概念

発明とは、
まず自分も含む誰かによって
形成された概念がすでにあり、
そこから
誰も達成できなかった機能を
デザインすることである。

発見とは、
すでに目に馴染んだ物や知識に潜んでいる、
誰も気づかなかった関係を
言語化する行為だけではなく、
目に見えない自然の原理をも
視覚化する行為である。

発見が同時に複数の発明をもたらすのは
概念の発見と発明を伴うからである。

発見と発明の目的化には
「はじめに概念ありき」ではなく
はじめに概念の発見と発明ありきなのである。

参照
犬のしっぽ
http://two-pictures.net/mtstatic/
2011年11月7日  発明と発見の違い

用途開発者(Utility Player)

生命を脅かすような緊急事態に対応できる
デザイナーや建築家はほとんどいない。

人々が陸に固定された状態で生活する空間と、
それに収容される道具類を望み
依頼してきたからである。

難民化を余儀なくさせられる
この21世紀の種々の緊急事態には、
いくつものデザイン作業がこなせる
真の包括主義者こそが必要である。

生命を安全に保護するための空間や
移動用のtrimtabを作り出すための、
あるいは
宇宙に潜む新たな機能や原理を発見するための
思考のモデリング用のほとんどの部品は、
すでに既製品の中に存在している。
(たとえば、素粒子物理学にとっての霧箱や水素の泡箱
ーー人間には見えない荷電粒子や
ニュートリノの飛跡を検出するための装置ーーのように)

そして、
その既製品の種類と数は人類の数よりも多い。

既製品の新たな相互関係を発見し、
また、それらを結合して予想外の機能を発見するのは、
クライアントの望む付加的で2次的な形態や色彩の再現を
主目的にしているデザイナーではなく、
包括的なデザインサイエンティストだ。

もっともありふれた既製品から
新たな用途を開発するデザイナーに、
クライアントは不要だ。

Fig. 321.01 Universe as “A Minimum of Two Pictures”: by RBF
Evolution as a transformation of nonsimultaneous events: the behavior of “Universe” can only be shown with a minimum of two pictures. Unity is plural and at minimum two. (Drawings courtesy Mallory Pearce)

イノベーション

「世の中が必要としているものを探せ」
がイノベーションの基本条件だとしたら
それはイノベーションの追随者の思考法である。

70億の人類にとって
食糧やエネルギー、シェルターが不足している状態は
今まで1度も解決されたことはない。

70億の人類が必要としているのは
70億個のスマートフォンではなく、
個人が健康に生存するための
食糧とエネルギー、そして
個人が自律的に思考するための
20億機のシェルターである。

モデル認識論

自然を模倣して新たな構造が発見できるなら
顕微鏡の発明と共に
テンセグリティ構造は発見されていたにちがいない。

テンセグリティ構造を
モデルに置換し純粋に構造化するには
その発明よりも前に
新たな構造原理の発見を待たなければならなかった。

そして、この21世紀においては
テンセグリティ構造を
人類の生存のために実用化するには
バックミンスター・フラーの定義にも依存しない
新たな構造原理が発見されるかもしれない。

テンセグリティ構造は
その定義と共に
自然の形態的模倣からは発見できないように
デザインされているからだ。

テンセグリティ構造は
認識にとっても革命的な存在である。

Fig. 401.00 Tensegrity Tetrahedron with “Me” Ball Suspended at Center of Volume of the Tetrahedron: Note that the six solid compression members are the acceleration vectors trying to escape from Universe at either end, by action and reaction; whereas the ends of each would-be escapee are restrained by three tensors, one long and two short; while the ball at the center is restrained from local torque and twist by three triangulated tensors tangentially affixed from each of the four corners.

by RBF

重力テンセグリティ

Tension as gravity: a tension structure is nature’s fundamental pattern-cohering principle.
by R.B.F

自然には
質の悪い張力材はない。
まずい重力がないように。

太陽系は重力によって
ダイナミックに統合された
テンセグリティシステムである。

しかし、惑星地球では
圧縮材を統合するためには
重力という張力材だけでは不十分だ。

物質のテンセグリティ化には
統合する意志が
張力による統合化よりも
先行している必要がある。

無論、その意志にも
「良い・悪い」はなく、
あるのは
「強い・弱い」でしかない。

振動する球面

テンセグリティは
ギリシア人の考えた球の概念に基づいて
同一球面に内接すると思われているが
中心からその球面までの
すべての半径が同一になる
瞬間は存在しない。

なぜなら、テンセグリティは外力を受けて
つねに振動しているからである。

本質的に振動するテンセグリティは
時間の経過によってはじめて
統計的に非固体的な球面を形成するのである。

球面は同時には存在しない。

解説 梶川泰司

Fig. 770.11 System Turbining in Tensegrity Structures:by RBF

ユニバーサル・デザイン

テンセグリティは万有引力と同じように
ユニバーサルである。
その張力機能には長さの限界がない。

自然は張力を距離を超えて
ユニバーサルにデザインしている。

文化・言語・国籍・性別・年齢の違いを超えて
利用できる製品・情報の人間工学理論から
テンセグリティは生まれなかった。

断面積ゼロの
重力という張力のユニバーサル・デザインは
あまねく太陽系から学ぶことができる。

テンセグリティの概念

圧縮材に張力材を引っかければ、
テンセグリティになるのではなく
圧縮材で張力材を押し拡げれば
テンセグリティになるのである。

魚を捕るための網が
逃げ惑う無数の魚によって
つねに球状に非同時的に
押し広げられるように。

解説 梶川泰司


ninety-strut-geodesic-dome-tensegrity
thomas-zung-buckminster-fuller-sadao-zung.

バックミンスター・フラーの
テンセグリティモデルとその概念スケッチ

Fig. 762.01 Chordal Ricochet Pattern in Stretch Action of a Balloon Net by RBF

21世紀のテンセグリティ

科学的な構造の定義が
バックミンスター・フラーによる
テンセグリティ原理の発見から導き出された以上、

新しいコンポジットから構成される
21世紀の構造は、
盗作であるか革命であるか、
そのいずれかだ。

もしそれが革命の方ならば、
もう1つのテンセグリティ原理が
そこには潜んでいることになる。

Fig. 730.12 Stabilization of Tension in Tensegrity Column

Fig. 730.12 Stabilization of Tension in Tensegrity Column by R.B.F