シナジェティクス」カテゴリーアーカイブ

非対称性の科学

テンセグリティは
航空機に次いで台風やハリケーン、地震などで
発生する種々な外力による振動に対して、
免震や耐震そして制振のための付加装置が
いっさい存在しないモバイルシェルターになり得る。

この驚異的な機能的エフェメラリゼーションには次の共通点がある。


揚力を発生させるのは、翼の形態や制御方法ではなはない。


物体の上下で圧力差=動的揚力が生じる時、
物体の上下の流れが非対称になる原理と
物体と流体に相対速度があるときに発生する動的揚力の発見は
飛行機の発明の後に発見されている。


非連続なテンセグリティ構造体を形成するのは
ジオデシック球面分割で配列された対称的な構造とパターンにあるのではない。


テンセグリティの原理は
ユニバーサルジョイントや
自転車のホイール・テンセグリティの発明の後に発見されている。
それらはすべて対称性が関与している。

そして、最適な細長比のある非連続な非対称的に配置された圧縮材を
連続した非対称的な張力材の閉じたネットワークで統合されるという原理は
対称的なテンセグリティの開発の後に発見されている。

テンセグリティの歴史においては
非対称性や無対称性は、対称性と対比する概念ではなく
非対称性や反対称性は、対称性を包含しているのである。

構造とパターンに潜む秩序の探査に美的な対称性を求めすぎてはいけない。
美的とは視覚的な存在形態に限定されている。

「反対称性について」犬のしっぽブログ 2013年4月10日 参照)
http://www.two-pictures.net/mtstatic/2013/04/post-2755.html

私とシナジェティクス数学

視覚化を伴わない抽象的な数学では
計算法は重要である。

盲人を偽装したゲームでは計算法は不可欠である。

彼らはこれまで盲人を偽装したゲームで
独占的な利益を稼いできた。

シナジェティクスは
つねに視覚化を伴った数学的な自然を探査してきた。

盲人を偽装したゲーム世界では
シナジェティクスモデルは
誰にも見えないことになっている。

いつも計算はその発見の後だから。

梶川泰司

恐怖心によって安全率は最大になる

ジオデシック構造は適切にデザインされているとは限らない。
従来の構造力学は、荷重を分散しない結晶質でできた柱や梁の圧縮力のみを
考察の対象とする法律的な基準でジオデシック構造を分析してきた。
これまで製作されたジオデシック・ドームの多くは、
その強度が、航空科学が採用した適切な安全率をはるかに超えるリダンダンシーを採用する。

建築家は航空科学者の3倍の安全率で顧客に安全を約束する。

テクノロジーに関する無知が増すにつれて、
無意味な恐怖心の裏返しである安全率が大きくなるのは、
安全率に比例してリダンダンシーも大きくなる一方で、
荷重を分散する自由度を狭めていくからである。

過剰な重量を抱え込む構造こそ死の危険を増大させコストを上昇させる。

テンセグリティにおいては
無意味な恐怖心の裏返しである安全率は最大になる。

大地から自律したテンセグリティ構造は
テンセグリティモデル以外にまだどこにも存在していない。

シナジェティクスモジュールの発見ーーーアップルホワイトへの手紙 

『成長する正20面体』梶川泰司 ,「サイエンス」1990年9月号  
(サイエンティフィック・アメリカン日本語版)

正十二面体を分割して作った10種のモジュールを放射対称的に再構成していくと,
正十二面体,正二十面体などさまざまな5回対称多面体が現れる。

ーーーー世界初の準結晶構造システム(=Icomatrix)の解明とその成長過程のアニメーション
Kajikawa to Applewhite

Kajikawa to Applewhite 1991

Icosahedron Dissection

By Yasushi Kajikawa

シナジェティクス数学

構造とパターンから独立した数字は無意味である。

構造とパターンとの新たな関係を発見する
シナジェティクスの探査方法は
形態的類似からでも言語的類似からでもない。
まして幾何学的相似からでもない。

子どもの遊びは数学的経験の宝庫だ。
経験は秩序化できる
もっとも身近な数学的対象だ。

しかし、純粋にその秩序を取り出すには
シナジェティクスモデルとモデル言語との相互作用を
習得しなければならない。

シナジェティクスは
自然界の現象や異分野の問題解決策に学べば
ほとんどの課題は簡単に解決できるという戦略的理論(analogical thinking)ではない。

現実を超えるために
シナジェティクスモデルが内包するモデル言語が
形態的・言語的アナロジーを超えることができたなら
シナジェティクスによる経験の一般化は
自然を模倣してはいないだろう。


Fig. 1032.12 Convex and Concave Sphere Packing Voids: by RBF

シナジェティクスとデザインについて

現実は物理的である故に
現実化によって得られる認識は
つねに不完全である。

原理から生成される
生物的・物理的形態(form)よりも
シナジェティクスモデルは
原理により接近する。

19世紀の光速度の絶対値を測定する装置のデザインが
回転鏡による方法によって
反射光の像ができる位置のズレの発見から生まれるには
光の反射という光学原理を歯車駆動に関する工学原理とを
調整する行為を必要とした。

しかし、その行為は
光に速度があるという<作業仮説>がなければ生まれなかった。

デザインは
ある<作業仮説>に基づいて
複数の原理を
互いにより接近させるための
操作主義的な行為である。

Dare To Be Naive

Dare To Be Naive

1975年7月2日 バックミンスター・フラーの講義 および
『シナジェティクス第一巻』の序文 <Moral of the Work>から

バックミンスター・フラーが言うNaiveとは
経験不足がまねく素朴なふるまいを意味する。
したがって知性の方向性は、anti-naiveである。

しかし、彼は
生得的で原始的な思考方法の展開力をNaiveに託していた。

梶川泰司

シナジェティクスモデルについて

幾何学モデルが
観察された対象を幾何学的形態または幾何学的関係に変換または置換されたモデルである。
例えば、バッキーボールがアルキメデスの準正多面体に置き換えられるように。

シナジェティクスモデルにおいては
観察行為と文節化による統合作用との共鳴状態を物質化したモデルである。
この進展する共鳴関係によって
残余の観察行為または文節化による統合をこれまでになく
減少させることができるのである。

これが幾何学モデルとシナジェティクスモデルとの相違である。

<コズモグラフィー>には
この未知なる共鳴状態の探求が不可欠である。

参照
『コズモグラフィー  シナジェティクス原論』
バックミンスター・フラー著 梶川泰司 訳・解説 白揚社 (2007/09)

合金について

付加価値の増大現象に気づいた20世紀後半の企業家たちは
とりわけ予期しない飛躍的な経済現象を
シナジー効果と呼びはじめた。

しかし、本質的に予測できないシナジー効果は
彼らの企業経営のように計画的に狙うことはできない。

計画的に出現した<合金>はまだ存在しない。

すべての<合金>は発見された後に
その製造方法が経験則的に利用されてきたのである。

一般化できないこの経験則こそ、
偶然性と直観による非物質化された特殊なシナジーであり
ノウハウという重要な重さのない合金を形成している。

Fig. 321.01 Universe as “A Minimum of Two Pictures”: Evolution as a transformation of nonsimultaneous events: the behavior of “Universe” can only be shown with a minimum of two pictures. Unity is plural and at minimum two. (Drawings courtesy Mallory Pearce)—-RBF 1975

シナジェティクス教育について

何がシナジェティクスを形成するかを
教育することは不可能である。

専門分化した技術者や科学者たちが
秩序化する基準とした科学的公式のみが
教育可能であるように
シナジェティクスの数学・科学原理だけが
学習可能である。

ただし
数式を視覚化するだけではなく
モデル言語、つまり構造とパターンいう先験的シンタックスに対して
つねに遅れてやってくるセマンティックスをも統合する方法は
教育可能である。