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DO MORE WITH LESS 展によせて

ジオデシック・テンセグリティ構造の理論化とそのモデル
——————DO MORE WITH LESS 展 
2008年11月28日(金)から12月3日(水)

シナジェティクス研究所
梶川泰司(デザインサイエンティスト)

私は、最近もっとも軽量で柔軟な強度のあるテンセグリティシェルターの開発に成功した。
バックミンスター・フラー以後のデザインサイエンスの歴史の中では、
もっとも単純で実用的な初のテンセグリティ構造である。
実用的なテンセグリティとは、人類の住居(シェルター)である。

「分割数を数倍に増やすと、構造全体の寸法における長さの増加に対する相対重量が急速に減少する」。
このバックミンスター・フラーの発見した基本的な原理をテンセグリティ構造に
反映する試みは構造化の極みでもある。
発見されたばかりのコンセプトモデルを
TNFの40周年の記念すべき「Do More with Less」展のために、
こうしてプロトタイプとして発表できたことは、幸運だった。

分割数が大きければ大きいほど、張力材が構造物全体に占める割合が大きくなる。
張力材は、その断面の直径と長さの相対的な比において、長さが無制限である。
さらに炭素繊維の場合、漸進的に複数の繊維に細分化すると、
細くなった繊維の強度が増し、
初期状態で測定した単位断面積あたりの張力性能の数百倍以上にもなる。
構造の軽量化には張力はもっとも効果的に機能する。
この原理の有効性は各張力材だけではなく、
炭素繊維からなる最新のコンポジットを圧縮材にした
テンセグリティ構造にも当てはまるかもしれない可能性に気づいた時、
未だ非公開の段階であった私のプロトタイプのデザインに対して、
東レ株式会社が高価なカーボン材を惜しみなく提供してくれた。

このテンセグリティ・シェルターが世界初のネオ・ジオデシック・テンセグリティ構造の
プロトタイプである理由は、
連続した球状ネットワークの増大に伴い、
空間を囲い込む連続した構造材の相対的な厚さや重量が直径に逆比例して
急速に減少する構造のシナジーを視覚化できたことに尽きる。

「原子はテンセグリティであり、その構造システム全体には〈固体〉などもはや存在しない(RBF)」
にも関わらず、人間の活動の大部分を特徴づけるあらゆる冗長性(リダンダンシー)が、
いまや全人類に自滅をもたらす危機から人類が脱出するのを遅らせてきたが、
このテンセグリティ・シェルターは
リダンダンシーを完全に排除した物質の結合状態を露わにしている。
その機能は、これまでのすべての産業社会を支配する経済理論(収穫逓減の法則)に反しているだろう。

シェルターはこれまで戦地や極地以外では効果的ではなかったが、
宇宙が要求するもっとも単純で高度なシェルターの再生デザイン
(=このシェルターの構造システムは圧縮材も張力材も
宇宙でもっとも豊富な炭素から形成されている)こそは、
21世紀の最大の do more with lessである。

なぜなら家を買わなければならないのは、この惑星では人間だけだからだ。