デザインサイエンス(バックミンスター・フラー)」カテゴリーアーカイブ

有限要素法

有限要素法は解析したい領域をより小さな領域の「要素」に分割する。
解析領域全体が積分で表される場合、各要素内の積分の総和として表せる。

全体は部分から構成できるという還元主義のトリックがある。
つまり、総和が表せるように部分を定義する操作だ。

こうした独善的な推論によって、
つまり推測から得た安全性についての複雑でもっともらしい予測に基づき、
本来の構造システムは高価で過剰な物質で強化されるのである。

有限要素法は決定的にシナジーを除外したままだ。
工学的で合法的な記号システムによる富の損失は計り知れない。

シナジーは要素の総和の効果ではない。
要素から推論できない重さのない機能だ。

リダンダンシー(冗長度あるいは安全係数)からの脱出

大きな災害がある毎に、リダンダンシーの確保は
不可欠なテクノロジーとして考察されている。

自然は、酸化作用のないテクノロジーから脱出するための
煙のより少ない煙突を改善するよりも
煙突が不要なテクノロジーを用意しているように、
自然が構造をつねに非固体的に形成しているのは
リダンダンシーを非物質化するためである。

リダンダンシーを理論的に完全に排除できたのは
テンセグリティ原理の発見以後だ。

リダンダンシーの開発コストと構造体の全重量を増加させるテクノロジーは
時代遅れである。

テンセグリティと重力

テンセグリティを圧縮材よりも張力材をより多く使って
構造化するほうが、統合力はシナジー的に飛躍する。
これは、個別の結合力の増加を意味しない。

直径数キロメートルのテンセグリティ球は
ほとんどが張力材である。
だからテンセグリティは太陽光だけで
大気圏に浮遊できるのである。
(NASAは大気圏内を宇宙空間に含めなかった)

自然はすでに重力を断面積がゼロの張力材にデザインしている。

シナジーは相乗効果ではない

産業の巨大化の過程で限界に達するまで、
より多くのモノでより多くのコトを為す段階がある。
その後に、より少ないの材料、エネルギーそして時間で
より効果的な結果をもたらすための質的に変換する段階がやってくる。

つまり、すべてを統合するシナジーによって、
より少い非熟練労働者によって製造する
より小さな産業的アーティファクトで、
より包括的に効果的な道具が生産される段階に飛躍する。

大規模なコングロマリットは、この飛躍から、
不確実性またはリスクを分散し多様化したほうが
より有益でより安全で、より高い社会的信用が得られることを認識した。

こうして冷戦(第三次世界大戦)中に導入されたのは、
地球外の移動手段と輸送機関であり、
不可視の領域に潜ませた大量殺戮兵器の大量生産だった。

コングロマリットの多くはあらゆる国防用兵器の生産を包括できたので、
表向きの事業が財政困難または負債が返済不能に陥った場合でも
政府が保証する〈企業救済措置〉に必要な条件を合法的に満たすことができた。

コングロマリットは、搾取の手段を確実に間接的に
国家の税収入でまかなうことに成功したのである。

われわれの日常品のほとんどは、半世紀前のコングロマリットが開発し、
冷戦によって陳腐化され払い下げられたテクノロジーで生産されている。
(オフィスの無線LANシステムなども
1969年のアポロ宇宙船で使われたテクノロジーである。)

シナジーの理解において、
デザインサイエンスとコングロマリットとの違いはどこにもない。
宇宙の目的を知るメタフィジクスを除いて。

デザインサイエンスの方法論 リダンダンシーの理論的排除について

直径に関わらず、ジオデシック・ドームが経済的にデザインされることは稀である。

安全係数が大きくなればなるほど、リダンダンシーが大きくなるが、
荷重を分散する自由度は小さくなる。
航空機は飛行するために軽量化されなければならないので、
リダンダンシーの理論的排除が積極的に行われている。
実際、建築業界では4倍から倍程度の安全係数を使うのに対して、
航空機業界では、2倍以下の安全係数しか使わない。
この違いは、技術的に無知であればあるほど、
適用する安全係数は大きくなることを証明しているだろう。

ジオデシック構造は荷重を分散しない「柱と梁」を基準とした
連続する圧縮材を前提に分析されている限り、
これまで建てられてきた巨大ジオデシック・ドームは、
航空機とは比較にならない過剰な安全係数で造られている。

間違った前提からジオデシックドームは航空機ほど安全ではなくなっている。

Twonessと『コズモグラフィー』(バックミンスター・フラー著)

『コズモグラフィー』はシナジェティクスとデザインサイエンスの相補的な twonessが描かれている。
インターネット入門講座(6ヶ月間)の教育プログラムはこのtwonessから始まった。

半年後、1期生はデザインサイエンスプロジェクトに
2期生はシナジェティクス翻訳プロジェクトにそれぞれ自発的に従事している。

どちらも互いに遠隔に住む個人の繋がりが、
教師にもキャンパスにも束縛されない現実(real)を生んでいる。

同時に、概念の牢獄の外観がやっと見えてきたのである。

通信テンセグリティ

P2Pはエフェメラリゼーションがもっとも成功した
21世紀の桃源郷である。
http://hibagun.net/tensegrity_skype/tensegrity_skype_jp.html

この不可視の通信テンセグリティの反建築的革命性は
最初の1年間いっさいメディアで報道されなかった。

事実と情報は非対称的(=鏡像的)ではなく、無対称的である。

真実は、電子と陽子のように、
そして、圧縮材と張力材のように
つねに非鏡像的で相補的である。

シナジェティクス入門講座 最終講義

理解が試行錯誤によって到達するならば、
手は思考する器械になり得る。

しかし、新たな概念を生むプライムデザインは、
個別の理解からも手からも到達できない。
古い概念を破壊できるのは、モデル言語の包括的な習得からだけだ。

モデル言語を習得するシナジェティクス入門講座は
予定どおりこの3月末で終了する。

私のシナジェティクス講座を半年受講した学生たちは
以前よりも本を読まなくなるだろう。
あるいはモデリングの経験を読書に求めないだろう。

個々人が包括的な世界像を引き寄せるテクノロジーと段階を経験することで、
シナジェティクスの評論家はあと150年間は失業するはずだ。

道具(tool)について

人間が作る法律、法的な合意、そして国家のあらゆる命令は、道具(tool)ではない。
人間が作る法律と慣習は、テクノロジーではない。
それらは物理的な武力(つまり、政治権力)によって維持されたきた
〈権利〉によって制定された策略にすぎない。
企業は道具ではない。
権力の法的な計略によって慣習的に容認された装置にすぎない。

個人によって実践可能な方法論を開発し、諸物質を結合させて
これまでに存在し得なかった道具とその機能を具現化する
デザインサイエンスは道具に関する
史上初の包括的な科学である。