実験装置としてのテンセグリティモデル

生命が自分の細胞を所有することではないように
テンセグリティ原理を理解するには
テンセグリティモデルを所有しないことだ。

テンセグリティを理解することは
テンセグリティモデルを制作するよりもはるかに困難である。

1995年にそれまで不可能とされていた
展開型のテンセグリティの完全なメカニズムを発明し
直径11mのプロトタイプを制作する過程で
100個以上の展開型のテンセグリティモデルを制作し
30種以上の新しい構造とパターンを発見することができた。
(そのプロトタイプの展開プロセスとジョイントのディテールの映像などは
『宇宙エコロジー』美術出版社 2004 P.352 などに記載)

しかし、テンセグリティを現在のように理解することはできなかった。

テンセグリティというもっとも単純な構造部材から構成された構造のシナジーは
まだ完全に言語化されていないのである。
反対称的な構成要素とは、圧縮力と張力の相互作用である。

種々の圧縮力と張力の相互作用を具体的な
実験装置としてのテンセグリティモデルにはまだ発見と発明が混在している。

この相互作用を新たな物理的な実験によって科学的に発見する時、
美的なテンセグリティオブジェは単なる副産物である。

発見的エンジニアリングは、実験者の内部で形成される物質化への過程にある。
美の複製は実験者の外部で形成されるかぎり、物質化の遅延を引き起こすだろう。