テンセグリティ・シェルター」カテゴリーアーカイブ

テンセグリティ原理とニューマチック構造

ジオデシック・テンセグリティ構造は、
ある瞬間に偶然に内側から皮膜に向かって衝突し、
皮膜を外側に押す特定の気体分子の振る舞いを、
大円(ジオデシック・ライン)上に位置する不連続な圧縮材に置換した
無柱で中空の皮膜構造体である。
この場合、冗長で過剰な分子群は構造から完全に除去されている。

言い換えれば、リダンダンシーの完全な排除と陳腐化に成功した
最初の構造システムになる。

ジオデシック・テンセグリティ構造を
構成する不連続な圧縮材に対応するパターンにそって、
風船の被膜内面に圧縮材の両端部と結合するポケットを取り付けて、
その硬く曲がりにくい圧縮材の両端をそのポケットに挿入すると、
あたかも気体を充填して内圧をかけたような球形構造を維持できる。

そして、その形状を維持したままその皮膜表面に無数の穴を開けても、
驚くことにこの状態を維持できる。

皮膜に最大の穴の面積をデザインすると、
ジオデシック・テンセグリティ構造の最短の張力材の総計からなる
ジオデシック・ネットワークの編み目になるのである。
(このときに、テンション材の総重量も最軽量にできる。)

これこそが、ジオデシック・テンセグリティ構造が、
最軽量のニューマチック構造にデザインできる原理である。

テンセグリティ・シェルター 「Doing More with Less」

住居は森のようになるべきである。
分解も移動もすべて成長過程に包括している。
それに必要なエネルギーのすべてを、光合成でまかなっている。

もっとも知性的なシステムは、
エコロジーという概念が発見される前に
すでに達成されている。

動く住宅(シェルター)

人間は大地を移動するために足を使う。
だから、人間は根ではなく
足が生えて生まれてくる。

人間は様々な足を発明した。
船には、大地の代わりに海がある。
飛行機には、空がある。
(しかし、大地や海や空を発明したわけではない。)

ところが、
自動車はタイヤがスムースに回転できる道路がなければ、
また、住宅は基礎を打ち立てる大地がなければ、
いまのところ機能しない。

歴史的に住宅は最も生産されてきたが、
大量生産の方法を回避し続けたので
金融資本主義によって不動産として証券化され、
船や飛行機のような大陸間を移動する機能(経済用語では流動性)を得た。

これ以上奪われないためには
住宅自体に、大気圏内を移動し停泊するための
足や浮遊装置が必要である。
(惑星探査船には軟着陸用の足がある。)

物理的に空間を移動するためには、
イデオロギーではなく、
テクノロジーが必要である。

* 参照
動く住宅の未来は、テンセグリティの実用化にかかっている。
2008年、シナジェティクス研究所が独自に開発した
モバイル用テンセグリティ・シェルターに関する +81の編集部によるインタビューが公開された。
http://www.plus81.com/plus/tnf/02/talk2_1.html

自然の隙間

テンセグリティは隙間だらけだ。

その存在は軽くはかなく見えるが、
これほど単純で強靱な美しい有機体はない。
それは人間のデザインではないからだ。
陽子と電子を隔てる距離に接近した最初のモデルだ。

テンセグリティに関するすべての機能は発見されたものだ。
構造の自然はまだ半世紀しか経過していない。

ザ・ノース・フェイスのDO MORE WITH LESS展で
テンセグリティに関する<新しい振動>の機能を
原寸大のプロトタイプで展示する予定である。

その理論に関する講演は
12月2日、午後7時から  定員30名
講義 梶川泰司(シナジェティクス研究所)
詳細は
http://www.goldwin.co.jp/tnf/40th/
場所 スパイラル
http://www.spiral.co.jp/

DO MORE WITH LESS 展によせて

ジオデシック・テンセグリティ構造の理論化とそのモデル
——————DO MORE WITH LESS 展 
2008年11月28日(金)から12月3日(水)

シナジェティクス研究所
梶川泰司(デザインサイエンティスト)

私は、最近もっとも軽量で柔軟な強度のあるテンセグリティシェルターの開発に成功した。
バックミンスター・フラー以後のデザインサイエンスの歴史の中では、
もっとも単純で実用的な初のテンセグリティ構造である。
実用的なテンセグリティとは、人類の住居(シェルター)である。

「分割数を数倍に増やすと、構造全体の寸法における長さの増加に対する相対重量が急速に減少する」。
このバックミンスター・フラーの発見した基本的な原理をテンセグリティ構造に
反映する試みは構造化の極みでもある。
発見されたばかりのコンセプトモデルを
TNFの40周年の記念すべき「Do More with Less」展のために、
こうしてプロトタイプとして発表できたことは、幸運だった。

分割数が大きければ大きいほど、張力材が構造物全体に占める割合が大きくなる。
張力材は、その断面の直径と長さの相対的な比において、長さが無制限である。
さらに炭素繊維の場合、漸進的に複数の繊維に細分化すると、
細くなった繊維の強度が増し、
初期状態で測定した単位断面積あたりの張力性能の数百倍以上にもなる。
構造の軽量化には張力はもっとも効果的に機能する。
この原理の有効性は各張力材だけではなく、
炭素繊維からなる最新のコンポジットを圧縮材にした
テンセグリティ構造にも当てはまるかもしれない可能性に気づいた時、
未だ非公開の段階であった私のプロトタイプのデザインに対して、
東レ株式会社が高価なカーボン材を惜しみなく提供してくれた。

このテンセグリティ・シェルターが世界初のネオ・ジオデシック・テンセグリティ構造の
プロトタイプである理由は、
連続した球状ネットワークの増大に伴い、
空間を囲い込む連続した構造材の相対的な厚さや重量が直径に逆比例して
急速に減少する構造のシナジーを視覚化できたことに尽きる。

「原子はテンセグリティであり、その構造システム全体には〈固体〉などもはや存在しない(RBF)」
にも関わらず、人間の活動の大部分を特徴づけるあらゆる冗長性(リダンダンシー)が、
いまや全人類に自滅をもたらす危機から人類が脱出するのを遅らせてきたが、
このテンセグリティ・シェルターは
リダンダンシーを完全に排除した物質の結合状態を露わにしている。
その機能は、これまでのすべての産業社会を支配する経済理論(収穫逓減の法則)に反しているだろう。

シェルターはこれまで戦地や極地以外では効果的ではなかったが、
宇宙が要求するもっとも単純で高度なシェルターの再生デザイン
(=このシェルターの構造システムは圧縮材も張力材も
宇宙でもっとも豊富な炭素から形成されている)こそは、
21世紀の最大の do more with lessである。

なぜなら家を買わなければならないのは、この惑星では人間だけだからだ。

戦争器械としてのテンセグリティ

第3回の実験的なテンセグリティ・ワークショップを終えた。

私のデザインサイエンティストとしての役割は、
「この惑星〈地球〉での真の建築とは、ミクロ構造からマクロ構造を形成すること、
あるいは見えない構造から見える構造を構築するデザイン・プロセス」(RBF)を
レイマンたちが自発的に理解し、自らの手で作り上げることだ。

原理を理解すると、もっとも効果的な構造が再生される。
シェルターのアセンブルデザインは、包括的な理解の集大成となる。

エネルギーと食料危機に対抗して、
エコロジー的に住むためのシェルターは
戦争器械により接近する。

人力居住機械

炭素繊維を使った複合材の構造とマイラーの皮膜から構成された史上初の
翼長二十九メートルの人力飛行機は二十キログラムの重量しかなかった。
それは1979年の記録だ。

地球温暖化に適応したシェルターを金属でデザインしようが
再生的なプラスティックでデザインしようが、
分解・移動できない固体的住居は時代遅れである。

半永久的に個人が居住できるモバイル用シェルターが、
人間の平均体重よりも軽くできる構造は
原理的にテンセグリティ・ジオデシック構造しか存在しない。

人力飛行機の設計のように、
この人力居住機械はハンドメイドで十分だ。
なぜなら、必要な道具と素材はすべて生産されているからだ。

エデンドーム

森にいて夜の星々は見えない。
しかし、森のそばから
夜空を眺めて眠りにつくことはできる。

砂漠の民の想像力を喚起させるシェルターはデザイン可能だ。
そのシェルターは透明でなければならない。

そして、
このエデンドームはテンセグリティ・ドームでなければならない。

超軽量テンセグリティ・シェルター

予測されたように台風は巨大化している。
風速40mで人間は歩行できないばかりか、
空中に飛ばされてしまう。

時速200キロで走行する自動車は
約風速60mの風の抵抗を受ける。

しかし、風速120mの風でも吹き飛ばされない超軽量シェルターはデザインできる。
この構造にはテンセグリティ・システムのみが採用される。

圧縮材にはつねに圧縮力が、
張力材にはつねに張力がかかるようにデザインすることはテンセグリティの基本だ。
この場合に使用されるテンション材は、
弾性のあるゴム材などではないことは実験で確認できる。