発明家は、テクノロジーの〈不可視〉の世界で、機能的性能の一定の増加量を達成するために投入される素材の一単位の体積または重量、単位エネルギー、そし て労働および生産システムの維持管理に要する単位時間に対して遂行される仕事の効率に関して、絶えずその量と質を高めていく。
バックミンスター・フラーはこの複雑な過程を漸進的短命化(「エフェメラリゼーション」と呼んだ。
しかし、99%の発明家がこの漸進的短命化ではなく、グランチ企業のアブノックスな収益のために発明を現金化する知的奴隷に甘んじた結果、テクノロジーは地球システムの漸進的自己破壊化に加担し、エントロピーは加速するばかりだ。
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盗まれたノウハウ
「抽象的な〈存在〉である有限責任の企業には、その不可視の全体が国境を越えて移動するときパスポートは要らない。
第二次世界大戦後まもなく、アメリカで最も大きな数百の企業は超国家企業となり、アメリカの産業として誕生していたこれらの企業に対する不可視の法的な支配力をすべての〈ノウハウ〉と共にアメリカ国外へ持ち出した。
このノウハウはもともと、当初はアメリカ国防総省やマンハッタン計画または宇宙計画だけのために開発される基本的なテクノロジーへの出資を、戦時 に備える政府が負担したことで、アメリカ国民が初期投資をしたのだが、政府の(つまりわれわれの出費で戦時に獲得されたこのノウハウは後に〈平時〉の〈産 業効率〉のために私企業に無料で委譲された。」バックミンスター・フラー『グランチの起源』近刊 (抄訳 梶川泰司+黒野迅)
第二次世界大戦後の世界中の庶民が月々に支払う基本料のほとんどはこの過去に開発され持ち出されたノウハウだ。超国家企業の法律家資本主義者たちは歴史的無料化を防止するためのファイヤーウォールを、グローバリゼーションと呼んでいる。
デザインサイエンス
発明にライセンスは不要だ。
だからといって、
発明家がメタフィジクスを理解しているとは限らない。
発明は物質的にのみ達成できるが、
原理の発見はつねに超物質的である。
この違いは、発明者の数よりも原理の発見者が
つねに少ない理由かもしれない。
物質と超物質の統合のノウハウを扱う
実践的なデザインサイエンスでは
発見と発明は表裏一体である。
テンセグリティ・ジオデシック構造
私は昨日の午後、デザインサイエンス・プロジェクトに従事する
複数の開発協力者とともに意図的に開始したにおいて、
テンセグリティ・ジオデシック構造の異なった複数の実験によって
生じた主観的反応を分析した結果、
優れた新しい客観的機能を発見することができた。
機能は他の機能としか共存できない。
ひとつの機能は統合された複数の原理に関与していなければ、
それ自身では存在できない。
われわれはテンセグリティの諸機能ではなく
機能という宇宙を確認しているのである。
デザインサイエンスの可能性
個人だけが群れから離脱する自由が与えられている。
エコロジーは人間のつくり出した経済システムから見れば、
本質的に闘争システムなのだ。
すくなくともテクノロジーはこの離脱を支えるだろう。
エコロジーは宇宙のみが創造した包括的なテクノロジーである。
デザインサイエンスの可能性は
集団的子宮から離脱(=ステップアウト)するテクノロジーでもある。
デザインサイエンスの方法論
自動車をデザインしたとき、馬車用の道しかなかった。
電話を発明したとき、十分な電線をつくる銅が不足していた。
高速道路と電話線のネットワークの構築によって
これらの工業製品は経済的に機能的に完成した。
そして20世紀の後半には無線システムに移行する革命が続いた。
そして住居もまた経済的に機能的に
上下水道とエネルギーネットワークのインフラが要求されてきた。
しかし、月に行くための宇宙船にはこれらの固体的インフラは否定された。
宇宙船の遠隔的なインフラを大気圏内で量産するテクノロジーは完成している。
そのテクノロジーはガイアのように太陽系に依存する。
そのシステムは無線、無管、無柱である。
線と管と柱は、地球温暖化のサバイバルには不要だ。
もっとも安全で経済的な内部と外部をデザインするための諸原理は
すでに発見されている。
出生率
21世紀の人口爆発は農村部ではなく都市部での貧困層で起こっている。
バックミンスター・フラーは、ワールドゲーム理論による長期的な統計調査で、
電気エネルギーの利用度の向上にしたがって、
出生率は低下することを発見した。
地球が自転している以上、地球の反対側では
交互に彫像できない電気エネルギーが捨てられている時間帯がある。
そして、人口爆発を制御するためのもっとも優先されるべき効果的な方法として、
全世界の農村と都市で、電気エネルギーの利用度を向上させる
全世界的な球状エネルギー・ネットワークの構築を提案した。
都市部に集中する33億人のなかで、より急増していく貧困層の人々は
つねに家賃と電気料金を支払うことができない。
出生率の低下のための手っ取り早い手段として
避妊具を無料配布することではないことは明らかだ。
しかし、国連では、最近人口の制御のために
住宅と避妊具の提供を計画している。
エネルギー・ネットワークの分断状態は、人口爆発の原因であるばかりか、
二酸化炭素の増加そのものだ。
そして、エネルギーネットワークの統合によって、
原子力発電所の建造はいっさい不要となるという
30年前の予測的デザインサイエンスの包括的解決方法は
ますます意味を持っている。
そしてこれが『自己エコロジー』(仮題)の主題である。
包括的かつ洞察的デザイン
マグニチュード7.2(阪神大震災時)程度で破壊される
駐車中の自動車や飛行場に待機している航空機は存在しない。
そして、それらに耐震装置は付加されていないことに気づくだろう。
それらは、重量やコストが増加する建築テクノロジーから
構造がデザインされていないからだ。
包括的にしか生命を安全に移動させる道具を
デザインすることはできない。
ではなぜ静止した建築物が安全にデザインできないのか。
人々はまだ固体的な概念の牢獄にいるのだ。
そして、構造以上により包括的な地球環境を
どのように解決できるのか。
それを解決できるのは、少なくとも建築家ではないだろう。
バックミンスター・フラーが建築家でなかったように。
そもそも彼は建築家のライセンスを一生取得しなかったのは
包括的で洞察的な仕事に必要なかったからだ。
そしてデザインサイエンスのライセンスは
許認可の記号体系を支配する権力側からはけっして
発行されないだろう。
『自己エコロジー』のシナリオ
「意味を為す代わりに金を儲ける」時間は残されていない重要な転換点にいる。
しかも人類がまったく未経験なカオスポイントだ。
1
誤った情報に基づく時代遅れの制度と既得権のための現状維持によるのではなく、
予測的なデザインによってより大きな社会問題を解決する発明の才が、
人間にどれほどあるのか。
2
深々と根を下ろした古い思考パターンと先入観を投げ捨てるには、
どれほどの決断力を集中させなければならないのか。
その選択肢の行使に繋がる積極的な最初の一歩を踏み出す勇気が、個々
の人間にどれほどあるのか。
3
個人がそれぞれ実行しなければならないことは何か。
について、1982年の最晩年のバックミンスター・フラーの科学的な
ワークショップと講義をまとめたものだ。
このノートや映像は私のクロノファイルに保存されたままであった。
フラーの豊富な統計資料に基づいた論証は『自己エコロジー』(仮題)という250程度のページの本になるだろう。
『宇宙エコロジー』(美術出版社 2004)に次ぐ、メタフィジクス論でもある。
編集者は、可能なかぎりオリジナル原稿にそった方法序説を
具現化し、直接的な思考と軌跡を分かりやすく
読者に届けるためのシナリオを検討をはじめた。
自己表現
多くの建築家は、建築デザインを
キャンバスに向かう画家のように
自己表現の場であることを疑わない。
デザインサイエンスは、美的な探求を構造デザインに求めない。
真の構造は、表面に関与しないばかりか、そのほとんどは不可視だ。
炭素繊維の張力材でテンセグリティモデルをデザインする前から
炭素繊維は、ミクロのテンセグリティ構造を具現化している。
キャンバスよりも概念の不足が、専門性を許している。