シナジェティクス」カテゴリーアーカイブ

エフェメラリゼーション再考

巨大な飛行船は大地へゆっくりと着陸できる。

直径が数キロメートルのテンセグリティ・ジオデシック球が着陸する時も
浮遊しているタンポポが着地するようにしか見えないだろう。

大きさに対する経済学とエンジニアリングは未だに自由化されていない。
  
エフェメラリゼーションへの非物質化は
シナジェティクスとデザインサイエンスの統合によって
より短命化される。

テンセグリティの存在確率

より重要な部分をけっして形成しないで
付加的なリダンダンシーを排除したテンセグリティは
最高の知性が物質化した基底状態(garnd state)なのである。

それは自然(cosmic integrity)の方法であった。

人間の知性は
<つねに動的に統合された構造>を20世紀に初めて発見したのである。

プラトンの正多面体(solid)の静的な世界観から離脱するために
25世紀も経過しなければならなかった。

その構造は大理石よりも振動するがゆえに、より強度と剛性がある。

人間の生存空間が形成される時
電子軌道が電子の存在しうる空間であるように
その生存空間は圧縮材と張力材との相互作用による最も高い存在確率とみなされる。

反網膜的(anti-retina)

可視的な虹のスペクトルの識別可能な構成色が
色彩を表す言語数に依存するならば、
1677万色1原色あたり8ビット(256階調)以上のデープカラーは
色として網膜で感受できていても
脳では認識できていない。
人類はすでに色以外の情報の領域に達している。

網膜では
肉眼によって画素を認識できないほどの解像度やコントラストよって
可視的な色彩は、より鮮明で深みを感じるように変換される。

しかし、不足した色彩(例えば、墨絵や雪国の風景)が
過剰と同様に豊かさに変換できるのは、ひたすら言語による。

テンセグリティのモデル言語もまた反網膜的である。

テンセグリティの構造とパターンだけでは
その圧縮力と張力の動的な均衡は説明できないからである。

反対称的に統合されたテンセグリティモデルは
美的な色彩を拒み、素材の質感を超越するほどに反網膜的である。

モデル言語は視覚情報以上の<構造と意味>の相互作用領域に達しているのである。

時代遅れの幾何学

多面体幾何学の研究からシナジェティクスに
革命理論をもたらした人はいない。

たとえば、テンセグリティは多面体ではない。
ある数学者は双対多面体から形成できるなどど誤魔化している。

多面体は大理石を削って作ったギリシア人の世界観である。
多面体幾何学(Solid Geometry)は固体的である。
そして、時代遅れである。

たとえば、フラーレンの構造安定性を多面体幾何学でだれも再現できなかった。

シナジェティクスはどんな学問にも似ていない。
シナジェティクスはシナジェティクスから始まる。

反建築家(unarchitect)

バックミンスター・フラーを尊敬して
建築家であったり、建築家になろうとすることは
彼を尊敬していることにはならない。

なぜなら、彼は建築家を志したことがないばかりか
建築(architecture)という概念を破壊してきたからである。

建築はより重要な構成要素が存在する構造を否定しては存在できない。
その設計・製造工程でさえ、つねに支配者(architect)を必要としている。

デザインサイエンスの設計・製造工程では、つねにクリティカル・パス法が
プロジェクトメンバーの共同性によって維持される。

真の共同性とは、反建築的(unarchy)である。

したがって、クリティカル・パスの作業工程に分業という概念は存在しない。
分業(division of labor)は、分割して統治する戦略の変形でしかないからだ。

バックミンスター・フラーを尊敬しても
クリティカル・パス法を尊重する建築家はいないという事実が
認識の不在を証明している。

バックミンスター・フラーは
1927年からアナキーな反建築家(unarchitect)であった。

柔軟な強度へ

テンセグリティ構造とは、思考の構造さえも否定する
前例のない構造の純粋な物質化なのである。
同時に、柔軟な強度と剛性を備えた構造の一般化でもある。

純度のもっとも高い (99.9999 %) 鉄は
表面が銀色に輝き、異種金属に接触しても
電気的に腐食しなくなるだけではなく
柔らかいが割れにくく容易に切断できなくなるように
圧縮材が不連続な純粋なテンセグリティ構造では
一部の張力材が破断しても共鳴作用に補償作用が形成されると考えられる。
実際、外力分散機能はほとんど劣化しない。

これまでの圧縮材のみから構成された構造や張力材が非連続な構造は
すべて特殊で部分的だったのである。
むしろ、それらを不完全な構造とさえ呼ぶべきではないだろう。

フラーレンはダイヤモンドの表面を損傷させるほどの<柔軟な強度>を備えていた。

自然が<固体的な強度>よりもより強度のある<柔軟な強度>を選択する場合
すべてテンセグリティ構造なのである。

備考
<柔軟な強度>については
『宇宙エコロジー』(バックミンスター・フラー+梶川泰司 著 美術出版社 2004)
の直径11mのフォーダブル・テンセグリティ構造(1995 by シナジェティクス研究所開発)を参照

共鳴テンセグリティの起源

張力に対する反対称的な概念は圧縮力である。

圧縮力はその力の及ぶ物体に軸方向を定めようとする力である。
張力はその力の及ぶ物体どうしのある複数点間における応力を領域に展開する力である。

閉じたテンセグリティ球において
張力は線状の物体に対して加わる力の反作用力として 
線状の物体がその力を及ぼしている物体に対して加える力、
つまり圧縮力を生じさせているのである。

張力がなければ圧縮力は形成できないが張力は圧縮力が制御するテンセグリティは
明らかに、上記の張力と圧縮力についての知識から生まれたのではない。

共鳴型テンセグリティは動的なバイオスフィアと
絶えず共鳴しているもっとも鋭敏な外力分散型自動機械である。

この自動機械を構成する不連続な圧縮材を統合するための張力ネットワークは
自然の観察や自然の形態模倣からではなく
バックミンスター・フラーの独自な想像力(=モデル言語力)が再構成している。

人間の想像力だけが、テンセグリティ原理の知識と物質を統合できたのである。[梶川泰司]

☆外力分散型の稠密充填型テンセグリティ・ジョイント(特許)を使用した球状テンセグリティモデル
                      構造デザイン 梶川泰司 + モデル制作 嶋あゆ子

[解説]テンセグリティジョイントと柔軟な強度と剛性について

各圧縮材端部に形成されたテンセグリティ・ジョイントによって
外力分散を短時間に効果的にする動的なネットワークの機能を形成すると同時に、
テンセグリティ構造の強度が飛躍的に増大するのは、テンセグリティ・ジョイントの軸回転機能による。
さらに、強度の飛躍的な増大は同一のテンション材の破断の限界が劇的に向上していることを意味する。

柔軟な強度と剛性は、軸回転機能のあるテンセグリティジョイントとネットワークとの相互作用から生まれる。
                               

再考・モバイルテンセグリティと<動く生産ライン>

より少ないより軽量な構造部材によって構成可能な
モバイル・テンセグリティシェルターのプロダクティビティが
家庭やスタジオから24時間繋がる
動く生産ラインによって、
その開発力と生産力が
より少ないエネルギーで、より短時間に、
より加速できる歴史的根拠について


船舶を生産するデザイナーは、各国のドッグで移動しながら生産する最初の生産ラインを発明した。
現代の自動車の生産ラインは、地上に固定されているように見える。
しかし、陸路の流通経路を各部品が流れることによって、
船舶の動く生産ラインのように相対的に<動く生産ライン>を形成してきた。


そして現代のオンデマンドにみられるように、
すべてが移動しながらアセンブルできる陸路、海路、空路による生産ラインに転換されつつある。
流通経路を支配する組織は、衛星ネット上で個々の注文を受けながら、
トラックという動く分散型倉庫から直接販売店に配送するまでの輸送システムを持っている。
これらは、動く生産ラインの変形システムである。


生産も消費も、動く閉じた柔軟な関係、つまり流体地理学的な世界観を急速に形成している。


しかし、教育と労働だけが、毎日同じ場所への通学と通勤を余儀なくさせられている。
これは21世紀に継続された反流動的で固体的な世界観である。
(1〜4;<犬のしっぽブログ 梶川泰司 2007年1月29日 から全文引用 >)


自宅学習と在宅勤務を始動させるためのモバイル・シェルターの現実的なデザインと生産に
必要な環境諸条件はすでに整備されている。
それらは、非同時的な産業化の複数のプロセッションによって形成されてきた。

モバイル・テンセグリティシェルターは、21世紀のトリムタブ(trim tab)である。

☆この初期の2007年型のモバイル・テンセグリティシェルターは
現在2013年の最軽量の量産型のモデルとして開発中である。
                                       
シナジェティクス研究所 
デザインサイエンティスト 梶川泰司 
2013年 7月27日 


  

キューブは2重の4面体に連続的に変換できる [Kajikawa Cube]

”Kajikawa Cube”は1981年に梶川泰司によって発見された。
バックミンスター・フラーが『コスモグラフィー』を執筆している最中であった。
それはバックミンスター・フラー研究所で発見された。

バックミンスター・フラーにこの ”Kajikawa Cube”をプレゼンテーションしたとき
彼は意外なことを告白した。
その告白は私を震撼させた。そして、その後のシナジェティクスを前進させた。
バックミンスター・フラーが当時完成させていたシナジェティクスにはない理論を
その後も探査するためのバックミンスター・フラーなき”SYNERGETICS 3″の開始だった。

バックミンスター・フラーの死後30年が経過した。
私は初期論文を公開することにした。

☆論文の全文ダウンロードはトップページ

ベクトル平衡体(jitterbug)のように、総三角形化されていないプラトン立体の中で
正6面体と正12面体も正4面体に連続的に変換可能なことが発見された。
さらにアルキメデスの多面体も同様に変換可能であることが同時期に発見された。

”Cube can be foldabale into two tetra” dicovered by Yasushi Kajikawa in 1981

http://synergetics.jp/
または
http://synergetics.jp/model/index.html

[Kajikawa Cube 1981]キューブは2重の4面体に連続的に変換できる。梶川泰司

続)シナジェティクスのモデル言語

モデル言語が理解よりも先行した真の構造革命は
中心軸のある初期のテンセグリティとしての
ダイマクションハウスを陳腐化した。

バックミンスター・フラーの愛好者たちは
4Dハウスとダイマクションハウスの基本概念を超えるまでの
もっとも長い懐胎期を知らないまま
彼の幾何学と工学を駆使した包括的デザインを
20世紀のレオナルド・ダ・ビンチと称してきた。

多軸テンセグリティ原理の発見は
ジオデシック原理の発見の前夜だったのである。
(参照 第3章 テンセグリティの発見 『宇宙エコロジー』
バックミンスター・フラー+梶川泰司著 美術出版社2004)

シナジェティクスのモデル言語から構造の全歴史における
最大の飛躍が翻訳できなければ
人々は論理的な理解に急ぐ習慣を変えないまま
時間的事実を逆さから理解することに終わるだろう。

遺作となった『コスモグラフィー シナジェティクス原論』
(バックミンスター・フラー著、梶川泰司訳 白揚社 2007)では
彼はダイマクションカーとダイマクションハウスの量産計画に
携わっていなければ、シナジェティクスは
さらに加速していた可能性を告白している。