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テンセグリティ島

雲がある場所の下には島がある。
島には植物がある。
植物の上には雲ができる。

クリスマス島はすべて珊瑚礁でできている。
雨が降れば、地下浸透して
淡水は比重が軽いから、
海水の上にレンズ状に浮いている。
クリスマス島のすべての水は浮遊する。

水が浮遊すれば、人間が住める島になる。

テンセグリティ島も空気に比べて
比重が軽いから、
大気中を球状で浮遊することができる。

浮かぶテンセグリティの内部には
オクテットトラスの島(=都市)ができる。
そこには植物が茂り、ふたたび雲ができるだろう。

そして、月にも水がある。

クリスマス島

クリスマス島

シナジェティクスの思考

数学や物理学の難解さに挑戦する科学者はますます増える。

つねに非論理的に発見された原理は、論理的にしか説明できない。
原理が単純で論理的だからだ。

テンセグリティはもっとも単純な原理の一つだ。
しかし、この原理が発見されるまでギリシアの幾何学から25世紀間もかかった理由を
論理的には説明できない。

シナジェティクスも難解なテーマに挑戦するのではなく
新しいテーマを発見するための
もっとも単純な科学的思考をもたらす21世紀のメタフィジックスだ。

シナジェティクスは
「複雑な現象を複雑なまま理解しようとする思考」から
「複雑な現象を単純な原理の複合から理解しようとする思考」への
非線形的単純系サイエンスだ。

このことは1927年からシナジェティクスが発見した原理の履歴からも
論理的に定義される。

テンセグリティ・モデルーー張力への誤謬

宇宙で起こることは、モデルでも起こる。
シナジェティクス・モデルは純粋な統合作用を再現できる。

しかし、
テンセグリティモデルは、細胞のように顕微鏡では発見されなかった。

「見る」ためには、はじめに概念ありきである。
『コズモグラフィー(シナジェティクス原論)』
(白揚社 バックミンスター・フラー著 梶川泰司訳)
は、その入門書である。

テンセグリティモデルが見えなかった人類の歴史には、
明らかに、言語の牢獄化の問題がある。

圧縮(力)が縮むことではないように、
張(力)は、伸びることではない。

動くテンセグリティの再現で、張力材をゴムに置き換えることに
すでに言語の牢獄化が存在する。

振動しない物質は存在しないように
テンセグリティの振動は、統合作用の表れである。

テンセグリティ・シェルター

パイロットになりたがっている人間は
もはや鳥を観察しないように、
美しい商品を作りたがっている人間は
なにもデザインしないだろう。

テンセグリティ・シェルターは美しい商品ではない。
生存のための道具だ。
分解型のバイダルカのように、
世界の沿岸部から内陸に分け入ることができる。

新しい道具には、
あたらしい理論が必要だ。

それゆえに、
テンセグリティ・シェルターのデザインに、
デザインサイエンスとシナジェティクスの
境界線は存在しない。

テンセグリティの衝撃吸収機能

衝撃吸収とは、
衝撃エネルギーを短時間に分散することである。
(衝撃エネルギーを消費することではない。
エネルギーは増えも減りもしないから。)

テンセグリテは、通常は球面状の波状振動によって、
そして、その限界を超えたより大きな外力に対しては、
部分的な自己破壊によって
衝撃のエネルギーを最大限に短時間に分散できる。

柔軟な強度は、半世紀に発見された
衝撃吸収にはもっとも効果的なテクノロジーである。

実験幾何学

エコロジーは科学的概念ではない。
科学という専門分化では
捉えられないほどの包括性を含んでいる。
科学的概念にもっとも最も近い言葉で、
つまり、<シナジー>と言い換えてきた。

神秘といってもよかったが、
共産主義圏と資本主義圏の双方の
錬金術の系譜に属さないアカデミックな科学者たちによって拒まれてきた。

シナジーは有機体生命でなくとも、
合金のように、物質化した結果からのみ、
その予測できない飛躍した機能を比較することができる。

テンセグリティは、
シナジーの飛躍していく生成過程の可視化に成功した
最初の原子核モデルである。

大きさから独立しアナロジーに関与している実験幾何学(=シナジェティクス)は、
実験科学ではなかったので、
いまでもノーベル賞の対象外である。

テンセグリティとモデル言語

テンセグリティを知っていることと実際にテンセグリティを作ることは違う。
テンセグリティを作ったからといってシナジーが理解できる保証はない。

ゴム紐の張力材によるテンセグリティは、
外力分散機能がもっとも劣化する場合である。
テンセグリティの柔軟な強度を、
エラスティックナ張力材から連想することはあまりにも人間的過ぎる。
シナジーはもっとも人間の想像力を超えた作用である。

シナジーを知るには言語の限界がある。
光が波であり粒子(=光量子)であるように。

シナジーが物質を通して物質を超えているように、
モデル言語の習得にはもっとも時間を要する。

構造のエフェメラリゼイション

純粋な構造原理を物質化する方法は、
魔法と見分けがつかない。
その重量は通常の構造物の500分の1以下である。

そして、テンセグリティ構造は
ジオデシック構造の5分の1以下になる。

純粋な構造原理を物質化する方法は、
非物質化に接近するだろう。
その純粋な構造原理は、
見えない物質ではなく物質ではないからだ。

宇宙でもっとも豊富な元素の一つから炭素繊維を紡ぎ、
同じ素材から圧縮材も張力材も安価に生産できる時代にいる。

テンセグリティ構造の死と再生

テンセグリティ構造が現状維持する場合は、つねに振動する。
応力分散や外力分散機能に費やされるエネルギーが
構造自体を強化しているのである。

水分が樹木の無数の木部組織の細い導管を通過することによって、
構造にとって有用な圧縮機能を強化しているように、
樹幹の支持機能を形成する木部繊維だけが機械強度を維持しているのではない。

そして、導管が樹皮のすぐ下の外周にそって密集しているのは、
幹の表面に張力機能を形成するためである。

葉からの毛細管現象がなくなり、細い導管からも水流が止まるとき、
つまり、テンセグリティ構造が静止するときは、構造の死を意味する。

木は枯れると折れやすくなる。
水はすぐれた再生的な張力材なのである。

構造化とは何か2ーーテンセグリティの機能

鳥は飛行するための美しい構造を持っている。
しかし、歩くときは実用的ではない。

美しければ実用的ではないし、
実用的であればきっと美しくない
これまでの専門分化した人工物の構造と違って、
テンセグリティ構造は、人間のデザインしたシステムではない。

原子核構造が理想的かつ経済的であるように、
テンセグリティ構造は、発見された究極の構造システムである。

酸素または水素自体の性質のなかに、水の性質はいっさい存在しない。
それぞれの気体が2対1で化学反応する条件が発見されたにすぎないように、
圧縮材と張力材とのシナジー作用が発生する条件は発見されたが、
なぜ作用するかは神秘に属する。

化合物としての水の性能は、
たとえば固体、液体、気体に変容する以外にも数百種類も発見されている。
現在も未知なる化合物である。

テンセグリティ構造の再現のためのデザイン過程には、
経験的な包括的理解のみによって、
圧縮材と張力材とのシナジー作用を予測する能力とその実験が要求される。

それは、合金を発見する科学者のような方法論に近いだろう。
合金の生成は形態デザインには含まれない。
言い換えれば、人間が物質をデザインできる可能性は
複数の原理間の調和以外、ほとんど存在しないことを理解することになるだろう。