月別アーカイブ: 2009年11月

シナジェティクスの思考

数学や物理学の難解さに挑戦する科学者はますます増える。

つねに非論理的に発見された原理は、論理的にしか説明できない。
原理が単純で論理的だからだ。

テンセグリティはもっとも単純な原理の一つだ。
しかし、この原理が発見されるまでギリシアの幾何学から25世紀間もかかった理由を
論理的には説明できない。

シナジェティクスも難解なテーマに挑戦するのではなく
新しいテーマを発見するための
もっとも単純な科学的思考をもたらす21世紀のメタフィジックスだ。

シナジェティクスは
「複雑な現象を複雑なまま理解しようとする思考」から
「複雑な現象を単純な原理の複合から理解しようとする思考」への
非線形的単純系サイエンスだ。

このことは1927年からシナジェティクスが発見した原理の履歴からも
論理的に定義される。

テンセグリティ・モデルーー張力への誤謬

宇宙で起こることは、モデルでも起こる。
シナジェティクス・モデルは純粋な統合作用を再現できる。

しかし、
テンセグリティモデルは、細胞のように顕微鏡では発見されなかった。

「見る」ためには、はじめに概念ありきである。
『コズモグラフィー(シナジェティクス原論)』
(白揚社 バックミンスター・フラー著 梶川泰司訳)
は、その入門書である。

テンセグリティモデルが見えなかった人類の歴史には、
明らかに、言語の牢獄化の問題がある。

圧縮(力)が縮むことではないように、
張(力)は、伸びることではない。

動くテンセグリティの再現で、張力材をゴムに置き換えることに
すでに言語の牢獄化が存在する。

振動しない物質は存在しないように
テンセグリティの振動は、統合作用の表れである。

シナジェティクスの方法

賢明なデザイナーは、
自然を模倣してきたが、
自然は自らの複製のためにデザイナーを募集しない。

デザインは形態ではない。
デザインは色彩ではない。
デザインは、先験的なデザインを発見する方法だ。

重さのない富は不可視だから。
そして、
発見する方法よりも富の方がつねに多い

テンセグリティ・シェルター

パイロットになりたがっている人間は
もはや鳥を観察しないように、
美しい商品を作りたがっている人間は
なにもデザインしないだろう。

テンセグリティ・シェルターは美しい商品ではない。
生存のための道具だ。
分解型のバイダルカのように、
世界の沿岸部から内陸に分け入ることができる。

新しい道具には、
あたらしい理論が必要だ。

それゆえに、
テンセグリティ・シェルターのデザインに、
デザインサイエンスとシナジェティクスの
境界線は存在しない。

デザインサイエンスとは何か

デザインサイエンスは、
「デザインという人間の創造的行為を理論的に説明する」ような
疑似科学性を装った自惚れたアブノックスではない。

「複数の原理を相互に調整し秩序づける行為を私はデザインと呼ぶ」 RBF 1975

自然のデザインの超越性を学ぶメタフィジックスから
生まれたデザインサイエンスは、
他の有機体生命を犠牲にすることなく、
シントロピックに保護する「可能な構造」に
変換するための絶えざる原理の発見と、
より少ない物質と時間とエネルギーによって
具現化するためのテクノロジーの統合を目指している。

シナジェティクスモデルは、
すべて「可能な構造」に変換された原理群である。
「可能な構造」こそ、もっとも抽象化された物質だ。
92種の有限な元素のように。

新たなシナジェティクス原理が発見されない
デザインサイエンスは存在しない。

デザインサイエンスの先見性と定義は、
1927年に始まるエフェメラリゼーションによって、
より加速度的に確認されている。

☆参照
『クリティカル・パス』バックミンスター・フラー著 梶川泰司 訳
(白揚社 2007)第6章 ワールドゲーム

『宇宙エコロジー  バックミンスター・フラーの直観と美 』
バックミンスター・フラー+梶川泰司 著(美術出版社 2004)

遠近法を破壊せよと言った

体験可能な仮想空間の構築を目的とした現代のバーチャル・リアリティは、
可能性を前提にしている。
1950年代のM.C.エッシャー芸術のテーマである「非現実」は、
不可能性に根ざしている。
エッシャーの不可能性をテーマにした作品群は、
すべて体験不可能な空間の構築をめざしていた。
しかし、人工的な現実感の構築にも、
エッシャーの「非現実」的な不可能性の構築にも遠近法が関与している。

同時に、エッシャーの遠近法は
従来の遠近法が生み出すリアリティを利用して
遠近法は生得的なものではなく、
システムへ順応するための学習によって
形成されることを作品によって証明している。

古代ギリシアの曲面遠近法から
「視覚のピラミッドの切断面」の透明な窓から透かして
対象物を見るという平面遠近法の原理を発見したルネッサンス期を経て、
紛れもなく史上3回目の遠近法の変革時に属しているのである。
遠近法がもっぱら宗教芸術により
新しい幻想的な領域を構築する自然な視空間を求めた歴史からみれば、
この暗黒時代からの夜明けは
エッシャーが生涯無神論者であったことに関係している。

エッシャーの遠近法はだまし絵のための技法ではない。
順応システムを強化するための
遠近法を破壊せよと言っているのである。

この意味論的な解析は、
シナジェティクスの全方位的な幾何学的思考によってのみ明確にされるだろう。
つまり、
2次元的な平面に3次元的なリアリティを生み出す遠近法は
特殊で過渡期的にしか存在しないのである。

そして、この鏡像反転による遠近法の破壊方法
(参照 超遠近法で解くエッシャーの秘密」 アニメーション)に
エッシャーは全く気づいていなかった。

エッシャーは鏡像反転による遠近法(=超遠近法の発見–操作的な軸回転遠近法)
とは別の方法をアーティスト・サイエンティストとして
直観的にかつ経験的に構築したことは、
それらは、現存するスケッチや習作などの時系列的履歴から証明可能である。

http://www.nikkei-science.com/page/magazine/0701/escher.html
http://synergetics.jp/gallery/index.html

☆参照
「超遠近法で解くエッシャーの秘密」 アニメーション公開
http://synergetics.jp/escher/index.html

シナジェティクス・モジュール理論

小さいなことの積み重ねで予想外のことが起きるのは、
世界が有限な最小限のモジュールで形成可能だからだ。

小さなこととは、例えば、原子核を構成する核子である。
ただし、積み重ねる方法は物質ではない。

すべての核子はこれまで、球状粒子というアナロジーに支えられてきたが、
エネルギーに形態は存在しないという科学的な刷り込みによって、
だれもその形態を見た人はいなかったのである。

シナジェティクス・モジュールは、
バックミンスター・フラーの量子モジュールの発見から
現存するメタフィジックスを樹立してきた。
もはや科学的アナロジーを超えたのである。
類似に基づいて適用する認知過程はリアリティにとっては二次的である。

シナジェティクスは、最新のモジュール理論でもう一つの現実を再現する。
リアリティの根源の一つは、
シナジェティクス・モジュール理論によって書き換えられる。

巨大な素粒子の加速装置ではなく、PCが置ける机上があれば、
この理論の確認には十分な領域である。

インターネットによる包括的なシナジェティクス講座(6ヶ月間)は
2010年から開講予定である。

シナジー原理を視覚的に確認する作業は、
科学理論の理解のなかでもっとも重要な経験の一つになるだろう。

参照文献
「成長する正20面体」梶川泰司 1990
日経サイエンス(サイエンティフィックアメリカン日本版)
『コスモグラフィー(シナジェティクス原論)』バックミンスター・フラー 白揚社 2007