風のトポロジー Earth Wind Map

非同時的で局所的な風を
外部から同時にみると大きなパターンが見える。

参照 Earth Wind Map  
http://earth.nullschool.net/jp/#current/wind/isobaric/1000hPa/orthographic=-281.60,29.20,481

北半球と南半球のトルク現象(回転軸と2極点において、互いに回転の向きが反転している)は
多頂点体の収縮拡大のパターンに類似している。
(『コズモグラフィー』(バックミンスター・フラー 著、梶川泰司 訳)の<正12面体の対称性の破れ>図解参照)

シナジェティクスのアナロジーは
バイオスフィアの全体の風の流れと方向のダイナミズムに
もっとも接近している。

どこかに風が吹けば
風がまったく吹かない場所がつねに2カ所できる。
その場所こそが極軸上なのである。

梶川泰司

シナジェティクスの師

シナジェティクスは
自ら作成し観察するモデリングから思考するのである。

異なる経験から制作されるモデリングが示す
構造と意味の絶えざる相互作用があるのみである。

そのように、見ることをつねに外部化すること自体がシナジェティクスである。
シナジェティクスは教えられてはいない。

動的なシステムに書き換えられないテキストは存在しない
という経験が師なのである。

クロノファイル

既知なるシナジェティクス・モデリングは
過去の優れたコレクションから再現できる。

ひたすら心を夢中にさせるそれらのコレクションの終わりに
新たなモデル言語が生成されるのではなく
はじめから何も蓄積しない行為こそが
モデリングの原点(デフォルト)である。

他者の経験を完全に複製することは困難である。
たとえ、バックミンスター・フラーのクロノファイルからでさえ。

モデル言語の生成は
精神を既知なるものから虚しくすることから生まれる。

貧困と断絶と多国籍から
ピジン言語が生まれるように。

共鳴について

固体はわれわれの思考形式の延長であり、
世界は固体として複製され、
複製された自己なのだ。

物事の<骨を掴む>ために
<石の上にも3年>じっと静止できる
思考言語が効果的行動を生むと信じているのである。

間違った張力材によるテンセグリティの柔軟性の再現において
その柔軟性を張力材ではなく圧縮材に求めなかった理由こそ
固体的な思考言語の形式なのである。

テンセグリティに
何が起こっているのかを観察できたなら
誰もゴム紐や釣糸などから<真の構造>を再現しないだろう。

テンセグリティは
共鳴以外の方法で外部と相互作用しない。
そして、
共鳴以外の方法で外部から自律しない。

固体など存在しない。
———圧縮材においてさえも。

反固体的構造

引張材には、引張の端部を固定する支点が必須であるが
重力にそのような支点や基礎部は存在しない。
重力の大きさ(重力値)が異なっているだけである。

自転による遠心力が緯度により異なり
地球が完全な球形ではなく、回転楕円体であり
地球の内部構造が一様ではないように
球状テンセグリティ構造においては
すべての圧縮材の圧縮力とすべての張力部材の張力は
一様ではない。

テンセグリティは
大地からの自律性が形成される過程でさえ
つねに振動し外力分散し続けるための複数の頂点を形成する。

つまり、その頂点さえもつねに共振する支点を形成しているのである。

エフェメラリゼーション再考

巨大な飛行船は大地へゆっくりと着陸できる。

直径が数キロメートルのテンセグリティ・ジオデシック球が着陸する時も
浮遊しているタンポポが着地するようにしか見えないだろう。

大きさに対する経済学とエンジニアリングは未だに自由化されていない。
  
エフェメラリゼーションへの非物質化は
シナジェティクスとデザインサイエンスの統合によって
より短命化される。

テンセグリティの存在確率

より重要な部分をけっして形成しないで
付加的なリダンダンシーを排除したテンセグリティは
最高の知性が物質化した基底状態(garnd state)なのである。

それは自然(cosmic integrity)の方法であった。

人間の知性は
<つねに動的に統合された構造>を20世紀に初めて発見したのである。

プラトンの正多面体(solid)の静的な世界観から離脱するために
25世紀も経過しなければならなかった。

その構造は大理石よりも振動するがゆえに、より強度と剛性がある。

人間の生存空間が形成される時
電子軌道が電子の存在しうる空間であるように
その生存空間は圧縮材と張力材との相互作用による最も高い存在確率とみなされる。

反網膜的(anti-retina)

可視的な虹のスペクトルの識別可能な構成色が
色彩を表す言語数に依存するならば、
1677万色1原色あたり8ビット(256階調)以上のデープカラーは
色として網膜で感受できていても
脳では認識できていない。
人類はすでに色以外の情報の領域に達している。

網膜では
肉眼によって画素を認識できないほどの解像度やコントラストよって
可視的な色彩は、より鮮明で深みを感じるように変換される。

しかし、不足した色彩(例えば、墨絵や雪国の風景)が
過剰と同様に豊かさに変換できるのは、ひたすら言語による。

テンセグリティのモデル言語もまた反網膜的である。

テンセグリティの構造とパターンだけでは
その圧縮力と張力の動的な均衡は説明できないからである。

反対称的に統合されたテンセグリティモデルは
美的な色彩を拒み、素材の質感を超越するほどに反網膜的である。

モデル言語は視覚情報以上の<構造と意味>の相互作用領域に達しているのである。

実験装置としてのテンセグリティモデル

生命が自分の細胞を所有することではないように
テンセグリティ原理を理解するには
テンセグリティモデルを所有しないことだ。

テンセグリティを理解することは
テンセグリティモデルを制作するよりもはるかに困難である。

1995年にそれまで不可能とされていた
展開型のテンセグリティの完全なメカニズムを発明し
直径11mのプロトタイプを制作する過程で
100個以上の展開型のテンセグリティモデルを制作し
30種以上の新しい構造とパターンを発見することができた。
(そのプロトタイプの展開プロセスとジョイントのディテールの映像などは
『宇宙エコロジー』美術出版社 2004 P.352 などに記載)

しかし、テンセグリティを現在のように理解することはできなかった。

テンセグリティというもっとも単純な構造部材から構成された構造のシナジーは
まだ完全に言語化されていないのである。
反対称的な構成要素とは、圧縮力と張力の相互作用である。

種々の圧縮力と張力の相互作用を具体的な
実験装置としてのテンセグリティモデルにはまだ発見と発明が混在している。

この相互作用を新たな物理的な実験によって科学的に発見する時、
美的なテンセグリティオブジェは単なる副産物である。

発見的エンジニアリングは、実験者の内部で形成される物質化への過程にある。
美の複製は実験者の外部で形成されるかぎり、物質化の遅延を引き起こすだろう。