テンセグリティ・シェルター」カテゴリーアーカイブ

モバイル・ハードウェア

テンセグリティ構造が
第2次世界大戦後の冷戦構造下で生まれ
弾道弾迎撃ミサイルの開発と高度なモバイル兵器システムとしてのイージス艦と共に
動かぬ重厚な<砦>の歴史が終焉したときに
モバイル・シェルターが量産されていくのは、偶然ではない。

デザインサイエンスでは
<間違った理由で正しい事が行われる>までの期間を懐胎期間としている。

モバイル・テンセグリティシェルターのプロトタイプ制作は
都会の小さなスタジオだけではなく
山間部を移動し停泊するキャンピングカーのなかでさえ可能である。

自動車と家電のすべての加工組立工場が世界中に分散した結果
個人が住みたい場所での仲間とのアセンブル作業しか残されていないのである。

そして、もっとも革命的なことは
プロトタイプにしても、量産型しても
その価格差はますます縮小されているテクノロジーの革命がある。

スタジオの裏庭の方がますます拡張されて遂に国境を越えていく現実の球状世界が
テンセグリティのP2Pネットワークを模倣しはじめたことである。
より重要なサーバーを所有しないネットワークは
権力構造(power structure)からは生み出されなかった。

IP電話、Skypeなどのネットワークに<構造の致命的な破壊>という定義が存在しないのは
テンセグリティがそのアナロジーになるよりも早く
P2Pにおける通信端末がテンセグリティのノード(=つまり、ジョイントレスの頂点)を
フィジカルに模倣したからである。

テンセグリティの現実は
未来よりも近く、つねに抽象的で実際的なのである。

すべての<砦>が圧縮材から構成される歴史が終わるためには
夢想家の建築家のテクノロジーではなく、産業社会での最初の詩人が必要であった。

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ハードウェア

21世紀のどんな工場も移転可能である。
巨大タンカーやジャンボジェットの工場でさえ。

しかし、産業的設備の中で
もっとも排除が困難なハードウェアは
原子力発電所である。

なぜなら、
そのように設計したからである。

土地資本主義の
最後のエネルギーの<砦>として。     」

引用 2011年5月 5日 犬のしっぽブログ から

http://www.two-pictures.net/mtstatic/2011/05/post-1968.html

モバイル・テンセグリティ構造

半球状のテンセグリティ構造では
システム上の様々な問題が発生する。

バックミンスター・フラーと同じ考え方で
テンセグリティシステムを制作すると
その新しい問題は解決できない。

テンセグリティの実用化の関する問題の解決方法は
全天候性のモバイル・テンセグリティ構造に
居住するという現実的要求からしか生まれない。

それはテンセグリティ理論をより純粋にし、
新たな定義を与える機会になるだろう。

 

水深100mでの疑似無重力圏での放散虫のエンジニアリング
フェオダリア2014

定義のヘビーユーザ

テンセグリティ作品の独自性を高めるために
アセンブルをより複雑にし、
その芸術作品の価値を向上させるために
テンセグリティのモジュール化を拒む。

現在のケネス・スネルソンから
テンセグリティ構造を
生存のための構造システムに変換する行為はついに見られなかった。

彼が球状テンセグリティに挑戦しなかったのは
バックミンスター・フラーの創造性と棲み分けしているからだとしたら
彼のテンセグリティに対する見解は実に局所的である。

彼の芸術は様式を模倣したくないだけのように見える。

しかし、テンセグリティの<構造とパターン>は
まだ一般化されていない。
<構造とパターン>は数学そのものである。

ケネス・スネルソンは
圧縮材の不連続の連続に魅せられたまま
美学的行為の無限性を表出しているかぎり、
バックミンスター・フラーによる
テンセグリティの定義のヘビーユーザにすぎないだろう。

その定義よりも前に
動植物のすべての細胞が採用してきた
テンセグリティシステムの包括的な先験性によって
彼の作品を時代遅れにしているのである。

バックミンスター・フラーによる
一般化された球状テンセグリティモデルの発見以後
この半世紀間の自然の観察から分かってきたことは
テンセグリティ原理は
生存のための構造安定化のためのデフォルトなのである。

テンセグリティシステムは
特殊ではなく、水素原子のように
ありふれた宇宙の構造システムなのだ。

デザインサイエンスのための元素群

全天候性のモバイル・テンセグリティシェルターのプロトタイプ制作は
画家が絵を描くための絵の具と筆を買うように
完全な既製品の組合せから可能だった。

いくつかのシナジェティクスの原理的発見を除けば
テンセグリティシェルターを構成する部材と
それらを自宅のガレージで2次加工するすべての工具は
インターネットから調達できるほど
すでに<平均的>に分布していたのだ。

完全な既製品の組合せからなるプロトタイプこそ
少量生産も可能な理想的な量産タイプである。

そのプロトタイプを移動させるときは
モジュールまで分解して折りたたんで
車のトランクで運べるほど<再生的>だ。

宇宙でもっとも豊富な水素元素が
宇宙を形成するための最初の既製品であったように
加速度的にバイオスフィア上に分布する工業化された既製品群こそ
デザインサイエンスの<平均的革命>をより加速している
新たな元素群なのである。

デザインサイエンスプロジェクト2014

この3年間のデザインサイエンスプロジェクトの詳細が
未だ公開できないのは残念だが
公開できるときは完全な構造の機能が実現した時だ。
この完全な機能とは実用段階を意味している。

モバイル・テンセグリティシェルターが存在するのは、
より経済的に生存するためではなく、
幸福になるためである。
——–夜空の星々と共に

今はテンセグリティシェルターが完成するまで
星々のように
自ら燃えなければならない。

<動く生産ライン>———デザインサイエンス序説1

船舶を生産するデザイナーは、各国のドッグで移動しながら生産する最初の生産ラインを発明した。
現代の自動車の生産ラインは、地上に固定されているように見える。
しかし、陸路の流通経路を各部品が流れることによって、
船舶の動く生産ラインのように相対的に<動く生産ライン>を形成してきた。
そして現代のオンデマンドにみられるように、
すべてが移動しながらアセンブルできる陸路、海路、空路による生産ラインに転換されつつある。
流通経路を支配する組織は、衛星ネット上で個々の注文を受けながら、
トラックという動く分散型倉庫から直接販売店に配送するまでの輸送システムを持っている。
これらは、動く生産ラインの変形システムである。
生産も消費も、動く閉じた柔軟な関係、つまり流体地理学的な世界観を急速に形成している。
そして教育と労働だけが、毎日同じ場所への通学と通勤を余儀なくさせられている。
これは21世紀に継続された反流動的で固体的な世界観である。  
<犬のしっぽブログ 梶川泰司 2007年1月29日 から全文引用 >

その後6年間が経過している。

テンセグリティシェルターは
その本質的なより少ないより軽量な構造部材によって
家庭やスタジオから24時間繋がる
動く生産ライン(バックミンスター・フラーの時代にはまだ未発達であった)によって、
その開発力と生産力は
より少ないエネルギーでより加速されている。

球系エアロダイナミクス

都市の建築構造物は
バイオスフィの内陸部や極地に
適応できなかった。

それは、地球人口は70億人となったが
バイオスフィアの海岸線から隔たった
内陸部の都市人口が過密にならなかった理由の一つだろう。

過酷な地理的条件下でも
(たとえば、ブリザードの吹き荒れる南極のような極地にでさえ)
テンセグリティは自律的構造を再現できる。

航空機のような
張力による高度な鋭敏性を備えたテンセグリティこそが
望みの場所に短期間に
モバイル可能な空間を設営できるのである。

より少ない素材からもっとも安全な空間を
繰り返しアセンブルできるのは
全天候タイプのモバイル・テンセグリティの基本性能である。

大地に構造の強度と剛性を依存しないばかりか
構造の基礎部を持たない、
それゆえに
超軽量な構造体の自重をさらに自身の<浮力>で軽減できるのは
テンセグリティ構造だけである。

テンセグリティは
大地に係留された
翼のない浮遊機械であり
そして、スクリューのない推進装置であり
根を生やさない太陽の受光体なのである。

流動する球状大気圏に対して
球系エアロダイナミクスは
外力分散ネットワークによる動的な均衡を
絶えず自動更新している。

角度と振動数について

巨大地震に対抗するために構造物に対して構造安定志向が生まれた。
免震、耐震、制振といった機能は通常の構造物には存在しない。

施工の複雑な「免震」や高価なダンパー装置を付加する「制震」は、
「耐震」と比べると建築構造物の場合はさらに高コストになる。

しかし、免震、耐震、制振であれ
基本的には大地に依存し大地にエネルギーを流し込む構造安定志向は、
実際には恐怖と無秩序の原因となっている。

テンセグリティ構造は本質的に共振するメカニズムをもっている。
テンセグリティは共振によって外力分散機能を形成する自然の構造システムである。
そのためのいっさいの付加的装置を排除してデザインされる。

テンセグリティ構造をデザインすることは
形態のデザインではなく
角度と振動数の調整を意味する。

航空機は高速飛行中に受ける気流と衝突で発生する種々の振動に対して
免震や耐震そして制振のための付加装置が存在しない最初の人工物である。

航空機の機体や翼が固体的ではなく柔軟な強度でデザインされているように
住宅も、地上に一時的に停泊しているより軽量で剛性の高い機体(=動く自律的シェルター)
としてデザインすべきである。

☆図版解説
テンセグリティは穴だらけの内圧のないバルーンである。
もっとも経済的なニューマッチクである。 梶川泰司

Synergetics (Fig. 761.02 Function of a Balloon as a Porous Network.)
R. Buckminster Fuller

リダンダンシー

人間が人間的に生存するための正義と経済的進歩は
必ずしも政治革命の結果ではない。

社会を方向づけるのは、
つねにデザインの革命である。

しかし
アブノックスなモノと情報の増加によって
人間的に生存するための
生活器(シェルター)のデザインが
圧倒的に不足してきたのである。

生存にもっとも必要なデザインが
つねに不足しているからこそ
デザイン革命が社会を方向付ける機会が
非常事態ともに露出したのである。