デザインサイエンス(バックミンスター・フラー)」カテゴリーアーカイブ

2つの宇宙

地球人にとって、
宇宙は、大気圏外と大気圏内に区分できる。

雨や雪は、重力によって地球の中心に向かって落下し、
やがて海に集められる。
次に表面から放射状に水蒸気となって移動する。
バイオスフィアのすべての水は、
これらの相互変換の過程に、つねに保存されている。

意図的に、大気圏内の天然ガス、石油・石炭ガス、そして
それらを使用して生産されるメタノールなどから
燃料電池用の水素を取り出そうとしているのは、非効率的であるばかりか
これらの地下資源エネルギーの変換過程で発生する二酸化炭素の発生量を
論理的に削減する方法ではない。

石油や天然ガスなどの偏在する大気圏内の天然資源に比べれば、
ありふれた水から大気圏外から注がれる太陽エネルギーを使って水素を取り出せるので、
独占されにくい。
それゆえに、燃料電池は主に大気圏外で利用されてきたのである。
地球での生存に必要な一般化されたテクノロジーは、
大気圏内宇宙では独占されたままだ。

しかし、「宇宙は、環境を含むすべて (RBF) 」であり
宇宙は先験的で包括的なテクノロジーである。
大気圏内宇宙の独占は、じきに宇宙から陳腐化されるだろう。

非物質化(エフェメラリゼーション)

移動するには、
結合と分解の機能が予めデザインされなければならない。
92の元素のように平均的な分布は、
非人格的(デフォルト的)に実現されていく。

人間も
移動させないテクノロジーよりも
自由に移動するテクノロジーによって、
真の富を獲得してきた。

単位あたりの重量が、
より軽量化される傾向が達成されてきたのは偶然ではない。
より統合化された機能は、非物質化された不可視の富である。

住宅はいまでも人々を移動させない
時代遅れのテクノロジーによって可視的にデザインされている。

(続)プライムデザイナー

資本主義のプライムデザイナーは、
議会ではなく、
科学者や建築家、そしてデザイナーでもない。
決定権をもった裕福な私企業である。
彼らの目的はこの惑星の資源を独占し人類に消費させることである。
有限なものは独占可能だからだ。

宇宙は最初のプライムデザイナーである。
原理群はその成果物であり、
人類による発見は無限だから独占不可能である。

腐敗や陳腐化のない永遠のデザインに気づいたならば、
クライアントである地球人はやがて、
惑星地球に派遣された最初のプライムデザイナーを
雇用するにちがいない。

シナジェティクスとデザインサイエンス

科学の原理を理解するためには、よい教師がいる。
シナジェティクスの原理を理解するためには、よいモデルがいる。
しかし、シナジェティクスを応用するためには
経験に基づいた知恵がいる。

誰も解決策は買えないようにデザインされている。
それが、デザインサイエンスである。

移動用のテンセグリティ・シェルター

固体的な城砦都市国家よりも
移動可能な小さな船の兵站線の方が優位である。

移動する風や太陽光からエネルギーを変換できるからだ。
移動中に食料も栽培可能だ。

この方法は大気圏の内部と外部にも適用可能だ。

ただし、大気圏内の陸地を移動する場合は
シェルターで十分だ。
このシェルターの機能は、テンセグリティ原理以外では達成できない。

重量 30 kgのこのテンセグリティ・シェルターの
プロトタイプを明日から私の仕事場から
900 キロ移動させて組み立てる。

テンセグリティ構造システムの耐久性は30年以上あるが、
この新しいテンセグリティ原理と機能の証明は、実験あるのみである。
つまり、それで生存することだ。

プロトタイプとは鋳型であるが、
テンセグリティの鋳型は不可視の原理である。

公開は11月27日から12月 3日まで
スパイラルにて
DO MORE WITH LESS
[ザ・ノース・フェイス40周年]

◎この新しいテンセグリティ原理についての講義は、
12月 2日午後19時から
(チケットは完売となっているが、まだ立ち見席限定のチケット有り、問い合わせは下記に)

http://www.spiral.co.jp/
http://www.goldwin.co.jp/tnf/40th/

DO MORE WITH LESS 展によせて

ジオデシック・テンセグリティ構造の理論化とそのモデル
——————DO MORE WITH LESS 展 
2008年11月28日(金)から12月3日(水)

シナジェティクス研究所
梶川泰司(デザインサイエンティスト)

私は、最近もっとも軽量で柔軟な強度のあるテンセグリティシェルターの開発に成功した。
バックミンスター・フラー以後のデザインサイエンスの歴史の中では、
もっとも単純で実用的な初のテンセグリティ構造である。
実用的なテンセグリティとは、人類の住居(シェルター)である。

「分割数を数倍に増やすと、構造全体の寸法における長さの増加に対する相対重量が急速に減少する」。
このバックミンスター・フラーの発見した基本的な原理をテンセグリティ構造に
反映する試みは構造化の極みでもある。
発見されたばかりのコンセプトモデルを
TNFの40周年の記念すべき「Do More with Less」展のために、
こうしてプロトタイプとして発表できたことは、幸運だった。

分割数が大きければ大きいほど、張力材が構造物全体に占める割合が大きくなる。
張力材は、その断面の直径と長さの相対的な比において、長さが無制限である。
さらに炭素繊維の場合、漸進的に複数の繊維に細分化すると、
細くなった繊維の強度が増し、
初期状態で測定した単位断面積あたりの張力性能の数百倍以上にもなる。
構造の軽量化には張力はもっとも効果的に機能する。
この原理の有効性は各張力材だけではなく、
炭素繊維からなる最新のコンポジットを圧縮材にした
テンセグリティ構造にも当てはまるかもしれない可能性に気づいた時、
未だ非公開の段階であった私のプロトタイプのデザインに対して、
東レ株式会社が高価なカーボン材を惜しみなく提供してくれた。

このテンセグリティ・シェルターが世界初のネオ・ジオデシック・テンセグリティ構造の
プロトタイプである理由は、
連続した球状ネットワークの増大に伴い、
空間を囲い込む連続した構造材の相対的な厚さや重量が直径に逆比例して
急速に減少する構造のシナジーを視覚化できたことに尽きる。

「原子はテンセグリティであり、その構造システム全体には〈固体〉などもはや存在しない(RBF)」
にも関わらず、人間の活動の大部分を特徴づけるあらゆる冗長性(リダンダンシー)が、
いまや全人類に自滅をもたらす危機から人類が脱出するのを遅らせてきたが、
このテンセグリティ・シェルターは
リダンダンシーを完全に排除した物質の結合状態を露わにしている。
その機能は、これまでのすべての産業社会を支配する経済理論(収穫逓減の法則)に反しているだろう。

シェルターはこれまで戦地や極地以外では効果的ではなかったが、
宇宙が要求するもっとも単純で高度なシェルターの再生デザイン
(=このシェルターの構造システムは圧縮材も張力材も
宇宙でもっとも豊富な炭素から形成されている)こそは、
21世紀の最大の do more with lessである。

なぜなら家を買わなければならないのは、この惑星では人間だけだからだ。

複製可能なロジスティックス

シナジェティクス&ロジスティックス

分割数の増加に対する唯一の限界は、より多くの機能を物質的に具現化する際のロジスティックにある。
構造が大きければ大きいほど、分割数を増加した時の構成部材の局所的な生産性が単純化される。
経済性はこの単純化の結果である。

この理論を証明するジオデシック・テンセグリティ構造を
個人のために経済的にデザインすることはデザインサイエンスの主目的である。
言い換えれば、デザインサイエンスは、ロジスティックを所有した結果生まれた最初の科学的方法論である。

ジオデシック・テンセグリティ構造は、
21世紀の都市に散在するホームセンターで調達可能な素材と道具のみから複製可能になるだろう。

エフェメラリゼーション革命ーーーー張力は補強材ではない

自然は、マクロコズムでもミクロコズムでも、
圧縮力を分離した二次的な補助とし、
張力を主とするデザインを採用するが、
人間は圧縮材を主として使うデザインを利用し、
張力を二次的な補強にしか利用しない。

石器時代の最良の経験によると、
住居の壁が分厚く重たいほど、
居住者に快適で安全な空間をもたらす。
二十世紀に合金と炭素繊維が出現したことで、
高速で移動するビークルの安全性は重さから軽さへと
短時間に反転したが、
建築の構造だけは変わらなかった。

つまり、もっとも経済的で安全な家に住んでいる人はいない。

テンセグリティモデルの作り方

テンセグリティは柔軟な強度を備えている。
だからといって張力材がエラスティックにはデザインできない。

テンセグリティがボールのように弾むのは張力材の弾性力からではない。
圧縮材との相互作用はエラスティックな張力材によって著しく損なわれる。
テンセグリティモデルは原理的に作らなければならない。

張力材にゴムなどの代用品を使用したテンセグリティは非原理的だ。
張力材には可能な限り伸度がない物質を使用すべきである。
特にステンレスワイヤーなどは前世紀の遺物だ。

備考
Tensegritoy(USA)などはテンセグリティの概念を教育する教材のなかでは
もっとも有害な商品だ。

デザインサイエンスにとって緊急時とは何か

デザインサイエンスにとって緊急時とは何か
市場のデザインには市場の意見が反映される。
一度の災害で何万人が命を落としても、市場はいつもと変わらない。
(軍隊以外が緊急時のためのテクノロジーにお金を使う習慣はない。)

緊急時は市場ではないので、ピアノの蓋(反響板)は、
もっとも高価で重い救命具としてデザインされる。
ピアノの蓋に対して、
その希少性ゆえに偶然の巡り合わせで生き延びる方法以外を望んではいけない。

デザインサイエンスは緊急時を待たない。
デザインサイエンスは、緊急時のためのテクノロジーに備えるのはなく
目的論的テクノロジーに自発的に対処する。

自発性こそは、緊急時の道具に包括的なデザインが反映される唯一の方法である。