年別アーカイブ: 2007年

アインシュタインの操作主義的方法論 2

彼らの操作主義には共通点がある。
〈操作主義的なプロセス〉は〈自明の理〉から思考を絶縁させたことである。
それゆえに、シナジェティクスは自らの孤立と孤高を飛び越えてわれわれを直観的な理解に結びつける。

第6章で紹介されるシナジェティクス・モジュール理論は、アナロジーを超えた素粒子論であるが、
これらのモジュールの発見こそは操作主義的数学を代表する収穫である。
シナジェティクス・モジュールにおける対称的分割から最初の非対称的分割を構成する概念は、
この収穫によってわれわれが分割を規定する経験的操作
または手段と同じであるという前提を見事に証明している。

(残念ながら、第6章では表面積と体積の<シナジー的誤差>を生じさせる
アインシュタイン・モジュールの紹介は省略されている。
新たな大型のシンクロトロン加速器が完成するまで、
アインシュタインを理解したと自負する物理学者たちは、
このEモジュールの存在には無関心を装っている。
エネルギーには形態がないという〈自明の理〉にしたがって。)

フラーの操作主義は、経験主義の成熟さを市民社会に求めなかったが、馬を早く走らせるために、
その鼻先に人参をぶらさげるタイプの実験科学者にとってもふさわしくない野生の思考が潜んでいる。
彼はプラグマティズムのように経験的に、観察という経験から原理を発見できるとは思わなかった。
『コズモグラフィー』で登場するモデル群は、数学的に証明可能な、
しかし美と直観に支えられた新しいメタフィジクス言語だ。
自ら構築した発見のインデックスさえ模倣しないシナジェティクスは、
ついに自然を模倣しなかった。

バックミンスター・フラーがアインシュタインの操作主義的方法論に深く影響されたことこそ、
誰にも似ていない理由である。

アインシュタインの操作主義的方法論 1

『コズモグラフィー』(バックミンスター・フラー著、梶川泰司訳 白揚社2007)は
「アインシュタイン的宇宙の夜明け」から始まる。
第3章では、シナジェティクスの思考の独自性の根源がアインシュタインの操作主義的方法論に
深く影響されていたことが告白されている。
アインシュタインに面会したとき、彼の思考のパターンを分析して驚かせたフラーには、
すでにシナジェティクスの諸原理の発見の経験があった。
量産型のダイマクシオン・カーやダイマクシオン・ハウスをデザインする前に、
アインシュタイン自身が同意した科学哲学的な理論構築、つまり、1934年の予測的な論理に基づいて、
『月への九つの鎖』の出版前の手書き原稿でフラーが試みたことは、
最初の包括的なアインシュタイン論にすでに到達していたのである。

試行錯誤の末、偶然にある思考に到達し、さらにその思考を相対性理論とその方程式にまで
発展させたアインシュタインの思考の過程を分析し解釈した方法論こそは
初期のシナジェティクス原理の一つである。彼は思考の対象よりも思考の方法に注目した。
「従来の科学における視点とアインシュタインの視点(そして結果的に利用した方法論)とのちがいは、
〈制御された条件〉内に隔離して実験をしようと試みていた従来の科学とは対照的に、
実験に付随するあらゆる環境条件と出来事をつねに包括的に考察の対象としていたことにある。」

1947年のブリッジマンの科学的な操作主義(『現代物理学の論理』)よりも早く、
1927年の『4D』からこうした包括的な情報と鋭敏に焦点を合わせた情報の両方に
関心を向ける方法論を徹底化した結果、シナジェティクス諸原理とその相互作用の目録化が生まれた。
その具体的な方法論は、フラーの絶筆となった1983年このシナジェティクス入門書においても、
原理とその発見へのプロセスが豊富な図版とともに記述していくシンタックスに反映されている。

その結果『シナジェティクス1,2』の出版後に発見されたモデルと概念が
『コズモグラフィー』で書き下ろされていることには驚く。
87歳の哲学者は操作主義の可能性に絶えず挑んでいた。

シナジーとは

バックミンスター・フラーが『シナジェティクス』を書いた理由は、
『コズモグラフィー』の第2章 「人間の固有なマインドの発見」から引用できる。

「われわれが〈シナジー〉と呼ぶに至った原理、すなわち、システムのある部分のふるまいをただ個別に考察しても予測できないシステム全体のふるま いが、実験に基づいて証明できることに圧倒されたからである。シナジーは、超専門分化に陥った現代社会に対する反アンチテーゼ定立である。全人類が経験し てきた歴史の重要性を学習する課程において、〈シナジー〉以外に思考を効果的に導く卓越した概念は、これまでもそしてこれからも発見されることはないだろ うと私は感じていた。」

つまり、〈シナジー〉を効果的に導く卓越した教育プログラムを超専門分化に陥った教育に求められないことは明らかである。
もっとも包括的な〈シナジー〉はシナジェティクスの学習にある。
シナジーは、原理的にハイブリッド構造ではないので従来の教育法や教育プログラムと同居はできないことが
私がインターネットと利用した最初の双方向の同時的・非同時的なシナジェティクス講座を開講した歴史的な理由である。

シナジェティクス・モデル

シナジェティクス・モデルを決定するのは、
自然の原理の理解だけではなく、
自分自身をいかに理解しているかということである。

包括的理解は、天球儀の外部から星の配置関係を観察する行為に共通している
観察者の視点の移動を伴う。

かつては神の目と言われたこの操作は
内部と外部の反転操作として理解できるが、
現象の記述には意味的な鏡像対称性がないように感じられるだろう。
このことが、同じ原理を2つの異なった現象として捉えてきたのである。

1944年、シナジェティクスはベクトル平衡体とその回転軸モデルとの相違を発見した。
あらゆる環境条件と出来事を観察する場合の相対性の発見が
バックミンスター・フラーの<操作主義>の独創性を表している。

「従来の科学における視点とアインシュタインの視点(そして結果的に利用した方法論)とのちがいは、
〈制御された条件〉内に隔離して実験をしようと試みていた従来の科学とは対照的に、
実験に付随するあらゆる環境条件と出来事をつねに包括的に考察の対象としていたことにあった。」
『コズモグラフィー』(バックミンスター・フラー著、梶川泰司訳  P.52 白揚社)

デザインサイエンスの可能性

個人だけが群れから離脱する自由が与えられている。
エコロジーは人間のつくり出した経済システムから見れば、
本質的に闘争システムなのだ。
すくなくともテクノロジーはこの離脱を支えるだろう。
エコロジーは宇宙のみが創造した包括的なテクノロジーである。

デザインサイエンスの可能性は
集団的子宮から離脱(=ステップアウト)するテクノロジーでもある。

デザインサイエンスの方法論

自動車をデザインしたとき、馬車用の道しかなかった。
電話を発明したとき、十分な電線をつくる銅が不足していた。
高速道路と電話線のネットワークの構築によって
これらの工業製品は経済的に機能的に完成した。
そして20世紀の後半には無線システムに移行する革命が続いた。

そして住居もまた経済的に機能的に
上下水道とエネルギーネットワークのインフラが要求されてきた。

しかし、月に行くための宇宙船にはこれらの固体的インフラは否定された。

宇宙船の遠隔的なインフラを大気圏内で量産するテクノロジーは完成している。
そのテクノロジーはガイアのように太陽系に依存する。
そのシステムは無線、無管、無柱である。

線と管と柱は、地球温暖化のサバイバルには不要だ。

もっとも安全で経済的な内部と外部をデザインするための諸原理は
すでに発見されている。

シナジェティクス入門講座生募集(第2期生)のお知らせ

シナジェティクス入門講座の第2期生の募集です。
第2次ガイダンスは以下の時間帯で行っています。

入門講座は10月20日のシナジェティクス・キャンプから始まります。


9月29日(土曜日)から30日(日曜日)
午後4時、または午後9時
の時間帯からご希望の時間帯を2通り選んで
黒野 迅<info@synergetics.jp>
のアドレス宛てに
ガイダンスの予約申し込みをしてください。


同時に、
御名前と御住所を明記してください。
電話またはスカイプまたは ichatの中から
御都合のよい連絡方法とアドレスなどを指定してください。


返信メールにて確定した時間と指定して頂いた方法に対応した
シナジェティクス研究所の電話番号またはスカイプ名または ichat名をお知らせ致しますので、
予約時間通りに上記の選択した連絡方法にてご連絡ください。

プログラムなどの詳細はを直接説明いたします。

また、
第2期のシナジェティクス入門講座に使用する主なテキストは
『コズモグラフィー・シナジェティクス原論』(バックミンスター・フラー 著、梶川泰司 訳 白揚社 2007)
http://www.amazon.co.jp /コズモグラフィー―シナジェティクス原論-R-バックミンスター・フラー/dp/4826901356/ref=sr_11_1 /250-7986946-4665019?ie=UTF8&qid=1189905642&sr=11-1

シナジェティクス研究所
黒野 迅
http://synergetics.jp/

シナジェティクスによるプランク定数

プランク定数は科学技術データを管理する委員会によって
その推奨値は変更されてきている。
つまり、定数と言われながら、プランク定数の正体はよく判っていないと言えるだろう。

『コズモグラフィー』は空間充填のモジュール理論から
プランク定数の真の定数化を論証している。

テンセグリティモデルvs球面過剰モデル

多面体の内角の角度の総和は、
面数または頂点数の増加に比例して
無限に増加する。

しかし、平面と多面体の角度のそれぞれの総和の差異は
実際は720度以上でも以下でもない。
そればかりか、平面から720を奪った状態が多面体である。

そして再び多面体の内角の総和に
720度を加えた状態が球面である。

このパラドックスの発生源は
球面過剰にある。

これは古典幾何学の定理ではない。
球面過剰モデルは
シナジェティクスの偉大な発見の一つだ。
(『コズモグラフィー』バックミンスター・フラー著、梶川泰司 訳  p299~p301)

テンセグリティモデルにおける
振動とは、この球面過剰が一定に保存されるための
張力による角度的なサイバネティクスである。

もしも私のこの話が抽象的に聞こえるならば、
単純なモデルをつくる経験から
思考を構築すべきである。

高度に単純なことが視覚化されることはほとんど神秘に近い存在だ。

シナジェティクスの自己教育法

インデックスのない記憶はほとんど取り出せない。
あらゆる死の危険性はインデックスを自動生成する。

他にインデックスを自動生成させる方法として
バックミンスター・フラーは <声に出して思考する>ことを発見した。
どんな場合も予め用意した原稿をいっさい無視すれば、
聞く側も、予め用意された常識が解体されやすくなるのである。

他者性のネットワークの現存在にコネクトする方法は
もっとも単純なサバイバル方法である。
言葉は最初の生き延びるための道具だ。

シナジェティクス入門講座では
講義形式ではなく、シナジェティクス・モデルの制作を中心に
<声に出して思考する>ことによって
体系的な思考の幾何学を習得することにある。

また
シナジェティクス入門講座でのシナジェティクス・キャンプ(ワークショップ)は
通常のワークショップ形式の体験学習方法ではなく、
科学的な定理を装って刷り込まれた非物質的で固体的な思考回路を
自ら排除することにある。