前例のない未来的な構造だと思い込んでも
それが気取った形態と力学の組み合わせからなる
有用性の段階を超えない限り、
そして
テンセグリティ構造の起源が
あの岩石と同じくらい太陽系に属していることを理解しない限り、
テンセグリティ構造は
小高い丘の頂上の広葉樹に囲まれながら
夕日に照らされて点在する岩石のように
風化に耐えた時間を具現化できないだろう。
実際にはあの丘の岩よりも古いものなのだ。
前例のない未来的な構造だと思い込んでも
それが気取った形態と力学の組み合わせからなる
有用性の段階を超えない限り、
そして
テンセグリティ構造の起源が
あの岩石と同じくらい太陽系に属していることを理解しない限り、
テンセグリティ構造は
小高い丘の頂上の広葉樹に囲まれながら
夕日に照らされて点在する岩石のように
風化に耐えた時間を具現化できないだろう。
実際にはあの丘の岩よりも古いものなのだ。
自重があるかぎり
完璧な球面構造といったものは存在しないが
圧縮材が不連続なテンセグリティ構造においては
その固有な動的外力分散システムによって
統計的に完璧な球面構造が形成できる。
この宇宙全体の驚くべき構造があるのではないかと気づくと同時に
外部からだけではなく
まるで内部に住んでいたかのように描けるのが
新しい構造とパターンである。
テンセグリティほど
新しい構造とパターンを内在させているシステムは他には存在しないだろう。
構造をデザインした建築家はいない。
原子核が発見されたときにさえ、
まだ構造は発見されてはいなかった。
自然科学においてさえ
構造の定義は未だ存在していなかったから。
構造の原理は
バックミンスター・フラーによって
1927年に発見されたのである。
構造もまた重力のようにデザインできなかったのである。
巨大地震に対応できる構造システムの機能とは、
耐震、免震、制振システムなどであった。
テンセグリティは、
大地震の大きな振幅と振動に抗して、
アクティブに耐えたり免じるのでもなく
また、人為的なエネルギー吸収機構で
パッシブにそれを制御するのでもない。
それは、外力という振動エネルギーを短時間で
動的に全方向へ分散させると同時に、
変動していく振動とつねに動的に調和する
<自律システム>なのだ。
つまり、
制御のための一切の電気エネルギーから絶縁し
大地の固体性から絶縁した
自律的システムのことである。
従来の耐震、免震、制振システムは
構造に対して付加的であったが
テンセグリティに
耐震、免震、制振装置に関するすべてのハードウエアは存在しない。
テンセグリティ・システムを通過する外部エネルギーは、
このシステムをより統合するように作用するからである。
自然は統合するために、
パッシブでもアクティブでもない
重さのない<見えない機能>をデザインしているのである。
テンセグリティは
人間が空間を利用するために開発された超軽量構造システムではなく
自然における構造の原理である。
梶川泰司
90 struts-tensegrity 1980 copyright
thomas-t-k-zung-buckminster-fuller-sadao-zung
生物学が<動的平衡>の概念を発見するはるか前、
そして1944年にシナジェティクスが
<ベクトル平衡体モデル>を発見する以前の1927年、
既にバックミンスター・フラーは
圧縮材が不連続であるテンセグリティモデルを発見していた。
<動的平衡>の概念は
複数のシナジェティクスモデルに変換されてきた。
シナジェティクスでは
<動的平衡>を形成するすべての作用を
<シナジー>と呼ぶ。
☆Fig. 465.03 Rotation of Four Axes of Vector Equilibrium: Articulation of Eight Triangular Faces.
by SYNERGETICS 1975, RBF
ITテクノロジーがクラウド化する半世紀も前に
テンセグリティ概念はクラウド化していた。
しかも、浮遊物質としてのクラウドだ。
テンセグリティに関して
その学術的研究レベルに期待ができないのは
統合する張力への直観が
海賊の遺伝子に埋もれたままだったからではない。
テンセグリティが体系化されるには
まだ冒険的モデリングが少なすぎる。
航空力学が体系化する以前に
ライト兄弟が実際に飛行実験に成功したように
テンセグリティ原理の発見から生まれるテンセグリティ理論は
シナジェティクス・モデリングと原寸大モデルでの
力学的テストを通じてのみ高度に単純化するだろう。
大学や企業の研究室からは生まれなかったテンセグリティは
バックミンスター・フラーの予測さえ超えた懐胎期間を終えて
いよいよ実用化の段階を迎える。