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Doing More With Lessの私的見解

「Doing More With Lessを事実に基づいた具体例に変換してみましょう。
我々の住居の平均的な壁の厚みは30cm程度です。
部屋の幅が6m程度とすると、その厚みは幅の20分の1となります。
人間の頭蓋骨の平均の厚さは6mm程度なので、直径との比率は40分の1以下です。

ところが、鳥の卵の殻の厚みと卵の直径の比率は80分の1以下になっています。
彼らは産卵する直前まで飛行しなければならないからです。
適切にデザインされたジオデシック・テンセグリティドームのその比率は200分の1以下となります。
我々が惑星地球上で生存するには、移動しなければならないからです。

実際、我々の細胞膜のこの比率がさらに小さくなるのは、細胞自体がテンセグリティ構造だからです。
身体を構成する60兆もの細胞を周期的にすべて入れ換えるために、
自然はテンセグリティ構造を再生システムとして採用したのです。

人類のこれまでの固体的住居を構成する殻や壁は、圧縮材ではなく張力材として機能すべきです。
そして、テンセグリティ構造は、周囲の環境と共存した状態を形成するために常に振動するシステムです。
自然が振動というDo More with Lessを採用するのならば、
振動は構造を常に軽量化すると考えられます。

Do More with Lessは、張力材を構造に包含させるための、
構造デザイン上で最も効果的な方法論になるでしょう。


2008年の私へのインタビューから引用
このインタビュー以後も、テンセグリティ構造をより高度に単純化するための
種々の発見に基づいた新たなテンセグリティ理論が形成されている。
その理論を応用したテンセグリティシェルターのプロトタイプの制作以上に、
デザインサイエンスの歴史にとって重要なTrimbTabはないかもしれない。
なぜなら、アメリカに於いてもこの日本においても
個人のための<生活器のデザイン>を他の誰も挑戦してこなかったからだ。

銀河新年2016 絶望的な連帯の始まり 

貧困化は救済の形態と方法から作り出される。

あらゆる生産的な富の固定化と分配方法の独占こそが
富の緩慢な死である。

1000万人の移動する難民救済のための
食料、エネルギー、水、シェルターの供給が
国連ではなく、貧民の絶望的な連帯から生まれるならば
包括的な宇宙のテクノロジーを利用する以外の道はないだろう。

球状大地と富とをつなぐ本質的な媒介者は
もはや人間ではなく、バンアレン帯を通過する
無数の宇宙線のエネルギーになるだろう。

そのエネルギーを変換するテクノロジーは
すでに発見されているからだ。

そのテクノロジーを効果的に利用するには
最新の宇宙論を理解しなければならないだろう。

太陽系に存続する惑星地球は、つねにエネルギーを受容する器である。

プラトン以後

幾何学は死んだ。
そして新しい幾何学は始まったばかりだ。

動力学的幾何学な観点から
あるいは
反幾何学的な起源を提起するのではなく
幾何学が幾何学から離陸するための概念形成が
いつから起こったのかを問うならば。

プラトン以後の幾何学がどのような型の発展をしてきたのかを
歴史的に観る幾何学は、数学者からも幾何学者からも形成されなかった。

関係の幾何学

知覚したイメージを記憶に保ちながら
再び心のうちに表れた作用が
あるモデルに転写されるのではなく、
他の何ものかへの関係がその同一作用を引き起こすモデリングに帰される時
そのモデルは他者に伝達可能になる。

他の何ものかへの関係こそが
関係の幾何学(=シナジェティクス)を形成しているのである。

科学的な観察行為からテンセグリティモデルが発見されなかった事実を
説明するだろう。

つまし、テンセグリティモデルは
テンセグリティ理論が形成される前に発見されたのである。

有限性

人々は自分のために
自分の利益のために
そして、自分の家族のために生きる。

しかし、それらの目的に生きる者が
絶えず自己とともに存在することにはならない。

さらに、自己を含む宇宙のために
存在することへの移行は
有限性に自分自身が繋がれている幻想に
直ちに呼び戻されてしまうだろう。

安全システムこそ、この有限性という幻想の結果である。

プライムデザイン再考

シナジェティクスにおいて
容赦なく幾何学と分離する時間は、むしろ
デザインサイエンスと融合させる活動をより明晰に包括的なものにする。

こうした時間はプライムデザインの主権を
実践的だが、脆く、妥協に満ちた不確定的なノウハウと呼ばれる
知的習慣から奪い返すことができる。

デザインサイエンスの概念には
これまでの知的階層構造を無化する
反権力的思考が含まれる。

デザインサイエンスは、建築とはその起源を異にする。

定義のユーザ

テンセグリティ作品の独自性を高めるために
アセンブルをより複雑にし、
その芸術作品の価値を向上させるために
テンセグリティのモジュール化を拒む。

現在のケネス・スネルソンから
テンセグリティ構造を
生存のための構造システムに変換する行為はついに見られなかった。

彼が球状テンセグリティに挑戦しなかったのは
バックミンスター・フラーの創造性と棲み分けしているからだとしたら
彼のテンセグリティに対する見解は実に局所的である。

彼の芸術は様式を模倣したくないだけのように見える。

しかし、テンセグリティの<構造とパターン>は
まだ一般化されていない。
<構造とパターン>は数学そのものである。

ケネス・スネルソンは
圧縮材の不連続の連続に魅せられたまま
美学的行為の無限性を表出しているかぎり、
バックミンスター・フラーによる
テンセグリティの定義のユーザにすぎない。

その定義よりも前に
動植物のすべての細胞が採用してきた
テンセグリティシステムの包括的な先験性によって
彼の作品を時代遅れにしているのである。

バックミンスター・フラーによる
一般化された球状テンセグリティモデルの発見以後
この半世紀間の自然の観察から分かってきたことは
テンセグリティ原理は
生存のための構造安定化のためのデフォルトなのである。

テンセグリティシステムは
特殊ではなく、水素原子のように
ありふれた宇宙の構造システムなのだ。

シナジェティクス・モデリング

モデリングには、モデル言語に基づいた技法が生まれる。

その役割は、現象によって誘導される他の現象を翻訳するための
作業仮説を打ち立てると共に
作業仮説に現象の再現と意義を形成することにある。

モデリングは
自由という形式のもとで
作業仮説と現象との差異を取り除く言語形成にある。

技法は、モデル言語の生成過程に生まれる。

ロシア構成主義は
美的な技法から抽象性(非対称性・幾何学的形態)を獲得したが
不可視の自然の形態を翻訳し再現する技法ではなかった。

技法や理論から生まれたモデリングは
人類の生存形式に影響を与えなかった。

未知な自然を探究するシナジェティクス・モデリングの方法は
既知となった技法の解体、またはその破壊
さもなくばまったく別なものへの転換、または逸脱や絶縁、
へと到るような何か未知を経験することを意味している。

浮遊するテンセグリティ

テンセグリティ構造の製造技術論は混乱していて
それらは、しばしば断片的な経験で組立てられ
体系的で継続的な理論形式はほとんど残されていない。

その理論が導く作用効果は首尾一貫しているにも関わらず、
ほとんどは、雑多で経験的な形式を引きずったままの
未知の原型システムとして捉えられているが
基礎で固定され、
そして、テンション材が一本でも破断すると崩壊する構造は
張力によって統合されたテンセグリティ構造ではない。

しかし、『クリティカル・パス』(バックミンスター・フラー著 1981)で
引用される<浮遊するテンセグリティ>は
現代の素材から水に浮かぶ超軽量テンセグリティモデルで再現可能である。