シナジェティクス」カテゴリーアーカイブ

モデル言語再考 2

専門用語をより増殖させ、包括的な理解を遠ざける
専門分化ための社会的な<構造>を強化するために
記号言語のテクノロジーが優越的に支配する情況が続くなかで
モデル言語の生成は
概念と物質、社会と私といった<諸関係>を形成しながら
観察する「私」と行為する私との同時的かつ非同時的な反映物を
刻々にデフォルトへと破壊していく峻烈な行為に起因する。

シナジェティクスを構築してきた科学的・数学的言語でさえ
高度により単純化されたプリミティブな構造と概念を発見し生成するための
その初期化(=デフォルト)の対象になるはずである。

このモデル言語による包括的な<デフォルト操作主義>こそ
産業化のための専門分化した科学者集団が
もっとも回避してきた行為に他ならない。

集団化した彼らのクライアントは
限りなく真実に見せかけた<構造>、つまり見えないグランチなのだから。

シナジェティクス原理からプロトタイプへ

「科学的法則は証明を必要とする。
シナジェティクスに記述された原理とその理論は
これまで経験的に論証されてきた。」  バックミンスター・フラー

ほとんどのシナジェティクス原理とその理論は
デザインサイエンスの問題解決の過程で生まれている。

それに伴う数学的な証明は
シナジェティクスの優先的な仕事ではないばかりか
シナジェティクスから新しいシナジェティクスは生まれていない。

最優先の課題を物質化したプロトタイプで十分だ。

プロトタイプとは
最小限のメタフィジックスとフィジックスが
ほぼ同時的に融合した希有な場所(=ドメイン)だから。

2014年1月20日
梶川泰司
デザインサイエンティスト

沈黙の発見

神聖(divine)とは
蔓状に延びた網状のブドウ(vine)の樹木のような
存在の神々しさを意味するが
忘れられた不確実な状態を永続させるために
有史以前からの擬似的な論理性に見せかけて
人々を承伏させてきた初源的でメタフィジカルな言葉である。

シナジェティクスは
言語の限界の発見からはじまる。
思考する道具としての言語によってその限界と発見は生まれない。
限界から湧き上がる行為は言語から生まれる行為とは異なっている。

シナジェティクスを探究する動機には
言語の限界からはじまる長い沈黙が含まれる。

思考する道具としての言語からこの沈黙は生まれない。

シナジェティクスは
あらゆる表象や記号とイメージ、
そして、条件反射のための記憶と経験とイデオロギーから
頭脳(brain)ではなく
精神(mind)を自由にするメタフィジックスである。

この包括的なメタフィジックスは
無数のシナジェティクスモデルを発見し
そのモデルが内包するモデル言語を
思考言語(thinktionary)に変換してきた。

そして、神聖幾何学のような初源的でメタフィジカルな言語は
シナジェティクスの包括的なメタフィジックスによって
破壊され、そして陳腐化される。

そして、このプロセスは今後100年間は継続するだろう。

それほどまでに
人々を容易に承伏させる初源的でメタフィジカルな言葉は
未来の思考をも満たしているのである。

思考言語(thinktionary)の翻訳

バックミンスター・フラーの『クリティカル・パス』は
哲学(メタフィジックス)や経済学の専門分野の知識から
(英語版の出版から17年間に日本の出版社が
複数回にわたって版権取得したにもかかわらず)
日本語で編集し翻訳できなかっただけではなく
数学や物理学の専門分野の知識からR.B.フラーの『シナジェティク』を翻訳すると
不適切で、しばしば空疎な誤訳になるのは
フラーの独自の造語や先行した独創的な理知からではなく
これまでの翻訳者自身の思考言語やその構築方法を
全否定しないからだ。

さらに、バックミンスター・フラーの日本語翻訳に関する超訳が
ほとんど成功しないのは
シナジェティクスやデザインサイエンスに対する理解度とそれに関連する語学力や
シナジェティクス・モデリングに関する包括的な経験不足だけではなく
フラーの独自の思考方法を生成する<思考言語(thinktionary)>を
日本語に変換できなかったからである。

シナジェティクスのモデル言語なくして
<思考言語(thinktionary)>は構築不可能である。

言い換えるならば、思考言語(thinktionary)の
シンタックスとセマンティックの相互変換は
日本語だけの問題ではなかったのである。

風のトポロジー Earth Wind Map

非同時的で局所的な風を
外部から同時にみると大きなパターンが見える。

参照 Earth Wind Map  
http://earth.nullschool.net/jp/#current/wind/isobaric/1000hPa/orthographic=-281.60,29.20,481

北半球と南半球のトルク現象(回転軸と2極点において、互いに回転の向きが反転している)は
多頂点体の収縮拡大のパターンに類似している。
(『コズモグラフィー』(バックミンスター・フラー 著、梶川泰司 訳)の<正12面体の対称性の破れ>図解参照)

シナジェティクスのアナロジーは
バイオスフィアの全体の風の流れと方向のダイナミズムに
もっとも接近している。

どこかに風が吹けば
風がまったく吹かない場所がつねに2カ所できる。
その場所こそが極軸上なのである。

梶川泰司

シナジェティクスの師

シナジェティクスは
自ら作成し観察するモデリングから思考するのである。

異なる経験から制作されるモデリングが示す
構造と意味の絶えざる相互作用があるのみである。

そのように、見ることをつねに外部化すること自体がシナジェティクスである。
シナジェティクスは教えられてはいない。

動的なシステムに書き換えられないテキストは存在しない
という経験が師なのである。

クロノファイル

既知なるシナジェティクス・モデリングは
過去の優れたコレクションから再現できる。

ひたすら心を夢中にさせるそれらのコレクションの終わりに
新たなモデル言語が生成されるのではなく
はじめから何も蓄積しない行為こそが
モデリングの原点(デフォルト)である。

他者の経験を完全に複製することは困難である。
たとえ、バックミンスター・フラーのクロノファイルからでさえ。

モデル言語の生成は
精神を既知なるものから虚しくすることから生まれる。

貧困と断絶と多国籍から
ピジン言語が生まれるように。

共鳴について

固体はわれわれの思考形式の延長であり、
世界は固体として複製され、
複製された自己なのだ。

物事の<骨を掴む>ために
<石の上にも3年>じっと静止できる
思考言語が効果的行動を生むと信じているのである。

間違った張力材によるテンセグリティの柔軟性の再現において
その柔軟性を張力材ではなく圧縮材に求めなかった理由こそ
固体的な思考言語の形式なのである。

テンセグリティに
何が起こっているのかを観察できたなら
誰もゴム紐や釣糸などから<真の構造>を再現しないだろう。

テンセグリティは
共鳴以外の方法で外部と相互作用しない。
そして、
共鳴以外の方法で外部から自律しない。

固体など存在しない。
———圧縮材においてさえも。

反固体的構造

引張材には、引張の端部を固定する支点が必須であるが
重力にそのような支点や基礎部は存在しない。
重力の大きさ(重力値)が異なっているだけである。

自転による遠心力が緯度により異なり
地球が完全な球形ではなく、回転楕円体であり
地球の内部構造が一様ではないように
球状テンセグリティ構造においては
すべての圧縮材の圧縮力とすべての張力部材の張力は
一様ではない。

テンセグリティは
大地からの自律性が形成される過程でさえ
つねに振動し外力分散し続けるための複数の頂点を形成する。

つまり、その頂点さえもつねに共振する支点を形成しているのである。