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デザインサイエンスの方法論 リダンダンシーの理論的排除について

直径に関わらず、ジオデシック・ドームが経済的にデザインされることは稀である。

安全係数が大きくなればなるほど、リダンダンシーが大きくなるが、
荷重を分散する自由度は小さくなる。
航空機は飛行するために軽量化されなければならないので、
リダンダンシーの理論的排除が積極的に行われている。
実際、建築業界では4倍から倍程度の安全係数を使うのに対して、
航空機業界では、2倍以下の安全係数しか使わない。
この違いは、技術的に無知であればあるほど、
適用する安全係数は大きくなることを証明しているだろう。

ジオデシック構造は荷重を分散しない「柱と梁」を基準とした
連続する圧縮材を前提に分析されている限り、
これまで建てられてきた巨大ジオデシック・ドームは、
航空機とは比較にならない過剰な安全係数で造られている。

間違った前提からジオデシックドームは航空機ほど安全ではなくなっている。

テンセグリティ・ジオデシック構造の歴史

ジオデシックドームの歴史を見ると、
バックミンスター・フラーはダイマクション・ハウスの
プロトタイプの制作直後に
大円モデルとテンセグリティモデルの発見を経験しながら
ジオデシック数学への移行まで数年間を要している。

さらに、テンセグリティ・ジオデシック構造の完成までは
バックミンスター・フラーでさえ最長の17年間を要している。

現在、ノースフェイス社のテント構造に短期的に滞在する以外、
テンセグリティ・ジオデシック構造に誰も住んでいないのは
テンセグリティ・ジオデシック理論と実践をマスターした個人は
バックミンスター・フラー以外にいなかったからである。

もっとも経済的な個人のためのテンセグリティ・ジオデシック構造が
実現されるまでデザインサイエンスは不在である。
個人によるクリティカル・パス方法の成果はまだ証明されていない。

ディテールデザイン

モントリオールドームは妥協の産物かもしれない。
決定的なことは、分解できないデザインとして大地にインストールされたことだ。

もし移設できるデザインをアメリカ情報局が採用していたら、
NASAのバイオスフィア計画よりも 20年早く人工気象の実験がはじまり
イギリスのエデンドームよりも30年早く、透明な皮膜が集合住宅に採用されていただろう。

バックミンスター・フラーのデザインした構造物の初期の図面と比較すれば、
彼が妥協しなかったときはないと考えられる。

しかし、ディテールが財源的に蒸発しても
彼の基本デザインなくして達成できなかった手法だけが残った。

彼の基本デザインのすべては数学的原理に関与している。
(モントリオールドームを覆った可燃性のアクリル板は非構造的なディテールデザインに属する。)

数学原理の懐胎期間は建築家のどんなディテールデザインよりも長い。
実際、モントリオール後のフラー以外の建築家や企業によるジオデシックドームは模倣の産物だ。

ジオデシック・ドーム

一回の飛行で輸送と設置ができ、アメリカの南極基地の直径43メートル、
床面積1400平方メートルの、
ステンレス鋼とアルミニウムでできたジオデシック・ドームは
風速120m以上のブリザード(極地に見られる暴風雪)に耐えられるばかりか
完全に雪に埋没したときの積雪荷重に耐えられる。

つまり雪かきのまったく不要な構造を
どうして日本の豪雪地帯に建造しないのか。
同時にこれ以上の経済的な耐震機能を備えた空間構造は
建築テクノロジーには存在しない。

極地での日常的な頻度で発生する非常事態が、
建築ビジネスではないだけである。