シナジェティクス講座」カテゴリーアーカイブ

氷モデル

正四面体だけでは、空間は隙間なく埋められない。
水分子が周囲の4つの水分子と水素結合して、正四面体型の配置をとる、
氷の結晶構造の場合、いかに隙間だらけであるかは想像できる。

氷が融けて水になるとこの構造パターンが壊れ、
この空隙部分に水分子が入りこんでくるので、密度が1割ほど増える。
しかし、物理学ではこれ以上の構造モデルは提示できていない。
この隙間を空気と考えるべきではないだろう。
気泡が氷の浮力を生んでいることは別問題だ。

シナジェティクスではこの具体的なモデルをデザインできる。
正四面体型の配置では氷の結晶の説明は不可能だ。
隙間は正4面体ではない。
新たな空間充填システムは、重要な宇宙論だ。
任意の整数比で空間充填できる4面体モジュールの発見
(つまり整数比で空隙を残すという構造システム)は、
氷が水に浮かぶことのできる唯一の説明となる。

数学的、科学的な絶対的証明

日本版『コズモグラフィー』(監修 シナジェティクス研究所、白揚社)の
出版は、編集作業と精緻な図版制作のため再度延期されることになった。
9月の初旬に決定。

原書の理解のための追加図版の翻訳とそれに伴う編集などで
未完成の遺稿となった『コズモグラフィー』はやっと、
バックミンスター・フラーの意図した本来の<シナリオ宇宙>が見えてた。
その結果、『クリティカル・パス』と同じテキスト量となり、
『クリティカル・パス』と同様の歳月を費やしたことになる。
彼の独自な思考言語の翻訳言語の形成には、『クリティカル・パス』の思考言語形成から
さらにほぼ10年の懐胎期間を経なければならなかった。

『コズモグラフィー』は、最晩年のバックミンスター・フラー自ら書き下ろした
シナジェティクス原論であり、最初のシナジェティクス入門書である。
<シナリオ宇宙>は、数学的、科学的な絶対的証明のみで構成されている。

『コズモグラフィー』(9月刊行)と思考言語

「教育を装った権力システムは、本質的な包括的思考能力を
初歩的で一時的な主題へと故意に分断する。」 1983 RBF

知らないことは知ることの不可欠な要素である。
そこに試行錯誤が生まれるが、
われわれは、めったにこの能力を使わない習慣を
学んでしまう。

モデルは、純粋原理の具現化だけではなく
自己教育のための思考言語装置でもある。

日本版『コズモグラフィー』(監修 シナジェティクス研究所)には50種を越える
これらの思考言語が紹介されている。

モデルと概念

知るのは状態であり、理解するのは化学反応である。
水素は、宇宙に満ちあふれている。
モデリングのないシナジェティクスは、
水素に出会わない酸素だ。

私は、この一ヶ月間、18年前の数学論文の
モデリングに再び苦しんでいた。

そしてついに、これまでにない概念を構築した。
原理の発見とそのモデリングには、同時性がない。
とくに、概念間の操作が複雑な場合には。

そして、結果的に以前のモデリングは完璧で
どんな変更も見られなかったが、
新たな概念がモデリングの構造と意味を新しくした。

そして夜も白む頃、窓を開け放ち、リヒテルの平均律を聴く。
それ以外にこの高まりを平均化することはできない。
シナジェティクスの永遠性の視覚化に、
数学は楽器のような役割がある。
楽譜は、秩序づけられた経験だ。

シナジェティクスを学ぶ

包括主義者バックミンスター・フラーを理解する
最良の方法とは何かと聞かれたら、
シナジェティクスを学ぶことだと答えるだろう。

なぜなら、自分のことは最後に考える習慣ができてくるからだ。
それは、何かを学ぶ学生のなかで、もっとも異なる傾向が芽生える。
例えば、独創性、
つまりサバイバル技術だ。
デルス・ウザーラのような知性だ。

アジア的差し金師

5重の塔も木造船の建造過程にも
図面は存在しない。

図面は後からやってくる。日記に書き記す現実の出来事のように。
最初はひらめきだ。次にモデルを思考するのは
頭ではなく、むしろ手だ。

シナジェティクス・モデリングにも図面は不要だと開眼すれば、
差し金師への重要な手がかりになる。

モデル化(modelability)

自然を翻訳すると何かモデルができると考えられている。
例えば DNAの発見は、結晶学者が撮影したX線の映像を
生物学者が解析することから始まった。
そのDNAを解析するためには構造のアルゴリズムが必要であった。
その結果、DNAの発見には様々なDNAモデルが作られた。
各DNAモデルごとに異なったアルゴリズムが必要であった。

アルゴリズムとはなんらかの問題を解くための手順(オペレーション)のことである。
そして有力なルゴリズムに基づいて、新たなX線の映像が提供された。

自然を翻訳するためには、自然をモデル化するアルゴリズムが最初に必要だ
ということが発見されたのは、20世紀である。
ところが、自然を翻訳するとたいてい何か間違ったアルゴリズムができるのは、
自然が既知なる存在だけではなく、未知なる存在を含んでいるからである。

シナジーは、未知なる存在と既知なる存在とからなる自然を統合する宇宙である。

DNAが存在が証明されて、半世紀以上が経過したが、
生命を合成するシナジーにはほど遠いのである。
21世紀においても、運転手付きの自動車の販売は、つねに先送りされている。
Y.K

スカイブレイク

一番だまし易いのは、観察者ではない。
2つ目がありながら、
同時に2つの対象物が認識できない目と脳の機能である。

例えば、一つの4面体を観察する場合、通常観察者は外部にいるしかない。
なぜなら、内部にいる場合、
同時に4面体のすべての頂点を捉える視野角さえももたない。
これは4面体と観察者との相対的な大きさの問題ではない。

ゆえに、4面体の内部と外部は同時に認識できない。

このことは、
ジオデシック・シェルターを組み立てる場合に顕著になる。
外部にいるアセンブラーは、内部の構造のパターンと互いに鏡像になるので、
完成したシェルターから見る自分を覆う総三角形のスカイブレイクに驚くだけではなく、
同時に一つの視野角で把握できない内部の構造パターンが
空間を心理的により大きく感じさせるのである。

閉じた球状パターンでは、内部の空間イメージは外部から想像する内部の空間イメージと
けっして合致することがないという人間の認識の限界に最初に気づいたのは、
アーティスト・サイエンティストである。
オスマン帝国が教会建築を取り入れ、球状空間によって
柱のない広大な礼拝堂空間をもつ建築様式を生み出した理由でもある。   Y.K

全方向の対話革命

トポロジー
バイオロジー
ジオロジー
そして
エコロジー
に共通な<logy>は科学や学問を表す接尾語である。
そして科学は対話である。
対話は、話すことであり聞くことである。
口学問だけではなく耳学問でもある。
読むことや書くことは、その次だ。

だから、科学の学習の最初は読書ではない。
シナジェティクス講座はもちろんテレビ電話(ichat)による
同時的対話から始まる。
シナジェティクスは、口学問だけではなく耳学問だけではない、
手学問(modeling)でもある。

21世紀の教育革命とは、全方向の対話革命である。
対話にキャンパスや建物、そして通学は不要だ。     Y.K

多頂点体(polyvertexia)

科学史上最初のモデルは、炭素の4面体モデルであった。
次に科学史上最も短いノーベル賞論文は、遺伝子の2重螺旋モデルであった。
そして、20世紀の終わりに3番目の炭素の結合モデルの発見によって、
物理学の概念は大きく揺れ動いた。

実際、フラーレンの発見では、面数が観察されたのではなかった。
発見者たちは、観察された情報を新しい概念で再構築したのだ。
頂点という出来事の数(=分子数)を新しいモデル言語で統合したのだ。

シナジェティクスは、フラーレンが発見される前から、多面体という固体的概念から
多頂点体(polyvertexia)の概念を発見して、様々な数学的発見を蓄積していた。
バックミンスター・フラーレンという長い学名には
シナジェティクスへの敬意が顕れている。   Y.K