ある美術雑誌でエッシャー特集を監修する機会を得て、アート&サイエンスからエッシャーの全作品を分類し、特にシナジェティクス的な考察をエッシャー論としてまとめることができた。
ローマでの第1回エッシャー国際会議で発表したエッシャーに対する考察からすでに20年が経過したが、9月のオランダの美術館での取材から、新たなエッシャー論を試行できた。
[版画画廊]のエッシャーの制作目的を直接エルンスト氏のインタビューから聞けたことは、これまでの理解を組み替えるまでの出来事であった。
[版画画廊]はエッシャーが最晩年までもっとも愛着を抱いていた作品であったという理由を知りたかったのであるが、その調査は遂に遠近法の開発にまで拡張されることになった。この新しい遠近法は、科学雑誌に数学論文として掲載予定である。
http://synergetics.jp/publication/index.html
[描く手]を描く手として描けるが、その描かれた手が手自身を描くときには、手は描かれないという自己再帰的パラドックスは不可視な段階に止まっていたが、
[版画画廊]では空白の領域で客体と主体は等価の原理によって融合する構造にまで視覚化された。これほどまでに思考の幾何学に接近した絵画は他に存在しない。
リーマン幾何学空間の格子を分析すれば、4回回転対称性を有していることがわかる。この図版はBT今月号に記載されている。