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沈黙の発見

神聖(divine)とは
蔓状に延びた網状のブドウ(vine)の樹木のような
存在の神々しさを意味するが
忘れられた不確実な状態を永続させるために
有史以前からの擬似的な論理性に見せかけて
人々を承伏させてきた初源的でメタフィジカルな言葉である。

シナジェティクスは
言語の限界の発見からはじまる。
思考する道具としての言語によってその限界と発見は生まれない。
限界から湧き上がる行為は言語から生まれる行為とは異なっている。

シナジェティクスを探究する動機には
言語の限界からはじまる長い沈黙が含まれる。

思考する道具としての言語からこの沈黙は生まれない。

シナジェティクスは
あらゆる表象や記号とイメージ、
そして、条件反射のための記憶と経験とイデオロギーから
頭脳(brain)ではなく
精神(mind)を自由にするメタフィジックスである。

この包括的なメタフィジックスは
無数のシナジェティクスモデルを発見し
そのモデルが内包するモデル言語を
思考言語(thinktionary)に変換してきた。

そして、神聖幾何学のような初源的でメタフィジカルな言語は
シナジェティクスの包括的なメタフィジックスによって
破壊され、そして陳腐化される。

そして、このプロセスは今後100年間は継続するだろう。

それほどまでに
人々を容易に承伏させる初源的でメタフィジカルな言葉は
未来の思考をも満たしているのである。

思考言語(thinktionary)の翻訳

バックミンスター・フラーの『クリティカル・パス』は
哲学(メタフィジックス)や経済学の専門分野の知識から
(英語版の出版から17年間に日本の出版社が
複数回にわたって版権取得したにもかかわらず)
日本語で編集し翻訳できなかっただけではなく
数学や物理学の専門分野の知識からR.B.フラーの『シナジェティク』を翻訳すると
不適切で、しばしば空疎な誤訳になるのは
フラーの独自の造語や先行した独創的な理知からではなく
これまでの翻訳者自身の思考言語やその構築方法を
全否定しないからだ。

さらに、バックミンスター・フラーの日本語翻訳に関する超訳が
ほとんど成功しないのは
シナジェティクスやデザインサイエンスに対する理解度とそれに関連する語学力や
シナジェティクス・モデリングに関する包括的な経験不足だけではなく
フラーの独自の思考方法を生成する<思考言語(thinktionary)>を
日本語に変換できなかったからである。

シナジェティクスのモデル言語なくして
<思考言語(thinktionary)>は構築不可能である。

言い換えるならば、思考言語(thinktionary)の
シンタックスとセマンティックの相互変換は
日本語だけの問題ではなかったのである。

風のトポロジー Earth Wind Map

非同時的で局所的な風を
外部から同時にみると大きなパターンが見える。

参照 Earth Wind Map  
http://earth.nullschool.net/jp/#current/wind/isobaric/1000hPa/orthographic=-281.60,29.20,481

北半球と南半球のトルク現象(回転軸と2極点において、互いに回転の向きが反転している)は
多頂点体の収縮拡大のパターンに類似している。
(『コズモグラフィー』(バックミンスター・フラー 著、梶川泰司 訳)の<正12面体の対称性の破れ>図解参照)

シナジェティクスのアナロジーは
バイオスフィアの全体の風の流れと方向のダイナミズムに
もっとも接近している。

どこかに風が吹けば
風がまったく吹かない場所がつねに2カ所できる。
その場所こそが極軸上なのである。

梶川泰司

共鳴について

固体はわれわれの思考形式の延長であり、
世界は固体として複製され、
複製された自己なのだ。

物事の<骨を掴む>ために
<石の上にも3年>じっと静止できる
思考言語が効果的行動を生むと信じているのである。

間違った張力材によるテンセグリティの柔軟性の再現において
その柔軟性を張力材ではなく圧縮材に求めなかった理由こそ
固体的な思考言語の形式なのである。

テンセグリティに
何が起こっているのかを観察できたなら
誰もゴム紐や釣糸などから<真の構造>を再現しないだろう。

テンセグリティは
共鳴以外の方法で外部と相互作用しない。
そして、
共鳴以外の方法で外部から自律しない。

固体など存在しない。
———圧縮材においてさえも。

反固体的構造

引張材には、引張の端部を固定する支点が必須であるが
重力にそのような支点や基礎部は存在しない。
重力の大きさ(重力値)が異なっているだけである。

自転による遠心力が緯度により異なり
地球が完全な球形ではなく、回転楕円体であり
地球の内部構造が一様ではないように
球状テンセグリティ構造においては
すべての圧縮材の圧縮力とすべての張力部材の張力は
一様ではない。

テンセグリティは
大地からの自律性が形成される過程でさえ
つねに振動し外力分散し続けるための複数の頂点を形成する。

つまり、その頂点さえもつねに共振する支点を形成しているのである。

反網膜的(anti-retina)

可視的な虹のスペクトルの識別可能な構成色が
色彩を表す言語数に依存するならば、
1677万色1原色あたり8ビット(256階調)以上のデープカラーは
色として網膜で感受できていても
脳では認識できていない。
人類はすでに色以外の情報の領域に達している。

網膜では
肉眼によって画素を認識できないほどの解像度やコントラストよって
可視的な色彩は、より鮮明で深みを感じるように変換される。

しかし、不足した色彩(例えば、墨絵や雪国の風景)が
過剰と同様に豊かさに変換できるのは、ひたすら言語による。

テンセグリティのモデル言語もまた反網膜的である。

テンセグリティの構造とパターンだけでは
その圧縮力と張力の動的な均衡は説明できないからである。

反対称的に統合されたテンセグリティモデルは
美的な色彩を拒み、素材の質感を超越するほどに反網膜的である。

モデル言語は視覚情報以上の<構造と意味>の相互作用領域に達しているのである。

時代遅れの幾何学

多面体幾何学の研究からシナジェティクスに
革命理論をもたらした人はいない。

たとえば、テンセグリティは多面体ではない。
ある数学者は双対多面体から形成できるなどど誤魔化している。

多面体は大理石を削って作ったギリシア人の世界観である。
多面体幾何学(Solid Geometry)は固体的である。
そして、時代遅れである。

たとえば、フラーレンの構造安定性を多面体幾何学でだれも再現できなかった。

シナジェティクスはどんな学問にも似ていない。
シナジェティクスはシナジェティクスから始まる。

共鳴テンセグリティの起源

張力に対する反対称的な概念は圧縮力である。

圧縮力はその力の及ぶ物体に軸方向を定めようとする力である。
張力はその力の及ぶ物体どうしのある複数点間における応力を領域に展開する力である。

閉じたテンセグリティ球において
張力は線状の物体に対して加わる力の反作用力として 
線状の物体がその力を及ぼしている物体に対して加える力、
つまり圧縮力を生じさせているのである。

張力がなければ圧縮力は形成できないが張力は圧縮力が制御するテンセグリティは
明らかに、上記の張力と圧縮力についての知識から生まれたのではない。

共鳴型テンセグリティは動的なバイオスフィアと
絶えず共鳴しているもっとも鋭敏な外力分散型自動機械である。

この自動機械を構成する不連続な圧縮材を統合するための張力ネットワークは
自然の観察や自然の形態模倣からではなく
バックミンスター・フラーの独自な想像力(=モデル言語力)が再構成している。

人間の想像力だけが、テンセグリティ原理の知識と物質を統合できたのである。[梶川泰司]

☆外力分散型の稠密充填型テンセグリティ・ジョイント(特許)を使用した球状テンセグリティモデル
                      構造デザイン 梶川泰司 + モデル制作 嶋あゆ子

[解説]テンセグリティジョイントと柔軟な強度と剛性について

各圧縮材端部に形成されたテンセグリティ・ジョイントによって
外力分散を短時間に効果的にする動的なネットワークの機能を形成すると同時に、
テンセグリティ構造の強度が飛躍的に増大するのは、テンセグリティ・ジョイントの軸回転機能による。
さらに、強度の飛躍的な増大は同一のテンション材の破断の限界が劇的に向上していることを意味する。

柔軟な強度と剛性は、軸回転機能のあるテンセグリティジョイントとネットワークとの相互作用から生まれる。
                               

キューブは2重の4面体に連続的に変換できる [Kajikawa Cube]

”Kajikawa Cube”は1981年に梶川泰司によって発見された。
バックミンスター・フラーが『コスモグラフィー』を執筆している最中であった。
それはバックミンスター・フラー研究所で発見された。

バックミンスター・フラーにこの ”Kajikawa Cube”をプレゼンテーションしたとき
彼は意外なことを告白した。
その告白は私を震撼させた。そして、その後のシナジェティクスを前進させた。
バックミンスター・フラーが当時完成させていたシナジェティクスにはない理論を
その後も探査するためのバックミンスター・フラーなき”SYNERGETICS 3″の開始だった。

バックミンスター・フラーの死後30年が経過した。
私は初期論文を公開することにした。

☆論文の全文ダウンロードはトップページ

ベクトル平衡体(jitterbug)のように、総三角形化されていないプラトン立体の中で
正6面体と正12面体も正4面体に連続的に変換可能なことが発見された。
さらにアルキメデスの多面体も同様に変換可能であることが同時期に発見された。

”Cube can be foldabale into two tetra” dicovered by Yasushi Kajikawa in 1981

http://synergetics.jp/
または
http://synergetics.jp/model/index.html

[Kajikawa Cube 1981]キューブは2重の4面体に連続的に変換できる。梶川泰司

続)シナジェティクスのモデル言語

モデル言語が理解よりも先行した真の構造革命は
中心軸のある初期のテンセグリティとしての
ダイマクションハウスを陳腐化した。

バックミンスター・フラーの愛好者たちは
4Dハウスとダイマクションハウスの基本概念を超えるまでの
もっとも長い懐胎期を知らないまま
彼の幾何学と工学を駆使した包括的デザインを
20世紀のレオナルド・ダ・ビンチと称してきた。

多軸テンセグリティ原理の発見は
ジオデシック原理の発見の前夜だったのである。
(参照 第3章 テンセグリティの発見 『宇宙エコロジー』
バックミンスター・フラー+梶川泰司著 美術出版社2004)

シナジェティクスのモデル言語から構造の全歴史における
最大の飛躍が翻訳できなければ
人々は論理的な理解に急ぐ習慣を変えないまま
時間的事実を逆さから理解することに終わるだろう。

遺作となった『コスモグラフィー シナジェティクス原論』
(バックミンスター・フラー著、梶川泰司訳 白揚社 2007)では
彼はダイマクションカーとダイマクションハウスの量産計画に
携わっていなければ、シナジェティクスは
さらに加速していた可能性を告白している。