デザインサイエンス(バックミンスター・フラー)」カテゴリーアーカイブ

疑似デザイン・サイエンス

シナジェティクス研究所のシナジェティクス入門講座では、

バックミンスター・フラーのデザインサイエンスと、
「クルマ、構造物・建築、ウエブ、医療システムなど、世の中に存在する
ありとあらゆるデザインの根底にある原理原則を確立・提案し、
理論的に説明する新たな科学」と定義するデザイン・サイエンスとを
数学的、構造的に、そして哲学的に区別することから始まる。

数千年間も不変であった建築の固体的構造ですら、
テンセグリティ原理の発見によって
はじめて真の統合された「構造」が定義されたことを思い出せば、
「世の中に存在するありとあらゆるデザインの根底にある原理原則」のほとんどは
人間がつくるシステムとデフォルトであり、
先験的に存在する宇宙のデザインとは区別できる。

そして、シナジェティクスは
「世の中に存在するありとあらゆるデザインの根底にある原理原則を確立・提案する」
ことには無関心である。

なぜなら、真の原理が
「世の中に存在するありとあらゆるデザインの根底にある原理原則」から導き出された
事例は存在しないからである。

シナジェティクス理論とデザインサイエンス戦略

これまでの基本的な知識の習得は
理論的なアイデアだけを学ぶことに始終するが
シナジェティクス講座は
基礎理論を学ぶカリキュラムではない。

真の理論は実践に適用して生き残った結果である。
理論を実践で経験しないシナジェティクス原理は存在しない。

同時に、デザインサイエンス講座は応用技術の習得を意味しない。

シナジェティクスなきデザインサイエンスも
デザインサイエンスなきシナジェティクスも
時代遅れである。

このカリキュラムをもしプラグマティズム (Pragmatism) のイギリス経験主義に分類するなら、
読書以上の経験が獲得されていないばかりか
シナジェティクスの思考言語(thinktionary)のユーザではないだろう。

道具というmore with lessing

道具とは、生存には不可欠だが
断続的にしか利用されない機能を
身体から分離して拡張したものであるが、
人類の意図的な道具の開発にmore with less
は滅多に利用されない。

あらゆる道具は、
有機体生命の成長計画に不可欠な機能を担う部分としてのみ
宇宙に存続できるのである。

記憶力と思考力を
コンピュータに分離拡張しながらも
依然人類の家と事務所は
昼と夜にはそれぞれ利用されていない。

人間の住居に支払うコストと金利は
宇宙的生存には不向きである。

家(shelter)を買う習慣は、哺乳類では人間だけだ。

シナジェティクス入門講座 後期講座開始(2010年10月〜)

シナジェティクス研究所が2006年から毎年開講する
シナジェティクス入門講座(前期後期各6ヶ月間)では〜
『コスモグラフィー』(シナジェティクス原論ーバックミンスター・フラー著、梶川泰司訳 白揚社 2007)
で言及されるすべてのシナジェティクス・モデルを再現する。

概念を視覚化できる包括的なシナジェティクスモデルは
自然の数学的座標システムの再発見をもたらすだろう。

同時に、
現在の科学が多くの人間の理解を遠ざけることで
標準化した数学的座標システムを無効にする劇的な場面に遭遇することになるのであるが、
科学と工学そして教育の欠点を発見することなくして
シナジェティクスの包括的な理解には到達し得ないプロセスでもある。

モデル言語の習得はシナジェティクスを理解するための最短コースである。

(前期講座のシナジェティクスモデル群から諸概念の理解を経た講座生は、
後期講座でより実践的なクリティカル・パス方を習得する)

シナジェティクスモデル&縮尺モデル

一般的にスケールモデルとは、複製技術を前提にした場合、
実在する静的または動的な「メカニズム」を、
縮尺に基づいて作製した模型を意味してきた。

しかし、その模型が実在の機能までも備えていることは稀である。
実際、飛行しない航空機のスケールモデルや
走行しない自動車のスケールモデルをみてもわれわれは驚かない。

シナジェティクスモデルはスケールモデルではない。
大きさから独立しているばかりか、
「構造とパターン」がすでに実在する機能を自動的にかつ自律的に形成している。

一方、われわれは,機能を備えた
実在する原子核構造の拡大モデルを
制作することは不可能である。

シナジーは縮尺に基づいて作用しない。

デザインサイエンス的認識

デザインサイエンスは、
認識上のまたは実行段階における誤りを
頻繁に発見できる方法の確立に注目する。

個人の生得的な勇気が、
そして真実の重要性の意識が
自尊心の意識よりも
大きい場合にのみこれらの誤りは認められる。
そうして
ただ、偶然に何が真実なのかを発見する。

この方法論は
従来の工学理論や芸術工学的理論には存在しない。
(そもそもギリシアにおいて、アートとは技術の在り方を問う認識論を含んでいた。)

この計画的偶然(=プリセッション)を
クリティカル・パスに導入することは可能である。

道具の奴隷

有限要素法を使いたいがために
建築家と構造家は複雑な曲面のある高価な建築に挑戦する。
なぜなら、金持ちが喜ぶからだ。
http://aedesign.wordpress.com/author/christopherlawrence2009/

掃除機を使うために
部屋を汚す生活者がいるだろうか。

(この段階ではとうてい有限要素法はテンセグリティの機能を理解していない。)

必要な既製品がない場合にのみ
デザインサイエンスは方法という道具さえデザインする。

デザインサイエンスの包括性

デザインサイエンスには最長の学習過程が要求される。
超専門化過程だからではなく、
包括的な思考と実践に関わる修行期間は
少なくとも12年間である。

その修行に使用されるテキストは
『コスモグラフィー』,『 シナジェティクス』,『クリティカル・パス』
そして、バックミンスター・フラーの特許明細書である。

包括的理解には無数のシナジェティクス・モデリングが不可欠である。
しかし、シナジェティクス・モデルに関するテキストを最初に読むべきではないだろう。
映画のシナリオを読んでからだれも映画を見ないように。

シナジェティクス講座

バックミンスター・フラーには物事をなんでも一般化する悪い癖がある、
と多くの科学者は感じている。
(その場合、多くの科学者は彼ほど原理を発見していないという事実を忘れている。)

シナジェティクスを学ぶと、彼はこの習慣を
自然の原理を発見する方法から学んでいることが分かる。

ただし、その方法はけっして一般化できないが
観察からではなく、モデル言語から
習得できるかもしれない。

道具とは何か

自動車は、人間が陸の軌道を移動するための道具である。
飛行機は、人間が軌道のない空を飛行するための道具である。

このような物理的な道具だけでなく、超物理的な道具も存在する。
情報は出来事の相関性を扱う超物理的な道具である。
数学はパターンを制御するシステムを具体化するための
超物理的な情報のシナジー的な組織化の方法を確立し、
人間を取り巻く物理的環境条件を有利に変える道具である。
数学は超物理的な道具である。

すべてを相互に関係づけるためのあらゆる物理的・超物理的な道具を
包括的に表す唯一の言葉は〈テクノロジー〉である。
すべてのテクノロジーは、一般化された物理法則に支配される。

デザインサイエンスはあらゆる領域のテクノロジーを習得する過程で
より包括的に言葉と道具、そしてそれらの組み合わせを探査し、
ついに無柱、無管、無線、無軌道のテクノロジーを発見し、
人間が軌道のない陸を移動するための道具をデザインした。

それは、テンセグリティシェルター(生活器)と呼ばれている。