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シナジェティクス入門講座

シナジェティクスを理解するには学校(建物と土地)は不要だ。
シナジェティクスはすばらしい自己教育の宇宙だと思う。
われわれは生まれながらに、会社がなくても仕事ができるように、学校がなくても学習はできるテクノロジーを所有している。
しかも、現在のわれわれは、必要なすべての既製品のハードウェアのパーツと、バックミンスター・フラーが自ら書き下ろしたシナジェティクス入門書『コズモグラフィ』を手にしている。
唯一欠けているのは、売買も所有もできない統合するためのノウホワイだけだ。
包括的な学習過程には個性の美しさがある。
そう感じられるとき、すべての人はクリエイティブな才能に溢れている。

今春から2007年度のシナジェティクス入門講座を開始することになった。
スカイプまたは isightを使用するインターネット双方向映像による日本で最初の包括的なシナジェティクスおよびデザインサイエンス講座である。この4月には白揚社から『コズモグラフィ』の翻訳がら出版される予定である。
この6ヶ月で12回連続のこの講座ではこの『コズモグラフィ』をテキストにする。

誰がテンセグリティ構造システムを発見したか

テンセグリティに関するサイト上で提供される情報に、
テンセグリティ概念とそのモデル化の歴史的事実認識に重要な誤りがあり、
それがこの数年間で常識化し拡大しつつある事態を
これ以上放置すべきではないと感じている。
1981年から2年間にわたってバックミンスター・フラー研究所の
膨大なクロノファイルを閲覧しているときに、私はテンセグリティのオリジナリティ論争に
直接触れた数回に及ぶ往復書簡を見つけた。
また、その関連するすべての書簡のコピーを入手した。

その書簡で、フラーとスネルソンが相互に合意した内容の一部を要約すれば、

1.
1917年、最初のテンセグリティをつくる10年前に、シナジェティクスを創始している。

2.
バックミンスター・フラーは1927年からは、ワイヤー・ホイール状のリムを平行
または同心円状に複合的に配置した段階にあったテンセグリティを、
マストから床を吊ったタワー型多階層構造物〈4D〉とダイマクシオン・ハウスに利用していた。

3.
フラーはケネス・スネルソンに出会う前の21年間、
発見したテンセグリティの概念化を求めて試行錯誤を繰り返していた。

しかし、現在のスネルソンはここまでの合意事でさえ、
合意していないような発言をしている。
「テンセグリティはスネルソンが最初に発見した」という彼自身の主張である。

手紙での合意事項から見れば、この主張の根拠は<死人に口なし>的に捏造されている可能性は大きいと言わざるを得ない。
クロノファイルはこうした事態を想定して継続されたものではないが、時系列的な事実確認こそが、
この種の混乱を解消する効果的で民主主義的な方法である。

テンセグリティのシミュレーションモデルの間違い

http://www.childrenshospital.org/research/Site2029/mainpageS2029P23sublevel2

このシミュレーションはDr.イングバーの細胞テンセグリティの原型モデルをシミュレーションした場合である。
これは、ゴムひもをテンション材にしたテンセグリティモデルにほとんど近似しているように見える。
本質的なテンセグリティモデルの機能を再現しているとはいえない。
そもそもシミュレーションは、現実に行う事が危険を伴う困難か、またはコスト的に不可能ある場合、あるいは種々の選択条件を量産前に検証する場合などで用いられるのであるが、このシミュレーションは特定要素をデフォルメさせているだけである。

テンセグリティモデルは、
テンセグリティが概念的に把握できていない以上、
テンセグリティのシミュレーションモデルをプログラムできるはずもない。 (実際彼らは、ゴムひものテンション材の市販のキットから理論を形成しているので、落下させても、ボールのようにバウンドすることはないだろう。テンセグ リティがテンセグリティを内包する場合のモデルの場合も実際のモデルを制作して比較すれば一目瞭然である。)

言い換えれば、構造としてのテンセグリティのこの種のシミュレーションモデルは、モデル化が不完全なので、現実のテンセグリティモデルを再現できていないのである。
テンセグリティがわれわれの想像力で類推できるほど、シナジーのシナジー乗が超越的であるのではなく、テンセグリティモデルを観察する側の、形態と概念モデルの差異が明確に再現されるのである。

本質的なテンセグリティモデルの劇的な外力の分散機能は簡潔に再現される。密閉された空気をもったテニスボールやサッカーボールのように、落下後に高くバウンドするといった単純で高度な相互作用に変換される。

テンセグリティ構造に関する間違った見解 その1

建築家は構造を扱う。
テンセグリティは構造体である。
したがって、建築家はテンセグリティを構造として公式に発言する機会が増えている。

ある石油会社のサイト(http://www2.cosmo-oil.co.jp/terre/09/01-02.html))に
以下の引用のようなテンセグリティの解説がある。

「シナジーの働きが具体的に目で見られる例としては、テンセグリティという構造システムがあります。
名称は「テンショナル・インテグリティ(張力による統合)」の略で、
圧縮材として働く複数の棒と、張材として働くゴムひもを組み合わせたものです。
棒はそれぞれ触れ合っていないのに、ゴムひもの張力(テンション)によって結びついて、
立体を作ることができる。6本の棒があれば、4つの正三角形からなる正四面体(テトラ)を作ることができます。
このシステムでできた構造体は、正三角形の形としての安定性も加わって、
上から落とされてもびくともしません。」
(下線部はこのサイトの<「宇宙船地球号」という概念を創出した科学者 バックミンスター・フラー>から引用
このS氏の解説には、テンセグリティシステムの説明で基本的な間違いは2カ所ある。
この間違った理解は最近のサイトを見る限り、かなり一般化しつつある誤解である。

1.ゴムひもの張力(テンション)によって結びついている。
2.上から落とされてもびくともしない。

1は、張力について基本的な条件が全く検討されていない。
ゴムひものようなエラスティックな素材からは、テンセグリティ構造を構成できない。
ゴムひものテンセグリティを床に落下させてもほとんどバウンドできないのは、
2点間距離を一定に維持する機能が、損なわれて、圧縮材が互いに接触することになる。
ゴムのテンセグリティモデルは動力学的に安定していない。

同じ理由から、テンセグリティトイ( tensegritoy)は、
90年代のバックミンスター・フラー研究所でも販売されていたが
科学的に間違った素材からデザインされた商品である。
(こうした批判から、本質的なテンセグリティ教材は
現在シナジェティクス研究所が主体となってデザインしている。)

2は、応力分散システムの機能について全く無知である。
テンセグリティは振動する共鳴型の構造である。
(実際、びくともしないのではなく、常にびくびくしている生きたシステムを構成している。)

正しいモデリングから容易に観察できるテンセグリティの真のシナジー効果に関して、
科学的記述を期待したい。
国内以外のこうした建築家の発言を、サイトや出版物から引用して、
このブログを含めた私の今後の出版物などで、あえて彼らの重大な間違いを指摘する理由は、
do more lessの究極の構造システムのであるテンセグリティ構造システムの可能性を
個人の有用性に還元しなければならない情況にいると感じるからである。

テンセグリティの導入は、次世代建築システムの最優先課題ではなく、
個人の生存にとって最優先課題の一つである。
自分の間違いから学ぶことはできるが、他人の繰り返される同じ間違いからも自らの理解を再検討できる。

テンセグリティ

少なくともスネルソンがテンセグリティのオリジンであると言及する研究者は、
バックミンスター・フラーとスネルソンのそれぞれの特許文献を一読もしていない
受け売り発言と見てよいだろう。

たとえば、スネルソンの圧縮材が非連続な柱状テンセグリティ
(現在もっとも知られているテンセグリティ彫刻)は、
バックミンスター・フラーの球状テンセグリティの発見を見てから後に
制作された事実すら知らないに違いない。

非連続な圧縮材のテンセグリティは
スネルソンは発明していない明白な事実こそ確認されなければならない。

そして、テンセグリティに関して未だ
その概念も十分に把握されていないと言わなければならない。
(デザインサイエンスのクリティカル・パス法、
さらにシナジェティクスに至っては他の星の文法のように感じられている。)

ノウハウ (know how)からノウホワイ(know why)へ

Cosmic Integrityを科学的にも証明できるとするのが
シナジェティクスであるが、私は、シナジェティクスを学ぶ前に
数学が深く関与するはずだと考えられたのが一番リアリティがあったから、
バックミンスター・フラーと研究する場を共有できた。
しかし、そのリアリティをさらに具体的な形にするには当時の私には
数学的知識があまりにも不足していた。

だれでも現実を肯定して、考えることを考え始めざるを得ないと考えている。
与えられたすべてのデフォルトを受容する態度は
royal(王権)のデフォルトを排除する機会を失ってしまうだろう。
リアリティ(reality)は、 royal(王権)の名残りに今なお閉じられているからだ。

分断された異なった自己が統合されるには、
局所的な個人のそれぞれの挑戦と失敗が必要だ。

ノウワット(know what=目的意識)ばかりでは、ノウハウも発見も生まれない。
目的意識は簡単に捏造できる。
ノウハウ( know how=技術知識)ばかりでは、何も発見されない。
技術知識は独占されやすい。
ノウホワイ(know why=理由・動機を知っていること)には、国家や大企業、教育組織は無関心である。

個人は、ノウホワイを生得的デフォルトから自ら発見できる。

同時に、ノウホワイからノウハウとノウワットを分断する境界線を消去できる重要なオペレーションが生まれるはずである。

know whyは教育不可能であるという理由から、教育課程では完全に除外されているが、私は、バックミンスター・フラーからknow whyについてもっとも対話できた。
バックミンスター・フラーは、知識よりも概念を優先していたからである。
概念デザイン( prime design)は共有することができた。

偉大な師は、know whyをデザインサイエンスとシナジェティクスに リンクしたまま、去ったのだ。
(友人のシナジェティクス研究者ロバート・グレイ(Robert Grey)が立ち上げたサイトで、バックミンスター・フラーのシナジェティクスの原書のテキストと図版からいつでも自由に学ぶことができる。)
http://www.rwgrayprojects.com/synergetics/synergetics.html
このリンクを理解するには学校(建物)と教師は不要だ。
100ドルパソコンと辞書でモバイルするときが来たのである。

2006/11/27  シナジェティクス研究所 梶川泰司

モデル言語

エッシャーの正則分割をエレメントの外形線の変容だけだ
と考えている人が多いのは、見える形にのみに集中するからだ。
シナジェティクスを学習すれば、構造とパターンが最初に見えるようになる。

形ではなく、言語によって脳内ネットワークの構造とパターン
が構築され変容されてゆく。

エッシャーは版画家であるが、実に多くのモデルを制作している。
このモデルとモデル言語は同一ではない。

デザインサイエンス

私にとって、デザインサイエンスに関われば関わるほど、
職業とはかけ離れるという事態を受け入れたのは、それほど昔ではない。
その時に、デザインサイエンスには、
未解決な膨大な仕事があるという認識に基づいた計画が生まれた。
それまでのように、論文発表する必要がないという試練も必要だった。

この10年間、デザインサイエンスは
バックミンスター・フラーの時代には起こりえなかった、
個人が入手し実践できるテクノロジーを理解し
統合することによって変化する現実を
どのようにして段階的に獲得できるかという
自己教育の問題に接近している。

テンセグリティ構造とパターン

知的爆発は、教育投資に比例するという前提で、通常の教育組織は運営されている。
彼らのビジネスは、常に「自然」が生成する内的プログラムを隠蔽することである。
しかし、学校が存在しなくても知的爆発時期は存在するのである。

たとえば、この知的爆発時期の子供は、テンセグリティ構造とパターンの完全性を予備知識なく瞬時に理解できる。これは神秘ではないだろうか。ーーーー貧感(ビンカン)からの脱出には早期教育ほど効果的なものはない。

エッシャーのメタフィジクス

ある美術雑誌でエッシャー特集を監修する機会を得て、アート&サイエンスからエッシャーの全作品を分類し、特にシナジェティクス的な考察をエッシャー論としてまとめることができた。
ローマでの第1回エッシャー国際会議で発表したエッシャーに対する考察からすでに20年が経過したが、9月のオランダの美術館での取材から、新たなエッシャー論を試行できた。

[版画画廊]のエッシャーの制作目的を直接エルンスト氏のインタビューから聞けたことは、これまでの理解を組み替えるまでの出来事であった。

[版画画廊]はエッシャーが最晩年までもっとも愛着を抱いていた作品であったという理由を知りたかったのであるが、その調査は遂に遠近法の開発にまで拡張されることになった。この新しい遠近法は、科学雑誌に数学論文として掲載予定である。

http://synergetics.jp/publication/index.html

http://www.mcescher.com/

Print Gallery 1956 リトグラフ

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[描く手]を描く手として描けるが、その描かれた手が手自身を描くときには、手は描かれないという自己再帰的パラドックスは不可視な段階に止まっていたが、
[版画画廊]では空白の領域で客体と主体は等価の原理によって融合する構造にまで視覚化された。これほどまでに思考の幾何学に接近した絵画は他に存在しない。
リーマン幾何学空間の格子を分析すれば、4回回転対称性を有していることがわかる。この図版はBT今月号に記載されている。