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誰がテンセグリティ構造システムを発見したか

テンセグリティに関するサイト上で提供される情報に、
テンセグリティ概念とそのモデル化の歴史的事実認識に重要な誤りがあり、
それがこの数年間で常識化し拡大しつつある事態を
これ以上放置すべきではないと感じている。
1981年から2年間にわたってバックミンスター・フラー研究所の
膨大なクロノファイルを閲覧しているときに、私はテンセグリティのオリジナリティ論争に
直接触れた数回に及ぶ往復書簡を見つけた。
また、その関連するすべての書簡のコピーを入手した。

その書簡で、フラーとスネルソンが相互に合意した内容の一部を要約すれば、

1.
1917年、最初のテンセグリティをつくる10年前に、シナジェティクスを創始している。

2.
バックミンスター・フラーは1927年からは、ワイヤー・ホイール状のリムを平行
または同心円状に複合的に配置した段階にあったテンセグリティを、
マストから床を吊ったタワー型多階層構造物〈4D〉とダイマクシオン・ハウスに利用していた。

3.
フラーはケネス・スネルソンに出会う前の21年間、
発見したテンセグリティの概念化を求めて試行錯誤を繰り返していた。

しかし、現在のスネルソンはここまでの合意事でさえ、
合意していないような発言をしている。
「テンセグリティはスネルソンが最初に発見した」という彼自身の主張である。

手紙での合意事項から見れば、この主張の根拠は<死人に口なし>的に捏造されている可能性は大きいと言わざるを得ない。
クロノファイルはこうした事態を想定して継続されたものではないが、時系列的な事実確認こそが、
この種の混乱を解消する効果的で民主主義的な方法である。

テンセグリティのシミュレーションモデルの間違い

http://www.childrenshospital.org/research/Site2029/mainpageS2029P23sublevel2

このシミュレーションはDr.イングバーの細胞テンセグリティの原型モデルをシミュレーションした場合である。
これは、ゴムひもをテンション材にしたテンセグリティモデルにほとんど近似しているように見える。
本質的なテンセグリティモデルの機能を再現しているとはいえない。
そもそもシミュレーションは、現実に行う事が危険を伴う困難か、またはコスト的に不可能ある場合、あるいは種々の選択条件を量産前に検証する場合などで用いられるのであるが、このシミュレーションは特定要素をデフォルメさせているだけである。

テンセグリティモデルは、
テンセグリティが概念的に把握できていない以上、
テンセグリティのシミュレーションモデルをプログラムできるはずもない。 (実際彼らは、ゴムひものテンション材の市販のキットから理論を形成しているので、落下させても、ボールのようにバウンドすることはないだろう。テンセグ リティがテンセグリティを内包する場合のモデルの場合も実際のモデルを制作して比較すれば一目瞭然である。)

言い換えれば、構造としてのテンセグリティのこの種のシミュレーションモデルは、モデル化が不完全なので、現実のテンセグリティモデルを再現できていないのである。
テンセグリティがわれわれの想像力で類推できるほど、シナジーのシナジー乗が超越的であるのではなく、テンセグリティモデルを観察する側の、形態と概念モデルの差異が明確に再現されるのである。

本質的なテンセグリティモデルの劇的な外力の分散機能は簡潔に再現される。密閉された空気をもったテニスボールやサッカーボールのように、落下後に高くバウンドするといった単純で高度な相互作用に変換される。

テンセグリティ構造に関する間違った見解 その1

建築家は構造を扱う。
テンセグリティは構造体である。
したがって、建築家はテンセグリティを構造として公式に発言する機会が増えている。

ある石油会社のサイト(http://www2.cosmo-oil.co.jp/terre/09/01-02.html))に
以下の引用のようなテンセグリティの解説がある。

「シナジーの働きが具体的に目で見られる例としては、テンセグリティという構造システムがあります。
名称は「テンショナル・インテグリティ(張力による統合)」の略で、
圧縮材として働く複数の棒と、張材として働くゴムひもを組み合わせたものです。
棒はそれぞれ触れ合っていないのに、ゴムひもの張力(テンション)によって結びついて、
立体を作ることができる。6本の棒があれば、4つの正三角形からなる正四面体(テトラ)を作ることができます。
このシステムでできた構造体は、正三角形の形としての安定性も加わって、
上から落とされてもびくともしません。」
(下線部はこのサイトの<「宇宙船地球号」という概念を創出した科学者 バックミンスター・フラー>から引用
このS氏の解説には、テンセグリティシステムの説明で基本的な間違いは2カ所ある。
この間違った理解は最近のサイトを見る限り、かなり一般化しつつある誤解である。

1.ゴムひもの張力(テンション)によって結びついている。
2.上から落とされてもびくともしない。

1は、張力について基本的な条件が全く検討されていない。
ゴムひものようなエラスティックな素材からは、テンセグリティ構造を構成できない。
ゴムひものテンセグリティを床に落下させてもほとんどバウンドできないのは、
2点間距離を一定に維持する機能が、損なわれて、圧縮材が互いに接触することになる。
ゴムのテンセグリティモデルは動力学的に安定していない。

同じ理由から、テンセグリティトイ( tensegritoy)は、
90年代のバックミンスター・フラー研究所でも販売されていたが
科学的に間違った素材からデザインされた商品である。
(こうした批判から、本質的なテンセグリティ教材は
現在シナジェティクス研究所が主体となってデザインしている。)

2は、応力分散システムの機能について全く無知である。
テンセグリティは振動する共鳴型の構造である。
(実際、びくともしないのではなく、常にびくびくしている生きたシステムを構成している。)

正しいモデリングから容易に観察できるテンセグリティの真のシナジー効果に関して、
科学的記述を期待したい。
国内以外のこうした建築家の発言を、サイトや出版物から引用して、
このブログを含めた私の今後の出版物などで、あえて彼らの重大な間違いを指摘する理由は、
do more lessの究極の構造システムのであるテンセグリティ構造システムの可能性を
個人の有用性に還元しなければならない情況にいると感じるからである。

テンセグリティの導入は、次世代建築システムの最優先課題ではなく、
個人の生存にとって最優先課題の一つである。
自分の間違いから学ぶことはできるが、他人の繰り返される同じ間違いからも自らの理解を再検討できる。

テンセグリティ

少なくともスネルソンがテンセグリティのオリジンであると言及する研究者は、
バックミンスター・フラーとスネルソンのそれぞれの特許文献を一読もしていない
受け売り発言と見てよいだろう。

たとえば、スネルソンの圧縮材が非連続な柱状テンセグリティ
(現在もっとも知られているテンセグリティ彫刻)は、
バックミンスター・フラーの球状テンセグリティの発見を見てから後に
制作された事実すら知らないに違いない。

非連続な圧縮材のテンセグリティは
スネルソンは発明していない明白な事実こそ確認されなければならない。

そして、テンセグリティに関して未だ
その概念も十分に把握されていないと言わなければならない。
(デザインサイエンスのクリティカル・パス法、
さらにシナジェティクスに至っては他の星の文法のように感じられている。)