シナジェティクス講座」カテゴリーアーカイブ

日食から銀河食へ

日食を形成するためには、
たとえば、太陽系では太陽を含めて
相互に異なった3つの軌道が必要だ。
そして、観察者がどの軌道に属するかで日食の周期が決まる。
月面では地食が見られるだろう。

渦巻銀河はディスクと呼ばれる円盤からなり、
その中心の周囲を無数の恒星がプリセッショナルに回転している。
137億光年の半径を持つこの宇宙には、
1000億個以上のこうした銀河が含まれるので、
宇宙では銀河食はむしろ日常的に見えるはずだ。
ただし、それを観測するためには、
観察者が銀河食の焦点まで移動しなくてはならない。

生きている間にもう見れないという
センチメンタルな広告よりも、
銀河食は客観的ビジョンにちがいない。

自分を外から見る最大の想像的行為は、
シナジェティクスの包括的な操作主義の産物である。

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「シナジェティクス」の図版より引用

Fig. 1130.24 Reality is Spiro-orbital: All terrestrial critical path developments inherently orbit the Sun. No path can be linear. All paths are precessionally modulated by remotely operative forces producing spiralinear paths.

直観

磁界の中を移動するだけで、
コイルに電流が流れるように、
地球上の生命の偉大なエコロジカルな再生力を
枯渇させ不快にさせない
唯一の電磁誘導的に形成される思考回路。
この場合、磁界自体を移動させるか、コイル自体を移動させるかの選択がある。

この非論理的な回路に接近できるもっとも効果的な方法の一つは、
シナジェティクスのモデル言語を習得することである。

なぜなら、シナジーはエコロジーさえも統合しているからである。

アンチ・アブノックスからdoing more with lessへ

20世紀当初の産業社会は、
決して〈金儲け=アブノックス〉を目的にしてはいなかった。

現在の超国家企業こそが、
個人の誠実さから生まれる発明の巧みさを育て、
優れた製品だけを大量生産するための、
産業を指導する知恵を、
完全に捨て去ってしまったのである。

宇宙で絶え間なく生成するあらゆるエネルギー変換と
それらの相互変換の過程のみに注目し、
物質と時間・エネルギーの純粋なコストから形成される
物質化のための産業(=アンチ・アブノックス)は、
消滅したのである。

しかし、物質化のためのほとんどの素材と道具は、
既製品として生産され続けてきた。
アンチ・アブノックスを目指す産業を
個人的に形成できるまでに。

無数の既製品から特定のある機能(doing more with less)を
生成するための偶然の組合せの加速的な増大は、
必ずしも大量生産の手段を必要としない。
個人の誠実さから生まれる発明の巧みさを育てるためには。

これは、
バックミンスター・フラーが
生き延びた過酷な産業社会にはなかった可能性だ。

doing more with less vs 超専門分化

すべての超専門分化には、
長い教育期間と教育投資が必要だ。

こうして、堅実で安定した
高級な奴隷の仕事にも差別化が生まれる。

しかし、
原理の発見だけではなく、
複数の原理の相互調整をデザインし、
同時に、
包括的な思考をdoing more with less
で物質化する
デザインサイエンスに比べたら、
その教育期間と教育投資でさえ少なすぎる。

シナジェティクス・モデルによる対称性の破れ

『クリティカル・パス  宇宙船地球号のデザインサイエンス革命』新装版
(バックミンスター・フラー著、梶川泰司訳 白揚社、2007)には、
バックミンスター・フラーの短いが難解なシナジェティクスから引用した序文がある。

「従来のクリティカル・パスの概念は、直線的であり、
それ自体十分な情報を与えてくれない。
球状に拡大収縮し、軸回転し、極方向に伸開線的—縮閉線的な軌道システムからの
フィードバックだけが包括的にかつ鋭敏に情報を与えてくれる。
球状軌道的なクリティカル・フィードバック回路は、脈動して周期的な吸収放出を繰り返す。
クリティカル・パスの原理的要素は、
平面上で互いに重なり合う直線的な構成要素を単位としない。
それらは、汎-相関的に再生しつづけるフィードバック回路が、
システマティックに互いに螺旋を形成しあっている複合体なのである。」
(『シナジェティクス第二巻[改訂版]』から)

この球状軌道的なクリティカル・フィードバック回路に関する、
動力学的なシナジェティクス・モデルは存在する。
その実在するモデルから、フラーはつねにモデル言語によって記述していることがわかる。

そして、私はこのモデル言語を敷衍する他のシナジェティクス・モデル群を発見したことで、
偶然にもアメリカで『クリティカル・パス』が出版された直後から、
2年間にわたって新たなシナジェティクス原理の発見プロセスを
バックミンスター・フラーと共有することになったのである。

そしてこのフィードバック回路には予想外の原理が潜んでいた。

その研究論文は、『コズモグラフィー シナジェティクス原論』
(バックミンスター・フラー著、梶川泰司訳 白揚社、2007)
の補遺に記載されたシナジェティクス・モデルによる<対称性の破れ>の発見に
発展したのである。

物理学では到達できなかった対称性の破れのモデル言語は、
ついに視覚化されたのである。

偉大な誤差論

E=MC2はこれまで不可視の構造であった。
シナジェティクスモデルはこの構造を可視化した。
バックミンスター・フラーは、 demass modelを発見している。
『コズモググラフィー /シナジェティクス原論』 (バックミンスター・フラー著、梶川泰司訳 白揚社 2007)
には言及されなかったが、シナジェティクスを最初に学ぶモデルとして、
フラーはこのEモジュールから始めることを推奨している。

コンピュータによる15桁の計算と、それを忠実に作図化する CADの精度によって、
demass modelを再現する過程に夢中になっていた1990年、
私はついに5回対称性のある無限成長する空間充填システムを発見した。

この発見は直ちにアップルホワイト氏に報告され、
その論文は、『成長する正20面体』(『サイエンス』日本版サイエンティフィックアメリカン 1990)
に発表された。

黄金比が介在する体積比をもった10種のモジュールだけで
原子核の殻モデルのような階層構造を形成しながら、
核の存在と核構造における殻の周期を明らかにした。
この10種のモジュールはすべてプラトンの正20面体から導かれる。
分割とは増殖を意味する。

demass modelを理解すれば、バックミンスター・フラーの真の偉大さが理解できるだろう。
幾何学と物理学の新たな世界像は、デスクトップから起動できる。

シナジェティクスとデザインサイエンス

科学の原理を理解するためには、よい教師がいる。
シナジェティクスの原理を理解するためには、よいモデルがいる。
しかし、シナジェティクスを応用するためには
経験に基づいた知恵がいる。

誰も解決策は買えないようにデザインされている。
それが、デザインサイエンスである。