない。

これらの自己のテクノロジーによって、
彼らはもう一つの「宇宙船地球号」に帰還できるだろう。
そして、外部から見たこの「宇宙船地球号」は、
かつて英語圏内からでも観察できなかった
新たなメタフィジクスの外観を備えているにちがいない。
晩年のバックミンスター・フラーがアジアに頻繁に停泊していた歴史的理由かもしれない。

講座生たちがシナジェティクスを読破する前に、
「宇宙船地球号」に降り立とうとしていることは記念すべき方法である。
経験の後の知の探査によって、情報量を劇的に節約できるからだ。

それは統合の関係数を増大させる明白なプロセスかもしれない。
インターネットによるシナジェティクス教育は、
どんな建築よりも本質的にテンセグリティ構造に接近している。

通信テンセグリティ

P2Pはエフェメラリゼーションがもっとも成功した
21世紀の桃源郷である。
http://hibagun.net/tensegrity_skype/tensegrity_skype_jp.html

この不可視の通信テンセグリティの反建築的革命性は
最初の1年間いっさいメディアで報道されなかった。

事実と情報は非対称的(=鏡像的)ではなく、無対称的である。

真実は、電子と陽子のように、
そして、圧縮材と張力材のように
つねに非鏡像的で相補的である。

シナジェティクス入門講座 最終講義

理解が試行錯誤によって到達するならば、
手は思考する器械になり得る。

しかし、新たな概念を生むプライムデザインは、
個別の理解からも手からも到達できない。
古い概念を破壊できるのは、モデル言語の包括的な習得からだけだ。

モデル言語を習得するシナジェティクス入門講座は
予定どおりこの3月末で終了する。

私のシナジェティクス講座を半年受講した学生たちは
以前よりも本を読まなくなるだろう。
あるいはモデリングの経験を読書に求めないだろう。

個々人が包括的な世界像を引き寄せるテクノロジーと段階を経験することで、
シナジェティクスの評論家はあと150年間は失業するはずだ。

概念の牢獄

かつて修道士たちは、三角法を発達させ、対数によって解を求めるために、
正弦(sin)、余弦(cos)、正接(tan)、余接(cot)を示す一度単位の表を数百年をかけて製作した。
1930年から1936年までの大恐慌の間に、イギリスとドイツの数学者が共同プロジェクトに雇われ、
一分単位の弧と対応する正確な関数表を計算した。
その後、第二次世界大戦後には計算機が出現し、大学の建物は何千もの真空管で埋め尽くした。

現在は数万円のCADが安価なCPUで10桁の数字を瞬時に計算し、
円弧と弦の長さを自動計算するだけではなく、複雑なオブジェクトを3次元に表示できる。
しかし、3DのマニュアルはXYZの直行座標を25世紀間も存続する世界観に圧倒的に支配されている。
道具の真の機能は、概念の牢獄化によって深く閉ざされたままだ。

シナジェティクスを学ぶ講座生がこの道具を最初に購入した時の最初の課題は、
この道具の新しい使い方だ。

この1年間でシナジェティクス講座で出会った第1期生と2期生は、
いかなる専門家よりも直行座標を利用しなかった最初の人類だ。

シナジーとは

シナジーのシナリオは、資本主義システムにおける土地所有とその利益に関する価値付けに関して、
カール・マルクスの時代から思い描かれてきたいかなる経済学よりも革命的である。

道具(tool)について

人間が作る法律、法的な合意、そして国家のあらゆる命令は、道具(tool)ではない。
人間が作る法律と慣習は、テクノロジーではない。
それらは物理的な武力(つまり、政治権力)によって維持されたきた
〈権利〉によって制定された策略にすぎない。
企業は道具ではない。
権力の法的な計略によって慣習的に容認された装置にすぎない。

個人によって実践可能な方法論を開発し、諸物質を結合させて
これまでに存在し得なかった道具とその機能を具現化する
デザインサイエンスは道具に関する
史上初の包括的な科学である。